どう書く一橋大国語3現代文2017

2017一橋大学 問題三現代文(評論・約2080字)30分
【筆者】佐々木浩雄(ささき・ひろお)
1975年生まれ。名古屋市立向陽高卒。金沢大教育学部卒。同大学院社会環境科学研究科国際社会学専攻修了。龍谷大文学部准教授。専攻は体育学・スポーツ史。
【出典】『体操の日本近代―戦時期の集団体操と〈身体の国民化〉』(青弓社2016年)
ラジオ体操、建国体操、日本産業体操、大日本国民体操、国鉄体操――全国で考案された集団体操の実態を史料を渉猟してあぶり出し、娯楽や健康を目的にしていた体操が国家の管理政策に組み込まれるプロセスを追って、「体操の時代」のナショナリズムを問う。
【解答例】
 右の文章を要約しなさい(二〇〇字以内)。
〈ポイント〉
・「体操」の「導入の目的」は「そもそも国民の体力や規律の向上にあった」。
・「戦時中の体操」は「国民に、時間・身体・国家を明確に意識させる装置として機能した」。
・「体操は『国家のための健康』を表象するものとなっていった」。
・「体操は、国民精神や総動員的行動といったイデオロギーを具現するものとして盛んに行われた」。
・「体操は国民の健康・体力だけでなく精神的団結を示すものとして存在感を示した」。
・戦後、「スポーツが民主的なものとして学校体育の中心に据えられ、体操はその補助教材的な役割へ後退」したのは、一九三〇年代に体操が「ナショナリズムとの結び付きを強め」たのが理由である。
・「体操」は「国民主義的に実践される」と同時に、「国家主義的に推進され」た。
・一方で「一九三〇年代、ヨーロッパの新しい体操の潮流の影響やラジオ体操の創出・普及によって、体操は健康的で愉快な集団的運動として認められつつあった」。
・「自発的に実行できる手軽な体操として人々の心を捉え」、「集団的実施による高揚感が新しい体操の楽しみ方として受け入れられた」。
・「ここに国民主義的な体操発展の萌芽を見ることはできる」。
・しかし「指導層は集団体操の国家的有用性に着目し、体操は国家政策として展開していく」。
・「体操は国民体力の向上に加えて国民精神の涵養という国家的有用性を認められることで存在感を増していき」、「国家の論理にもとづいた形式的な体操」が「乱造」された。
・その結果、「人々の間に芽生えつつあった体操への自発的取り組みや文化的発展」は妨げられた。
・「体操に内包されるナショナリズム」は、「国民主義」と「国家主義」の両義性を有するが、「国家主義的側面」が前景化されたため、「自発性にもとづいた体操の楽しさが見えにくくなってしまった」。
・その結果、「この時期に創案された多くの体操が戦後に至って消滅してしまった」。

★一九三〇年代、自発的に実行できる手軽な体操が人々の心を捉えたが、集団体操の国家的有用性に着目した指導層により、体操は国家政策として展開されるようになり、人々の間に芽生えつつあった体操への自発的取り組みや文化的発展は妨げられた。戦後、スポーツが民主的なものとして学校体育の中心に据えられる一方で、体操がその補助教材的な役割へ後退したのは、戦時中に体操がナショナリズムとの結び付きを強めたためであった。(200字)

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