ドリフトトラック野郎北守鉄軌の異世界ドライビング
「タスケテ―ッ!!」
うっそうとした森林で響く悲鳴。根を跨ぎ、石を踏みつけ、川を飛ぶ。息が上がるほど足を動かし、私は必死に逃げる。
私はマリカ。薬草を摘み取るのが仕事であり趣味。だから質の高い薬草が自生するこの森にやってきたのに…
「ヤメテー!私はおいしくないよー!」
私の命乞いなんてしったこっちゃない。頭の少し上に業火が通る。私を焼きエルフにするつもりなんだ!
後ろを振り返る。黒い皮膚を持つ四足歩行。立ちふさぐ障害物を破壊する牙と爪。そしてナイフのごとく鋭利にとがる顔から放つ火炎!!
「もう!ドラゴンがいるなんて聞いてないよー!」
サイアクの日!よりにもよって地を走るドラゴンに出くわすなんて!大体森林にすんでいる生物じゃないのに何で!?そんな疑念を吹き飛ばさせるかのように咆哮が放たれ、私は思わず耳を抑えた。今は走らなければ!
幸いなことにドラゴンは木々によって進みが邪魔され遅くなっている。私の走りで十分逃げることができる!
必死に走る私。その努力が報われたか少しづつドラゴンとの距離を離していく!あともう少しで引き離せる!
「嘘………」
だが森林はなくなり、周りは平原が広がっていた。ドラゴンの動きを阻害する障害物は何もない。仮に全速力で走ったとしても追いつかれ、ご飯になるのは明白。どうする、どうする、どうする!!
咆哮
気づくと目の前にドラゴンがよだれを垂らしていた。腰が抜けて動けない。もうだめです。ドラゴンは嗜虐的に目を細め、無数の歯が見える口を開けた。舌が私の顔を舐める。気色悪さと絶望感で涙が出てきた。もうだめです。叔母様さようなら………
衝突音
何があったのか理解が追い付かなかった。ドラゴンが真横に吹っ飛んだからだ。ドラゴンはそのまま青い靄に包まれ消えた………
「大丈夫かお嬢さん!」
男が乗っていたのは奇妙なものだ。金属の箱、複数の車輪、ガマガエルみたいな顔…
これが『邪神送り』北守鉄軌との出会いだ。
【第一話に続く】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?