どう書く名大国語現代文2017

2017名古屋大学 現代文(評論・約4750字)45分
【筆者】山崎 亮(やまざき・りょう)
1973年、愛知県東海市生まれ。大阪府立大農学部卒。同大学院農学生命科学研究科修士課程修了(地域生態工学専攻)。東大大学院博士課程修了(工学)。京都造形芸術大(現・京都芸術大)教授を経て東北芸術工科大教授(現在は客員教授)。慶大特別招聘教授。
【出典】「豊かな『縮充』社会へ」。『世界思想』2016年春号所収。
【解答例】
問一 a=ヤミクモ(闇雲)b=推奨 c=ヤユ(揶揄)d=アオ(煽る) e=タキ(多岐)f=据 g=陳情 h=マレ(稀)i=携 j=醸成

問二「時代はとても良い方向に進んでいる」と筆者が考える理由を、本文に即して七〇字以内(句読点・かっこ類も字数に含める)で説明せよ。
〈ポイント〉
・「量的拡大から質的向上へ」という「変化の大きな要因」となっているのは、「国内における人口の減少である」。
・「増えすぎた人口を減らすことができるチャンスである」。
・「より質の高いものを生み出す時代へと変化するチャンスでもある」。
・「総人口を適正な人口規模に戻すことができ、質の高い生活が実現できる契機なのだ」。
・「このままうまく人口が減り続ければ、この国は二二〇〇年頃に理想の人口規模へと到達する予定だ」。

★国内における人口の減少は、総人口を適正な規模に戻し、様々な分野で量的拡大から質的向上への転換が促されることで、質の高い生活が実現できるから。(70字)

問三 空欄A・Bに入れるのに最適なものを、それぞれの選択肢の中から選び、記号で答えよ。
★(1)=ウ 人口が二億人まで減ったら危機的な状態になる (2)=コ 神話

問四「縮充時代の課題」とあるが、筆者が考えている解決すべき問題点はどのようなものか。三〇字以内(句読点・かっこ類も字数に含める)で説明せよ。
〈ポイント〉
・「現在の政府」や「産業界」においては、「社会構造や産業構造を変えたくないから人口減少が問題視され、人口が増加させなければ大変なことになると警鐘を鳴らす」。
・「縮充時代の課題は多岐にわたるが、そのひとつは行政依存型住民の意識だといえよう」。
・「『まちのことは行政にお任せ』が成りたったのは、人口増加時代に税収が増えて行政職員も増えた時代のことである」。

★人口増加時代の構造に依存する現在の政府や経済界や住民の意識。(30字)

問五「状況が大きく変わったのは戦後である」について、どのように変わったのか。本文に即してその変化の原因と結果を一〇〇字以内(句読点・かっこ類も字数に含める)でまとめよ。
〈ポイント〉
・「江戸期の地域社会では、自分たちで地域社会を運営するという意識が定着していた」。
・こうした意識に基づく「仕組みは多くの地域で戦前まで残っており、隣組や町内会などの単位で結や講や座の活動が展開されていた」。
・終戦直後の占領軍は、「結や講や座によって強い結束でつながった地域社会が行政や政府や軍部と結びついたことによって、国家総動員の戦争へと向かうことになってしまったのではないかと分析した」。
・「このことは、地域社会が担っていた福祉や教育の役割を別の組織が専任することへとつながり、町内会の役割が小さくなることを意味した」。
・「地域住民は協力して自らの地域で活動する機会をどんどん失っていった」。
・「その結果、地域社会における人と人とのつながりは薄まり、孤立死が発生したり、災害時の助け合いがうまく機能しなくなったりした」。
・「人口増加時代」は、「地域の人たちが協力して進めてきたさまざまな機能を産業化する必要があった」。

★地域社会の強い結束が国家総動員の戦争に結びついたとされたため、その役割が縮小される一方、地域住民が協力して自らの地域で進めてきた機能は産業化され、地域社会における人と人とのつながりが薄まってしまった。(100字)

問六「縮充時代に応じた地域社会」について、筆者はどのような社会と考えているか。本文に即して五〇字以内(句読点・かっこ類も字数に含める)で説明せよ。
〈ポイント〉
・「地域の定住人口が減ったとしても、活動人口〔=地域のための活動に携わる人口〕が増えるとすれば豊かな地域社会が実現するのではないだろうか」。
・「地域の活動人口比率を高めることによって主体的な地域運営を実現させ、それによって地域の人たちのつながりを醸成するという戦略があってもいいのではないか」。
・地域社会は「物質や人間活動が有機的につながったものへと向かうかもしれない」。
・「日本が理想的な人口規模に向かっていると考えるところから、自分たちの生き方を考え始めたい」。

★活動人口の比率を高め、主体的な地域運営を実現することで、物質や人間活動を有機的につなげる豊かな社会。(50字)

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