全員発揮のリーダーシップを発動させる「ひとりで立つ勇気」
今日はリーダーシップの話を書こうかなと思います。現在、私は立教大学で
「自分らしさを生かした全員発揮のリーダーシップ」
をキーワードにリーダーシップ教育の実践をおこなっています。
このキーワードからは「一部の人だけでなく、全員ががんばる」というニュアンスが伝わると思います。「全員が自分らしくがんばろう」というのは、若干「ゆるふわ」なかんじがあるかもしれません。
ただ、このキーワードは「全員が団子になってがんばる」ということを想定しているわけではありません。
どちらかというと「メンバーひとりひとりの個としての強さ」を前提としながら、「それぞれの強みをぶつけあって最大限の成果を生み出す」ということが想定されているのかなと思います。
全員がリーダーシップを発揮して成果をあげるためには、やはりそれぞれが「個として確立している」ということが必要になってきます。これらのイメージは「ゆるふわ」なかんじより、どっちかというと「がつがつ」したかんじなのかなと思っています。
しかし、学生にはなかなかそのイメージが伝わりにくいのかなとも思っています。
全員発揮のリーダーシップのイメージとは?
学生に「全員発揮のリーダーシップ」といったときに、
・権限や役職はつけてはいけない(全員がフラットの方がいい)
・全員が平等にがんばる(仕事の分量に差が出てはいけない)
・自分らしさで貢献が「自分が現時点でやれることをやる」になってしまう
というイメージが先行するのかなと思います。
ただ、実際の「全員発揮のリーダーシップ」とは、
・権限・役職はあってもよい(権限=悪ではない)
→ただし、権限や役職のある人だけ任せにしてはいけない。権限だけでしか人を動かせない人にならない。
・「平等な仕事量」は手段であり、目的ではない
→全然何もしないタダ乗りの人がいるのはもちろん困るが、重要なのは目標達成のために仕事をどう配分するか
・自分らしさとは、個として武器を最大限発揮するイメージ
→「これしかできないから、私の役割はこれ」(できることだけやる)ということではない
ということかなと思います。もうちょっと言い換えるなら、
「個人でも戦える人たちが、目標達成のために、権限や役職に関係なく、全員フルパワーで貢献する」
というかんじなのかなと思っています。
前提となる個の力をいかに育むか?
では前提となる個の力はどのように育成する必要があるのでしょうか。もちろん「まずグループワークをしてもらう」という方法も大切です。まずこちらで課題を与えて、グループで取り組むうちに自分の役割を見つけていくというやり方があります。
しかし、グループで活動をしてしまうと、他者の陰に隠れて個としての確立が難しくなるという側面もあります。自分と向き合わなくてもやりすごせてしまうのですよね。個の力というのは、単なる「能力」の問題ではないでしょう。
やはりどこかで「個」(孤)としての自分に向かいながら、「仲間が集う状況」をつくることが必要になります。
「ひとりになれ」ということではないのです。人はどこまでいっても他者の力が必要です。
しかし、全員発揮のリーダーシップが発動する条件には、全員が「ひとりで立つ勇気」を持つ必要があります。
そのときにはじめて、きらりとひかる大きな成果が生まれるのです。
「ひとりで立つ勇気」を持つためには、
・自分はどんなことに熱量を感じるのか?
・自分はどうありたいのか?
・自分にいまできることは何か?何をできるようになりたいのか?
・どうしたら仲間が集まってくれるのか?
を真剣に考える必要があります。ただし、これらは「考えるだけ」ではよくわからないのがポイントです。
「考えて、試しにやってみる」こと、そして「仲間とともにあること」しか、「確信」を持つ方法はないのです。
考えてみれば、自分の中にある「熱中してしまうこと」というのは、それ自体が形として存在していて、それを見つければ正解っていうわけではありません。なにかひとつの答えを発見すると思って探し始めると、いつまでたっても見つからないものかもしれません。
自分たちができることは「確信度を高めること」だけです。正解かどうかはよくわからないけれど、自分はこちらの方向に歩みを進めていきたい、そして、そちらに進む自分を信じられるようになること、それこそがおそらく「ひとりで立つ勇気」を持つということです。
そしてその「確信度を高めること」も「自分ひとり」では完結できません。自分を信じて行動してくれる人がいてはじめて勇気が湧くという側面があります。
こうした「個」と「他者」、「組織」の関係は本当に難しいのですが、こうしたことと向き合う機会をつくることも必要なのかなと最近考えています。舘野ゼミでもいまこうしたことを試行錯誤中なので、またこのあたりは発見があったら記事にしていこうかなと思います。
■番外編:ダイの大冒険を読んだことがある人には
ちなみに、今回の記事を書いている途中で、漫画「ダイの大冒険」のあるシーンが頭の中で思い浮かびました。
それは魔法使いのポップの持つ「アバンのしるし」が光らないというシーンです。
大魔王バーンを倒すためには、アバンの使徒5人全員の力を合わせて伝説の魔法ミナカトールを唱える必要があります。しかし、ポップだけアバンのしるしが光らない。
ひとりだけ取り残されてしまったポップは「自分は他の4人と違い、王族でもないし、生まれつきの戦士でもない」と言います。「自分には何もないのではないか」と不安になり、その場を逃げ出そうとします。
自分が持っているものはなんだろうか。本当に自分に貢献できるものなどあるのかどうか。
こういうことが見えなくなるときに本当に不安になります。
ポップが絶望したとき、それを希望にかえたのは、仲間の行動でした。
ああ、ダイの大冒険をめちゃくちゃ読みたくなってきた...笑
勇気というとかっこいいかんじがしますが、それは「悩みのない人」のことではなく、臆病さと向き合えた人のことをいうのかもしれません。
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リーダーシップについては、最近こちらの新刊がでたので興味ある方は読んでいただきたいですが、結果的にダイの大冒険のPR記事みたいになりました笑(スポンサー記事ではございません笑)
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