もう普通に30歳でいいかもしれない

 年を取ることになんの喜びも抱かないし、長生きするのが良いことだという感覚もないので、誕生日を祝われるのが少し苦手だったりする。ありがたいけど。だから各種SNSにも誕生日は登録していない。そんな僕はこの調子だと次は30歳になる。

 そもそものクールな(陰気な)気質に加え、28歳まで大学にいて学生気分でいたこともあってか、「30代の自分」というのが全く想像できずにいた。なので20代中頃の自分は、30歳になる前に終わるもんだと漠然と思っていた。今でも人のことを「"大人"の人は~」と言ったりするのだけれど、それは僕が自分のことを未だに"大人"だと認識していないところがあるからだと思う。そういう感覚も相まって「30歳の自分とか意味わからんすぎて無理ぽよ説」の信憑性が高くなっていた。
 しかし、ごく普通にだんだんと気がついてきたが、別に想像ついてなかろうが30歳にはなる。なんかもうかなり普通にそうなりそうな気配。好きな芸人さんたちも普通に30代とかで、職場のイケてる先輩方も普通に年上(=30代以上)。そりゃそうか。そんなもんか。30代でも50代でも関係ない。何歳になろうとイケてる人はイケてるし、楽しい人は楽しいのだろう。ずいぶん野暮なことを気にしていた。

 それはそれとして、現状、自分は子どもを欲しいと思っていない。シンプルに感覚的なこととして「子どもが欲しい」という気持ちをリアルには抱いたことがない。感覚的じゃなく冷静に考えてみた場合も、むしろ欲しくないと思う。あまりにエゴが過ぎるし、責任が恐ろしい。
 さらに「結婚願望」なるものにもピンと来ない。子育てに興味がないというのはこれを補強している。仮にめちゃくちゃ誰かに惚れ込んで、一生一緒にいたいぜって気分になったとしても、その人を結婚という謎の契約によって束縛したいとは思わない。同時に自分も誰かに束縛されたくなさすぎる。「付き合う」にすらアレルギー反応が出るレベルで束縛するのもされるのも苦手である。「家族」というスタイルにしっくりきていない一方で、「友達」のことはめっちゃ最高に好き。
※1 チャットモンチーの橋本絵莉子さんやAマッソの加納さんに対して「好きすぎる、結婚してください」という感情が発生するという点から、結婚願望がないわけではないという説も唱えられている。
※2 自分がこういう思想になっている背景には"家庭の事情"の影響が少なからずあり、「それは不当なものだから構わず拭いなさい」という呑気な意見もあるかもしれないが、そういう事情がなくても自分はこういう人間になっていただろうと考えることにしている。今の自分のスタンスになにも改善すべき点などない。平均的でないがゆえに不便だと思うことはあっても、不憫に思われる筋合いはない。

 と、いうようなことを踏まえると、僕はいわゆる「ライフステージ」において既に"最終段"にいることになる(30歳になることすら想定してなかった人間なので当然「老後」というものは存在しない前提の上で)。
 そうか、最終段か。じゃあもうあとは好き放題やって散るだけやんけ!と思うと、29歳か30歳かなんて、かなりどうでもいい話である。わりと気にしてきたのに、いつのまにか向かえることになるというのは"時の流れ"に対して少し癪。もはや年齢聞かれたときに先取りして「今年で30です!」と答えていいくらいかも。先に備えて馴染んでいく作戦。
 この、半年以上先のことに対して今から備えるビビりっぷりよ。最終段にいるということは、「別に満足」/「隣りあわせ」ということでもあるので綱渡りではあるのだ。別になるようになるし、なるようにしかならんので、"全部大丈夫"ではある。何の心配もない。無限の退屈とどう向き合うと楽しいか、だけ。

オススメ作品紹介コーナー!!

漫画:近藤 聡乃『A子さんの恋人』

 数ある「一番好きな漫画」の内の一つです。全7巻で程よいし、全員読んでください。優柔不断なA子さんの29歳から30歳を迎える1年を描いた物語。美大生時代からの付き合いなK子、U子、I子、そしてA太郎。卒業後にアメリカで出会ったA君。だらだらとモラトリアムを延長してきた29歳の彼彼女らが生活、創作、人生、恋愛、自己実現、みたいなあれやこれやの中でいろいろとケリをつけていく、優しいお話です。泣きます。

曲:柴田聡子「雑感」

 老後がない想定で生きているので、心底、年金を払いたくない。正確には、僕は「将来自分が年金をもらうため」と思うと心底払いたくなくて、「今現在働ける人とそうでもない人の間で再分配を行っている」と思えば許容できる感覚です。

給料から年金が天引かれて心底腹が立つ

柴田聡子「雑感」

柴田聡子さんの「雑感」という曲は、上記のフレーズを含む、自分にとっては刺さりまくるパンチラインだらけの大好き凄すぎ曲。淡々と雑感を述べているだけっちゃだけやのに、刺さる人にはとにかくぶっ刺さる名曲です(「対象商品 全品20%OFF」みたいな言い方をしてしまいましたね)。

毎日のせいで涙を流す暇もないだけです
片目で歩いているのを偉いって言われるのも妙です

柴田聡子「雑感」

積み木を崩さないように
見ていないとこで押さえている
ように見せかけていつだって離せるのは私です

柴田聡子「雑感」

ちなみに、KID FRESINOによるRemixでもそこがフューチャーされています。

ブチ抜いていきましょう

トリプルファイヤー吉田の熱帯夜(YouTubeチャンネル ブチ抜く吉田)
https://www.youtube.com/watch?v=6K4MrGfry3c

僕も最高でいたいです。
ブチ抜いていきましょう。