マガジンのカバー画像

【小説】太陽のヴェーダ

49
どう見ても異常があるのに「異常なし」しか言わない医者たちに失望した美咲。悪化した美咲に手を差し伸べたのは、こうさか医院の若き院長、高坂雪洋。雪洋の提案は、一緒に暮らすことだった。…
小説の本編は無料で読めます。番外編や創作裏話などは有料になることが多いです。
¥1,000
運営しているクリエイター

#新生活

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(29)

(第1話/あらすじ)   ●問診 その日の午後、想定外の体力仕事が課せられてしまった。公民館での催し事の準備に、美咲が助っ人として駆り出されたのだ。 脚立を運んだり、展示物を飾る台やパネルを設置したり。正職ではない美咲がこういった助っ人仕事をするのは時々あったが、連日足へ負荷がかかることだけは、心底避けたかった。明日木曜日は、学級文庫を選ぶ作業があるというのに。 「これからは……公民館側の予定も、チェック……しておこう……」 重量物を持って、すでに階段を五往復していた

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(28)

(第1話/あらすじ)   ●詮索 水曜日の昼休み、事務室で弁当を開いた美咲は、怪訝な顔をして鼻をひくつかせた。 「わぁー……やっちゃった」 事務室のパソコンで作業していた沢村が手を止める。 「どうしたの?」 「お弁当が酸っぱくなりました……」 「傷んじゃったか。この暑さじゃね」 施設内の冷房は、節電のため弱めの設定。 冷えが大敵の美咲にはいいが、お弁当はそうもいかない。 「はあ……もったいない。すみません、ちょっとコンビニへ行ってきます」 事務室を出ると、沢村が追っ

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(27)

(第1話/あらすじ) 契約は半年更新。一度目は無事更新。 二度目はないかも知れない。 補助が必要なくなれば終わりだろう。 でも体のボロを出さずに職務を全うして逃げきれるなら、それもいいかと思う。 臨時職員は雇用に何かと制限がある。 長く続けたいなら、沢村の言うとおり司書をめざすべきだろう。 履歴書には、病気療養していたこと、現在も通院していることは書いている。その上で勤務に支障はないということも。 病名こそ伏せているが、嘘はついていない。 どんなに大事ないと説いた

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(26)

(第1話/あらすじ) 第5章 自立   ●美咲の所作 今日は火曜日。 いつものように早めに起床する。 「――先生、おはようございます」 窓を開けて、朝日にあいさつ。 そして体の隅々に意識を巡らせる。 ぐっすり寝たが、朝方少々体を冷やしたようだ。かすかだが、放っておけば痛みだしそうな気配を感じる。気候がいいからといって油断してはならない。 「お風呂に入って、あったまった方がいいかな」 日課の白湯をゆっくり飲みながら、入浴の準備をする。 朝風呂でじっくり体をあた