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ゆらり、と揺れる長い髪。
色素薄めの黒髪は毛先まで艶やかで、丁寧に手入れされている。

「ずっと触っていたい」

彼女の髪を指で梳きながらぼやく私の髪はといえば。
比べるまでもない、綺麗とはほど遠い。
けれどそんな髪を彼女は「綺麗ね」と褒めてくれる。

「そんなこと」

自信のない私を肯定してくれるのは、彼女くらいだ。
例え嘘だとしても、私のための嘘だということを知っている。

天使の輪、すべり落ちるサラつき、痛みのない毛先。

「羨ましい」
「あなたもなれるわ。努力次第よ」

そうか。これは天性のものではなくて努力の賜物なのか。
そりゃ、中途半端なケアしかしてない私が彼女のように綺麗になれるはずもない。

彼女は元がいいからといって手を抜いていない。
その上でさらに正しい努力をしているのだ。

「尊敬する」

これは嘘じゃない、本心だ。
彼女は嬉しそうに、そして照れ臭そうに笑う。

その笑顔に胸が高なった。

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