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掌編小説 「しらぬい」

 頭に霞でも掛かったような不明瞭な感覚が、外界から届く細切れになった現象を整合性と意味のある情報として理解される事を阻む。それは不安として私の脳に認識されるはずだ。
 例えば、今朝飲んだ薬の錠数は、果たして正しかったのだろうかという些細な不安が募り始める予兆があった。そして、出がけに玄関の鍵は掛けたかしらんー。
 そんなことを今更思ってみてももう、引き返せない距離を車で走って来た。

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