新月を待たずに父は逝く
入院していた家族――父が逝った。今まで「父」と言わず「家族」と濁していたのは、母の意志と父のプライドを尊重するため。
「お父さんはプライド高いから。自分が意識不明の寝たきりになったなんて絶対周りに知られたくないだろうから」
母は、父がもう助かる見込みがないことを伏せ、「コロナ予防で家族でも会えないから、様子がまったくわからない」「多分いつもみたいに軽いんじゃないの?」と周囲へ言い続けていた。父は過去2回、とてもとても軽い脳梗塞で入院していたが、3度目の今回は、極めて重いも