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茨城アストロプラネッツ観戦記#3 「ホーム初勝利(2023.05.05)」

朝の8時に家を出て、今日は古河を目指す。茨城アストロプラネッツ、久しぶりのホームゲーム。僕の茨城通いも3回目。プラネッツは現在、3勝10敗で最下位。伊藤監督は苦しんでいる。

半蔵門線から直通の東武線で北に向かう。越谷を越えて、春日部を過ぎて、東武動物公園のまだ先、久喜でJRに乗り換える。連休のお出かけ客で電車は混んでいる。僕はHPでプラネッツの最近の戦いをチェックする。

直近はアウェーで栃木に4連敗。4対7。4対11。1対9。6対9。自慢の投手陣が打ち込まれているのか。伊藤監督はもっと采配を学ばなければ、と言っていた。

古河駅に着く。駅前は昔の街道沿いの佇まい。寂しい感じもあるけれど、何か不思議な古道具屋があったり、石畳の風情のある小道や石蔵を改装したホールや文化的な施設もある。

試合会場の古河市営球場(ヨシダスタジアム)は駅から2キロ半くらい。歩くと30分くらいだけど、僕は前回の経験を踏まえて、レンタサイクルの場所を下調べしておいた。ダンドリがいい!でも10時半くらいに観光案内所に着くと自転車の姿は無し!全部出払っていたのでした。やはり詰め甘し・・・。

仕方ないからぼちぼちと道をゆく。ま、知らない街を歩くのは嫌いじゃないからいいのさ。国道沿いを歩いていると、いい感じに心も泳いでいく。人間は移動していると、止まっている時にはない思考回路が刺激されていく。

スポーツ選手の取材を20年以上続けてきた。アスリートの人生は大変である事は間違いないけれど、どこか羨ましいなと思ってきた。栄光の瞬間を味わいたかったり、周りからチヤホヤされたいからではない。その「シンプルな人生の形」が羨ましかった。

例えばそれは勝ち負けがはっきりしていること。例え敗北であろうと、目的の為に頑張ったことの結果がデジタルな形で出ること。それはいい。
僕らの仕事は、いつだって曖昧だ。何が勝利で、何がいい仕事なのか、どこか自信を持てない。

そして一番羨ましいのは、組織の目標がはっきりしていること。チームの勝利やリーグでの優勝という目標は絶対的なものとしてそこにあり、チームの監督から選手からスタッフまで(サポーターまで)共有されている。その状態がとても羨ましかった。僕らの、アスリート以外の多くの組織では、その目標は曖昧で、それぞれによって違う。

視聴率や売り上げの数字はあるかもしれないけれど、それが絶対ではない。組織が良くなることを目指す人もいれば、組織の中で自分が上昇することを目指す人もいる。そもそも、仕事にそこまでの人生の意味を託さない人も多い。どれも間違いではないけれど、正解でもない。それぞれ違うところを見つめている集団を率いて、かりそめの組織目標に向かわせようと努力はするけれど、自分自身が信じきれてないんだから、それは難しい。

だからたまに「理想の上司」にスポーツの監督が選ばれてるのを見ると複雑な気持ちになった。ワールドカップやWBCの無い世界の中で、森保監督や栗山監督はどんなマネージメントをするだろう。
(それでも前向きにやるのかな)

伊藤監督が言う「勝利と選手のステップアップの両方を目指す」難しさも、きっと僕らのもやもやと近いところにあるような気がして、だから僕はアストロプラネッツの試合を見にいくんだろうな。

ヨシダスタジアムに着いたのは11:30くらい。前の笠間市営球場もそれなりなローカルさがあったけど、ここはさらに親しみある感じ笑。バックネット裏には屋根があるけど、柱があって一塁ベンチが見にくい。結構日差しも強かったけど、僕は三塁側の客席に陣取って焼き鳥を食べて缶チューハイを呑む。

程なく伊藤監督が入場する。何だか見たことあるNHKのディレクターがインタビューしていて、伊藤監督は笑っていた。明るい感じなのはいいすね。無理してないといいけど。

今日は久しぶりのホームゲーム。アストロプラネッツは茨城の各地をホームとしている。まだホームでの白星は無い。

今日の相手は神奈川フューチャードリームス。アストロプラネッツと似た感じの名前。フューチャーだけでもチーム名っぽいのに、さらにドリームをオン。これまで見た試合は、巨人とソフトバンクの3軍戦だから、初めて見るBCリーグ同士の戦いだ。球場の掲示板は、ストライクカウントと点数のみの超シンプル版。なので、相手選手とかはメモできませんでした。ま、そもそも呑んじゃってるしね。

先発は根岸涼投手。ソフトバンク戦で投げてた投手だ。すごい力投してたからまた見れて嬉しい。調べてみると、今シーズンの初勝利をチームにもたらしたのも根岸で、ここまで通算防御率1.33!
連敗ストップとホーム初勝利の期待を一身に背負っている、ということか。相手の神奈川はここまで、4勝7敗で南地区3位。3勝10敗で4位のアストロプラネッツの当面の目標だ。
(ちなみに1位栃木は8勝3敗。2位埼玉は7勝3敗)

打順が発表される。
前回は4番ファーストでよく声を出していた石垣は2番。そしてリードオフマンとして、巧みなバットコントロールを見せていた瀧上が4番に座っている。注目は3番の新外国人アレン・ハンソン。なんとサンフランシスコ・ジャイアンツにいた元メジャーリーガーだ。

この外人獲得については、ネット記事で読んで気になっていた。

つまりはNPBに売り込むためのショーケースとしての独立リーグ。その役割を積極的に担っていこうという取り組みのよう。こういった取り組みがどれくらい今あるものなのかはわからないけれど、色川GMの発想の柔軟さと行動力に僕はちょっと驚いた。
こういった球界の常識への挑戦、トライ・アンド・エラーのひとつが伊藤監督の就任でもあったのかもしれないと思うと色々なことが腑に落ちてくる。

試合が始まる。根岸は前と変わらず力感のあるストレートで攻めていく。なんというか、捕手のセカンド送球のように、一度肩を決めてから投げ下ろす独特の投法。レベルを判断することは僕にはできないけど、「一度見たら忘れない」のは確か。

初回、ヒットは打たれるけれど注文通りのダブルプレーで抑える。
あ、そうだ。プラネッツの前回からの変化でいうと、内野の守備が驚くほど安定していた。エラーは試合を通じてほとんど無かったのではないか。
前は投手力でよろしく、みたいな感じだったけど、チームで守り勝つみたいな一体感があった、ような。

それでもランナーが出ると、ある人は「ワンアウトずつ行こう!」と言ってたり、ある人は「2ついけるよ!」みたいな声を出してたりするのはちょっと面白かった。声を出すのはいいことです。

そしてバッティングでは、4番に入った瀧上がすごかった。
1回はランナーをセカンドにおいて先制のタイムリーツーベース。
3回も石垣とハンソンをおいてタイムリー。4回にもタイムリー3ベースを打って、ほとんど全ての得点に絡んでいました。あとホームランが出ればサイクルヒット。

そして新外国人のハンソン。第1打席は凡退も第2打席にヒットで出ると、果敢に盗塁!
え、結構体大きいのに大丈夫?タイミングは微妙な気もしましたけどセーフ!オーロラビジョンもビデオリプレイもないので、審判を信じるしかありません。その後も滝上のヒットで果敢にホームを陥れたり、次の打席でも盗塁を決めたり積極的な走塁をアピールしていました。

伊藤監督に聞いたら、牽制のこないタイミング、変化球の配球を見極めて走ったとのこと。NPBに行けたらいいですね。僕は応援します。

試合は気付くと一方的な展開に。ベンチの伊藤監督を見ると、最初はちょっとおとなしくも見えたけど、リードが広がるにつれて、笑顔があふれていました。

そうだよな。何やかんや言って、勝利がチームを明るくして、前に進ませるんだよな。ひとつひとつの勝利や敗北が色々な波紋を与えて、その波紋と付き合っていく先にしか、大きな目標はないよな。すぐに近道を探してしまう自分を、僕はまた反省した。

10点差がついて、7回コールドで試合が終わると監督のインタビュー。当然のように「プロフェッショナル」の音楽がかかる。
まじでテーマソングなんだ。
いつものように淡々と伊藤監督はインタビューに答えていった。

そういえば今日は「伊藤」の姓の人にプレゼントがある「伊藤デー」だった。そんな謎の企画も期待も背負って、伊藤監督の戦いは続いていく。BCリーグの戦いは、9月までの年間66試合。まだ5分の1が終わっただけ。

これからどうなっていくんだろう。根岸は、瀧上は、石垣は、ハンソンは。そして伊藤監督は。目指す場所にたどり着くのかな。僕はもう他人事には思えない。

古河駅までの帰り道は、やっぱり30分近く。僕はまた色々なことを考えながら、とぼとぼと歩いていくのでした。


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