駆け引きしないM&A|マネーフォワード CFO 金坂直哉
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駆け引きしないM&A|マネーフォワード CFO 金坂直哉

前回、クラビスという僕の創業した会社が第1号としてグループジョインした経験も踏まえて、マネーフォワードがM&Aに積極的な理由について、お話ししました。

マネーフォワードにグループジョインしている会社は、現在4社(クラビス、ナレッジラボスマートキャンプR&AC)です。一般にM&Aは成功率が2割以下と言われている中で、マネーフォワードは、各社の業績も好調に伸長し、ジョインした企業の経営陣がグループ経営に参画するなど、M&Aを通じてポジティブな循環が生まれています。

その秘訣は「ヒト」にある、と僕は考えています。マネーフォワードには、さまざまなバックグラウンドをもった才能あふれる人材がたくさん在籍しています。

今回はマネーフォワード取締役CFOの金坂さんのキャリアや人柄、M&Aに対する考え方などを深掘りしていきましょう。

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株式会社マネーフォワード 取締役執行役員CFO 金坂直哉
2007年に東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社の東京オフィス、サンフランシスコオフィスにて、テクノロジー・金融業界を中心にクロスボーダーM&Aや資金調達のアドバイザリー業務、投資先企業の価値向上業務に従事。2014年に当社入社。2017年に取締役に就任。2019年9月、マネーフォワードシンカ株式会社代表取締役に就任。2020年5月に設立したマネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社「HIRAC FUND」の代表パートナーも務める。

ゴールドマン・サックスから、想像以上にカオスなスタートアップへ

ーキャリアのスタートは、ゴールドマン・サックス証券ですよね。

金坂:はじめの3年間は投資部門におり、大企業に対する投資を担うチームの一番若手でした。その後部署異動し、M&Aのアドバイザリーを担当していました。

前職で様々なプロジェクトを通じて経験したことは、大きく2つあります。1つ目は「ディールは理想通りにいかない」ということ。100%想定していた通りにディールが進んだことはなく、最終的な目標を達成するために、関係者間の着地点を見つけるという経験を何度もしました。2つ目は「米国企業の経営陣の意思決定のスピードの速さ」です。米国企業では、CEOとダイレクトに話せるCorporate DevelopmentとLegalの2トップが必ず案件を掌握していて、すごいスピードでM&Aのディールを進めていました。しかもアメリカでは、いつM&Aの提案をするかされるかわからない環境。そうした中で、彼らは常に頭の体操をしていて、何かあったらすぐに動けるようにしているんです。だからこそ、このスピード感で仕事ができるのだ、と納得がいきましたね。

ー大企業であってもそのスピード感なのですね。

金坂:本社機能がスリムなので、規模は関係なく、大企業でもそういうスタイルでした。米国企業のクライアントと一緒に仕事をするのが本当に楽しく、結果的に前職にいた最後の2年くらいはずっと米国企業関連の案件を主にやらせていただきました。

ー主に大企業の案件が多かったと思うのですが、スタートアップとの接点はどこから生まれたんですか?

金坂:米国オフィスにいたときに担当したスタートアップには、同僚が何人か転職していきました。またプライベートでは、仲良くしていたTreasure Data創業者の芳川さんから「若いうちに一度スタートアップを経験しておいた方がいいよ」とアドバイスをいただいたり、Fondを共同で創業した友人の話を聞いて「ワクワク楽しそうに働いているな」と見ていました

ーマネーフォワードに入社した理由は、そうした経験からでしょうか?

金坂:たしかにスタートアップを楽しそうだと思ってはいましたが、仕事も充実していたので、帰国後も転職するつもりは全くありませんでした。本当にたまたまマネーフォワードに転職した友人を介してオフィスに遊びに行き、創業者の辻さん、瀧さんをはじめとするマネジメントチームとお話ししたときに「そういえばスタートアップで仕事をしたかったんだ」と、あのワクワクする気持ちを思い出してしまったんですよね。あとは、何よりマネーフォワードの事業が大きくなった先で、世の中や日本の金融サービスを大きく良い方向に持っていけるんじゃないかと思いました。人生一度しかないし、後悔したくなかったので、転職を決意しました。

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ー入ってからイメージとのギャップなどありました?

金坂:想像以上にカオスだったので、ギャップが全くなかったわけではないですが、いま思えばスタートアップはどこもそうだと理解できます。僕はそれまでの人生できちんと転職活動というものをしたことがなかったですし、マネーフォワード以外の会社とは話していなかったので、転職活動するうえで見るべきポイント、とかはよくわかっていなかった気がします(笑)。

ー入社後、IPOまでのCFOの役割としては、主に資金調達を担ってきたと思うのですが、はじめから上場後は積極的にM&Aを実施しようと考えていたんでしょうか?

金坂:辻さんとは「上場したらM&Aもしていきたいですね」という話は漠然としていましたが、時期や内容などについてはまったくイメージがなかったですね。僕ら自身もスタートアップのM&Aなんてやったことがなかったですし。そういう意味では、菅藤さんをはじめとするクラビスのみなさんが最初にグループジョインしたことが、マネーフォワードの転機だったと思っています。それまではマネーフォワードという単一だったカルチャーがここ数年で多様化し、僕らが目指すものとして「スタートアップ同士で新しい世界を創っていく」という考えに進化しました。

M&Aは「駆け引きしない」

ーそういえばクラビスのグループジョインって、たしか辻さんと僕がマネーフォワードの社員の結婚式の参列で知り合ったことをきっかけに、もう一組のM&Aという形の結婚が生まれたんでしたね。

金坂:そんなこともありましたね(笑)。

ー僕は金坂さんにお会いする前は、きっとドライな方だろうと想像していました。経歴から想像して「すごいコワモテの人が交渉に出てくるんだろう」と(笑)。ところが、実はウェットな一面を持っていると知って、いい意味で驚きがありました

金坂:僕もはじめてクラビスのみなさんにお会いした時、菅藤さんの警戒心がMAXで、「決して心を開いてくれない人なのかもしれない」と感じたのを覚えています(笑)。何度かお会いするうちにソフトな印象に変わりましたけどね。

ーええ、本気で怯えてましたから(笑)。お会いした後は「なんて物腰の柔らかい人なんだろう」と印象がガラリと変わりました。というのも、てっきりM&Aに関する条件などのハードな交渉をされるものだと思っていまして、クラビスとしては「駆け引きはしたくないです」ときっぱりお伝えしようと考えていたんです。

金坂:なるほど。僕はそもそもM&Aに関しては「交渉」と捉えていないんです。あまりM&Aの当事者同士で交渉しあってしまうと、そのあと遺恨を残してしまう気がしていて。僕らも透明性を持って話し合うように心掛けていますし、逆に先方に駆け引きされてしまうと、ちょっとカルチャーが合わないかなと感じてしまいますね。結局、同じグループ会社となってからの方が圧倒的に期間が長いので、M&Aのプロセスで違和感を覚えてしまったら、その先長く一緒に成長していくイメージはわかないかもしれません。

ーM&Aにおいては駆け引きしちゃいけないですよね。そうした点において、まさにマネーフォワードも同じ価値観を持っていることに驚きましたし、「この人たちとは信頼関係が作れる」と感じました。

金坂:そうですね。幸いなことにクラビスだけでなく、これまでマネーフォワードにグループジョインした企業の経営者は、みなさんとても誠実にお話していただいたので、一緒にグループを成長させていくイメージがわきましたね

「初対面ですでに感じたワクワク感」

金坂:初対面の時の話に戻るのですが、たしかクラビス側が菅藤さん、CFO竹田さん、CTO横井さんで、当社側が辻さん、ビジネスカンパニーCSO山田さん、僕というメンバーでしたね。クラビス側のマネジメントチームの方が、僕らより経験値が高くて、しかも3人のうち誰か1人が欠けたら成立しないという絶妙なバランスで役割分担ができているんですよ。お会いした時に「このチーム、どんだけイケてるの」って正直思いました。

ー逆に僕も、「マネーフォワードのチームには勝てないな」という印象がありました。マネーフォワードグループの一員として参画できるのはとても光栄に思いましたし、「このチームと一緒にどう事業のシナジーを創っていこうか」という高揚感がありましたね。褒めあいはこのくらいにしておきましょうか(笑)。

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金坂:クラビスのグループジョインについて正直な話をすると、僕は取締役CFOとして一定の事業理解はしているつもりですが、最終的にクラウド事業のお客様にどのくらい喜んでいただけそうか、どのくらいプロダクトの開発難易度が高いかについては、現場がわかる事業責任者と比べると解像度が低い。その点は、僕よりも圧倒的に事業を理解している山田さんの判断をとても信用しているんです。そんな絶対的な信頼を置いている山田さんが、クラビスが提供している『STREAMED』について「このプロダクトはすごい。絶対にM&Aを進めるべき」と太鼓判を押していたので、僕はCFOとしてそれを実現させるためにどうすべきかを考えましたね

次のチャレンジは、カルチャーがフィットしないM&A

ーなるほど。どういう会社をM&Aしたいかという見極めポイントについて、金坂さんはどう考えていますか?

金坂:「マネジメントの方が何のために起業をして、どういう経緯で集まったチームで、日々どういう想いで事業をやっているのか」というのは気になりますね。あとはマネジメントだけでなく、メンバーの方も積極的に発信しているかも見ています。会社としてのカルチャーがきちんと形作られているスタートアップは成長すると感じていて、かつ、うちのカルチャーとマッチしそうかなというのは判断軸となります。そして、せっかくグループジョインしていただいたからには、いい意味でマネーフォワードを使い倒して、既存の事業に加えて新しいチャレンジができる環境を作りたいなと思っています。現在も、グループの経営に参画している菅藤さんや竹田さんだけでなく、スマートキャンプ創業者の古橋さんが「HIRAC FUND」で代表パートナーを務めたり、逆にマネーフォワードのメンバーがグループ会社で活躍するなど、良い流れができている気がします。

ーグループジョインの前から「この人はグループ内のこういうポジションで活躍できるのでは」というイメージがわいているんですか?

金坂:菅藤さん、竹田さんが理想的なモデルケースとなり、そういうことを考えられるようになりましたね。最近M&Aのお話しをするときは、グループ内で活躍していただく未来が想像できるかという軸も置いています。

ーマネーフォワードの次のステップとして、カルチャーが必ずしもフィットしないM&Aについてはどう考えていますか?

金坂:チャレンジはしたいですよね。マネーフォワードは、グループ会社含めてカルチャーマッチが大事だと思うのですが、グループ企業すべてが同じカルチャーであり続ける必要はないと考えています。これまで人材や資金力不足などの理由で保守的なアプローチをしてきた会社が、グループジョインによって新たなチャレンジに踏み出すことができ、さらなる価値を一緒に創造できるようなら、スタートアップではないM&Aも検討したいですね。

ーそこは超えたい壁ですよね。例えば「安定した既存事業はあるけれど、化学反応を起こしたら新たな種が生まれるかもしれない」「経営者が高齢で事業承継問題を抱えているけれど、M&A後にグループ内から後継者を輩出できるかもしれない」など、M&Aによってさまざまな経営の課題解決ができたらいいですね。

金坂:それはいいですね。

起業家に対する「心からのリスペクト」

ーそういえば、金坂さんに対して僕の印象に残っているエピソードがあったので、ご紹介させてください。以前「このスタートアップに興味があるから一緒に会いに行きましょう」という話になった時に、僕はなんとなく、マネーフォワードのオフィスにその起業家をお呼びするのかなと思ったら、当然のように金坂さんが先方オフィスへ訪問したんですよね。その時に金坂さんが「起業家の貴重な時間を奪うなんて絶対できない。こちら側が相手に敬意を払い、時間を消費するのは僕らであるべきだ」と仰っていて、起業家に対するリスペクトを感じました。

金坂:事業を創る、ましてやリスクが一番高い「起業」という形で取り組んでいる人たちに対するリスペクトはやはり根底にあります。さらにそんな大変な思いをして起業を経験した人が、さまざまな経営判断によりグループジョインすることに対しては、本当に尊敬しかないですね。

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今回の金坂さんとの会話を通じて、M&Aに対する考え方だけではなく、僕個人が前からお聞きしたかったご自身のプロフェッショナルの源泉や、他者に対するリスペクトの背景なども伺えました。金坂さんは本当に素晴らしいビジネスパーソンで、一緒に働ける喜びを感じてます。

マネーフォワードでは、ともに成長し、ワクワクするような新たな価値を創造していく仲間を募集しています。いま解決しようとしている課題や、踏み出そうとしているチャレンジなど、さまざまなアイデアを話し合えたら嬉しいです。

もしご興味を持ってくださった方は、是非ご連絡ください!
https://twitter.com/tatsuyakanto

また最後に、イベントの告知をさせてください!
7/13(火)17:30~、スタートアップ経営者やM&A担当者の方を対象として「イノベーションを創出するスタートアップM&Aの最新トレンドとPMI成功の秘訣」と題したオンラインイベントを開催する予定です。今年発表されたレポートをもとに近年のスタートアップM&Aのトレンドや課題を解説し、また具体的な大企業×スタートアップ、新興企業×スタートアップのM&A事例も紹介させていただく予定です。ご関心がある方がいらっしゃったら、ぜひご参加ください!



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読んでくださってありがとうございます!!
マネーフォワード執行役員CSO。 クラビス代表取締役CEO(マネフォにM&A)。 海外拠点の立ち上げが得意(バングラ・タイ・インド・シンガポール・ ベトナム)。 座右の銘は「人生は旅」。