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一話完結小説/創作日記

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一話完結小説の本棚。創作活動についてや、作品にまつわる話も。
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記事一覧

其の以す所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉んぞ廋さんや、人焉んぞ廋さんや。

いつのことだったか。 牡牛座さんは好きか嫌いかで判断する――という話を何かで見たとき、それまで私が書いてきた小説について、ちょっと考えてしまったことがある。 ド牡牛座の私が書いているせいか、なんかこう、登場人物がみんな、牡牛座っぽく見えてしまったのだ。 この登場人物はどうしてこういう言動をするのか。動機はなんだ。そう考えたときいつも「だって好きだから」となる。 牡牛座宇宙の中にいて、牡牛座フィルターを通して書いているってことなのだろう。 だけど世の中には当然ながら、牡

【創作日記】久々の小説執筆で思い出す

先日、エブリスタで久々に小説を投稿した。 『川村景子のおつとめ転々日記』という一話完結の短い話。 大昔に書いた『短編集サクラサク』の中に「Eの改造」という話があるのだが、その主人公の名前が川村景子である。 以前からこの川村景子の物語をあらためて書こうと思っていた。 ――が、しかし。 名前になんのひねりもなかったので、名前を変えて別人の物語にしようかとも考えていた。 ちなみに「川村景子」という名前は、当時そのへんに置きっぱなしにしていた年賀状に川村という名字があったこと

初対面の人と放置されたときにすること

初対面の方と二人きりになると、何を話すべきか、あるいは何も話さないべきか、間が持たずに悩むことがある。いつまで続くかわからない、二人きりの時間。――気まずい。 こういう場合私は、せっかくだから「取材」をすることにしている。その方は私の知らない人生や職業を経験しているはずだから。 「そうだ取材しよう」と思いついたのは、たしか前に勤めていた会社で、外部から監査員を招いたときのこと。監査がすべて終わり、帰りのタクシーが来るまでの待ち時間、私と監査員のおじさまが二人きりになったの

忘年会へ行ったら「小説を書く人に100の質問」状態になった話

去年の暮れ。 私は勤め先の合同忘年会へ初参加してきた。 バツイチ独身子供なしの私に、うっかり「子供何年生だっけ?」とか聞いた挙げ句に気まずい顔されるのが嫌で、「独身指輪」をつけての参加。 でも結局面倒くさくなり、 「〇〇で5月からお世話になってます高橋和珪です。〇〇出身、44歳。バツイチ独身子供なし。愛犬はゴールデンレトリバーと日本スピッツ。学生時代はバレーボーラー。20代で病を得てUターン」 自己紹介で全部放出してきた。 ザワッとしてたけど、(多分)ウケてる寄りのザワつ

夢中で書いたものほど、書いたときの記憶がない

私の記憶では、初めて書いた小説はたしか、20代中頃か後半だったと思う。 子供の頃、「将来なるなら、マンガ家か小説家のどっちかだなぁ」などとえらそうに思っていて、「絵描き期」と「物書き期」を交互に繰り返していた。とはいえ、どちらかというと「絵描き期」の方が多く、専門学校でPhotoshopに出会ってからはさらに加速した。 だから小説家への憧れはあったものの、学生の頃、実際に小説を書き上げたという記憶はなかった。 ――という話をしたとき、同郷の親友であり、「和楽風天」の相方

文学フリマ8に参加して、夢が2つ叶っていることを知る

先日の6月18日。 文学フリマ岩手8で、無事出店を果たした。 (ウ-13 和楽風天) 準備期間、当日、その後。 数年ぶりのフルタイム勤務をこなしながらもまったく体調が崩れなかったこと。持病が再発する気配がまったくなかったこと。和楽風天の相方はじめ☆が来れなくとも、不安なく一人で元気に盛岡往復できたこと―― そのひとつひとつが、すごく嬉しい。 盛岡に着く前から、感動して涙がにじみ出た。 免疫異常の持病のため、イベントに参加する自信がなくて。だからはじめ☆と2人で和楽風天を

文学フリマ岩手8 出店します

6月18日(日) 文学フリマ岩手8に出店します。 サークル名:和楽風天 ブース:ウ-13 ・Webカタログはこちら ・文学フリマ岩手8のご案内はこちらをご覧ください ■新刊 『体験記 体の調子を整える』 マガジン『体の調子を整える』を中心に8編収録。詳細はWebカタログをご覧ください。 内容に大きな変更はありませんので、本でほしい方向けです。 新刊制作の話↓ ■既刊 『太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと』は、本編全5巻セットで販売します。 バラ売りはし

文学フリマ用の本を作る(中綴じ文庫サイズ)

6月18日、文学フリマ岩手8。 これに出す予定の、新刊を作っている。 私のはいつも、Wordと家庭用プリンターを使った、手製本である。 冬の間にあらかた作る予定だったが、内容の方針を変えたりいろいろあって遅れ気味になっていた。 noteに投稿した約2年分の日記からテーマを絞ってまとめていたが、これにもかなり時間を取られる。 すでに完成した文章があるのだから簡単にできそうだが、そうはいかない。コピペして綴じただけでは繋がりが悪すぎる。 noteでは誰がどこから読んでも

三度目の転職は「仕事を愛したい」

私の一番最初の就職先は生協。カタログ制作を専属で5年ほど務めたが、体を壊し、立ち上がることさえままならなくなった。思えばこのとき、その後長く付き合うことになる顕微鏡的多発血管炎を発症したのだろう。 岩手にUターンして、しばし療養。最初の転職先は保育園。保育士の資格は持っていないので、補助として勤め、なんとか無事に契約期間をまっとうすることができた。 保育園勤めは楽しかったが、次の職場は大人相手がいい、とも思った。自分が思っていることを園児たちにもわかるよう変換して話す日々

『ワラビアンナイト』とエブリスタの話

一話完結の、異世界に暮らす人々の日常を綴った短い物語、『ワラビアンナイト』。 「和珪」の「アラビアンナイト」で『ワラビアンナイト』という、安易なシリーズ名。 先日noteに4話分投稿したが、もともとはエブリスタで公開していた作品である(エブリスタをやめたわけではない)。 ■note版 ■エブリスタ版 一話完結にした理由は、この数年でエブリスタに「休載」のシステムができたから。これは「連載中」に設定した状態で90日以上更新がないと、自動で休載マークが表示されてしまうとい

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【一話完結】ワラビアンナイト コトノハの民

ワラビアンナイト コトノハの民 大陸の南側にある港町は、いつも活気に満ちていた。海には商船が並び、陸には市が立つ。 そこへ―― 「馬が暴れてるぞ!」 「逃げろー!」 人々の叫び声と悲鳴、そして馬のいななきが響き渡った。 市で物色していた商人イシャンの耳にも、それは届いた。逃げろ、という叫び声と、露店の品や木箱が蹴散らされる音が迫り、やがて人々が散る中から一頭の馬が姿を現した。 馬はイシャンを横切り、外衣をまとった一人の女めがけて突進していく。 「あんた逃げろ! 馬が……

【一話完結】ワラビアンナイト 魔女のまちなか変身体験講座のお知らせ

ワラビアンナイト 魔女のまちなか変身体験講座のお知らせ 大陸の西方に、国土の東半分を砂漠に覆われた国があった。民は西半分でしか暮らせなかったが、山々の水を地下水路で引いていたし、砂漠を渡る隊商たちが立ち寄るため、街は栄えていた。 その街の、衣類を扱う店の前に、ファナンという娘がいた。ファナンは近頃、嫁入りの話を親から言われることが多くなっていた。 砂漠から吹き込む砂埃も気にならないほどファナンが見つめていたのは、店の表に出された一枚の張り紙。 【魔女のまちなか変身体験

【一話完結】ワラビアンナイト パン売りハッサンのガンドゥギレシピ

ワラビアンナイト パン売りハッサンのガンドゥギレシピ 都の大路の西側にある市場街。その一角の家畜を扱う市場で、青年アスランは、ほっと胸をなでおろしていた。 今朝、まだ夜が明けないうちに家を出て、手塩にかけた羊二頭をなんとか希望の値で売ることができたのだった。 アスランは手にした金を丁寧に懐へしまい、大路へと向かう。 大路へ足を踏み入れると、露店がずらりと並び、食べ物の匂いがアスランを出迎えた。東西の交易の中心地であるこの都には、多種多様の食べ物が集まる。 この匂いは鶏肉

【一話完結】ワラビアンナイト 都の露店街にて

ワラビアンナイト 都の露店街にて 大陸の中央にある都は、東西の交易の中心地でもあり、朝からにぎわっていた。露店がひしめき、大路には珍しい民族衣装を着た者たちが行き交っている。 今年十一になった明凛は、大路から離れるように露店街のはずれのはずれへと向かった。そこは大路と違って場所代がかからない。明凛のような子供でも、好きに露店を張ることができた。 そのかわり割り振られる区画は狭く、場所取りも早い者勝ち。質の悪いものも出回るため、寄り付く客の数も大路には劣る。 「ここ、空