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龍力100周年企画コラム 大吟醸編

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日本酒の歴史の中で日本酒業界に新しい光を灯したお酒があります。
それは「大吟醸」です。「冷やして美味しい」を目指したお酒。
その大吟醸の原点の味わいを追究しました。
現代の華やかな大吟醸や、軽やかな味わいの純米大吟醸の原点を、大吟醸のパイオニアである龍力が今一度突き詰めてみようと仕込みました。

山田錦 吉川米田

【原材料】
使用米は、山田錦が誕生した地である、兵庫県特A地区吉川町金会。
金会では山田錦がまだ命名される前、品種育成を行った地です。まさに山田錦の黎明期です。
その結果がすばらしく、認められたため1936年に山田錦と命名され、県の奨励品種になりました。
金会の山田錦の最高ランクである特上米を使用。

【精米】
龍力自社にて原形扁平精米を行いました。実は龍力。この原型扁平精米を1990年代半ばより始めております。日本初とは言い切れませんが、早くから取り組んでいることには間違いないです。

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心白のみで仕込む。
精米歩合35%という数字は酒造業界ではよく使われますがこの数字は山田錦における心白のパーセンテージを表したものです。一般米は70%で成分は安定します。つまり一般米を35%まで磨いても味わいに大きな変化は見られません。山田錦も35%以上磨いてもあまり変化は見られません。(原形の場合)
そこで、心白のみで仕込むと言うコンセプトのもと心白まで磨き、さらにその中から、割れていないものを手作業で選定し、本当の心白のみで仕込めるよう精米歩合30%まで高めました。

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【発酵】
酵母についても大吟醸を牽引した酵母である熊本9号系を使用。
現代の大吟醸では、使用している蔵は少なくなった酵母です。現代では、香りがだせる酵母が主流となっています。
香りをだせる酵母が、現代の主流になったのは、香りを出すことが技術だったからだと思われます。「粕と共に去りぬ」などと当時の映画をもじった表現があったなど香りを出すことは容易ではなかったのでしょう。このことから「香りがある酒=良いお酒」という形になり、香りが容易に出せる酵母は夢の酵母となったと思われます。
龍力でも、香りがあることは良いことだ!どんどん香りが出るお酒を造ろうと麹室の改良や麹の育成、発酵温度など吟醸造りと言われる技術を磨いてきました。
そうすると、「龍力のお酒は苦い」と思わぬ声をお客様から言われるようになりました。苦みが出るような発酵はしていないのになぜだ、と調べてみると想像していない事が理由だと判りました。原因は、香りが高すぎる事でした。香り成分は苦みを有しており、高すぎると苦みを感じるということです。
香りを出す事の技術が、オーバースペックになっていました。美味しいお酒を造る為の行動が龍力の目指す酒質とマッチしていないことがわかりました。

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麹についても同様な事がおきております。
現代ではグルコースを多くつくる力を持った麹が主流です。
その現代の主流の麹を、龍力の独自の製麹法(一般的な麹の造り方にくらべ12時間ほど長い製麹時間、小箱による製麹法、徹底した温度、湿度管理)をすると、とんでもない力価がでます。専門的な話になるのですが、グルコアミラーゼとアルファアミラーゼの比率が0.3
程度が最高のバランスの麹と言われています。グルコアミラーゼ300であればアルファアミラーゼが1000という目安です。しかし龍力の製麹法で現代主流の麹を使うとグルコアミラーゼ400のアルファアミラーゼ600と言う数値がバンバン出ます。これは0.65を超える数値です。初めは良いのかなと思いましたがお客さまからの評価を見ると、オーバースペックと言わざる得ませんでした。

現代の酵母や麹は、容易に当時最高と言われた技術が手に入ります。そして良いお酒が容易にできる時代になったと思います。

100年目の節目である年に、今一度、龍力の技術を一番活かせる酵母は何か、麹は何かと考え、試行錯誤した結果、偶然ですが、龍力が大吟醸に取り組み始めた時の熊本9号系酵母、黒判麹菌という組み合わせが一番しっくりきました。

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【味わい】
熊本9号系の香りは、桃、青りんご、ブドウ、洋梨などの果実を思わせる穏やかな香りがあり、まろやかで上品な甘みがあり、軽やかさと共に辛口であることからスパイシーな余韻がお酒全体の輪郭をはっきりとさせ、香り、味わいを調和させます。
#Tatsuriki #龍力 #日本酒 #100年 #蔵元


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