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大学のコミュニティとしての側面をどう取り戻すのか?:授業以外に目を向ける

各大学、春学期はオンラインでの授業実施という方向性が少しずつ見えてきました。立教大学もつい先日、春学期はすべてオンラインという方針が示されました。

こうした流れを受けて、「授業」という側面では、オンラインで提供する準備が整っていくでしょう。しかし、「大学のコミュニティとしての側面をどのようにつくりだしていくのか?」という点は今後大きな課題になると思います。

今日はこの点について現時点で考えていることをまとめてみました。

「場」としての大学 

私は大学教育に関して実践・研究の双方をしていますが、大学を豊かな学びの環境にするためには「授業の設計」のみならず、「大学が学生にとって学びのコミュニティになっているのか?」という視点が欠かせないと考えています。

「ただ授業をうけて帰る」というだけでなく、「横のつながり」、「縦のつながり」が張り巡らされている状態、そして、「個人の興味関心に基づく横断的なコミュニティがある」という状態が、大学という環境そのものを豊かにすると考えます。

具体的にいえば、授業という公式のコミュニティや仕組みに加え、サークルや学生団体、バイト、ゼミなど、小さくインフォーマルなコミュニティが張り巡らされることで、大学が「プログラムの提供をするだけのもの」ではなく、「場としての価値」を発揮し、大学そのものの価値をさらに高めるものになるでしょう。

しかし、今回のコロナの件は、こうした生態系に対して致命的なダメージを与えようとしています。この価値をどのようにつくりだしていくのかは重要な課題です。

もちろんこれは大学に限ったことではなく、昨日のブログ記事では「サードプレイスの危機」という視点で書きました。(文末にリンク貼ります)

オンライン上でどのようにコミュニティを構築していくのか?

こうした「コミュニティとしての大学」を実現するためにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。

わたしはこれは「必ずしもリアルの場でしか実現できないこと」とは考えていません。オンラインでも意識してつくろうと思えば、実現できるものもあると考えています。

しかし、現状の大学は「キャンパスという場」や「大学の立地(大学がある都市)」を前提に設計されていることも多いので、工夫をしなくてはなりません。

私も普段は池袋にいくと必ずだれかと会うという感覚があり、だれにも会わずにひっそり帰るのはむしろ困難な状態でした(いいかはわかりません笑)。

それはキャンパスが比較的こじんまりしており、4年間一緒であるとか、池袋駅周辺でバイトしている学生が多いとか、そういうリアルな環境に支えられたものもありました。そういう「偶然性」や「ネットワークが大小さまざまなかたちで創発していく」ような環境をオンライン上でもつくっていくことが必要になるかなと考えています。

いまのところ私が担当している立教大学経営学部のBLP(Business Leadership Program)では、学生スタッフの制度を活用しながら、オンラインの環境であっても、人間関係のネットワークが張り巡らされるような施策を実行している最中です。

大学の空間の持つ価値は大きいものの、キャンパスがあるだけでは「授業をして帰るだけ」の人も多いでしょう。授業(活動)と、環境は同時に構築していく必要があります。

そもそも大学にキャンパスはなかったのだから

こうした状況を書くと「大変だ!」ってかんじしますよね。でも、大学の歴史を紐解けば、そもそも大学が誕生したときに「キャンパス」は存在しませんでした。

「キャンパスなければ大学じゃないだろ!」って思うかもしれませんが、12世紀の大学は建物を自前でもっておらず、都市を渡り歩いて学んでいたんですね。だから、「大学=建物」とか「場所」じゃなく、ある意味「人の集まり」をさしていたのです。

そう考えると、いまのキャンパスにいけない状況に対する見方もかわるのかなと思っています。そして、ヒントもあるように感じています。

大学も時代ごとに役割や形態を変えてここまでやってきました。オンライン授業をつくっていきつつ、それを起点として大学のコミュニティとしての価値をより高められるような施策を実行していきたいと色々企画中です。具体的な試みについてはまた別の記事で書こうと思います。

■参考記事

大学の歴史については、以前ブログにせっせと書きためていたのでよろしければご覧くださいませ。

「大学にゼミがあるのって当たり前でしょ?」とか色々な当たり前を問い直す機会になるのかなと思います。

昨日書いたサードプレイスに関する記事はこちらです。






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