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【地元旅】オシャレカフェのメニューで親戚の様子を知る

先日、地元新聞に紹介された京仏師の方の工房へ、母と見学に行ってきた。岩手県南市町の伝統工芸職人の工房を見学できる「五感市」というイベントの一環。普段は仏像が傷まないようしまっているので、見学はできないらしい。

お話が達者な方で工房見学も存分に楽しんできたが、この日私の楽しみはもうひとつあった。ランチである。

「お昼はあそこでラーメンでも食べっぺし」
母の言うそのラーメン屋さんは確かにおいしい。いつ行ってもブレずにおいしい。
しかしそのラーメン屋さんは、つい先日も車の修理中に二人で食べに行ったばかりだ。
たまには別のお店に行ってみたい。

スマホで検索してみると――あるじゃないかオシャレなカフェが。隣町にこんなすてきなカフェがあったとは。いつのまにできたんだ。

母に提案し、工房見学のあと、私たちはウッキウキでそのカフェへ向かった。

  *

店内はこじんまりとしながらも、ゆとりのあるテーブル配置。小物や壁の色もセンスが良く、店員さんも朗らか。

食事もデザートもおいしそう、と母とメニューを見ていたら――見覚えのあるフルネームが目に入った。

「〇〇さんの完熟トマトジュース」というようなメニュー名なのだが、この〇〇さんというのが、何を隠そう私のイトコなのである。

「お母さん、これ、〇〇くんのことだよね」
「あらー。んだね。あそこでトマトもやってっからね」

イトコのうちは大農家である。
メインはリンゴだが、トマトや他の物もやっていて、農繁期はかなり忙しくなる一家だ。

店員さんを呼んで注文をしながら、この方、もしかしてドコソコの方ですか? などと探りを入れる。

「そうです。あ、お知り合いですか?」
にこやかに答えてくれる店員さんに、ええまぁ、ともにゃもにゃ言いつつ母をちらり。母はどこ吹く風で、
「ここのリンゴもおいしいんですよねぇ」
世間話なんだか宣伝なんだかを繰り出していた。

なんだか、芸能人の家族か知り合いにでもなった気分だ。

イトコの家は、今まで叔父さんの方がいろんな役に就いたりして有名だった。新聞に載ったこともあったし、産直のお店へ行くと叔父の名が表示されたリンゴがずらりと並んでいる。

だけど何年前からか、叔父とはちょっと違う路線でイトコの名前を聞くことが増えた。

ちゃんと世代交代してるんだなぁ、と店のメニューからしみじみ知った日だった。


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