僕のリズム論。"リズムにビブラートをかけるって、どうやるの?"
前回、こんな内容の記事をアップしました。
その中で「リズムのビブラート」という概念を提案しまして、これがグルーヴの本質じゃないかということを書きました。
では、このリズムのビブラート、理屈は分かったけど実際にどうやって演奏したらいいんでしょうか?
何となくリズムを揺らすだけでは、単にズレたリズムになってしまいます。
ということで、今回はどのようにしてリズムにビブラートをかけるのか、説明しようと思います。
まずは、まっすぐな直線を書きましょう
まず、リズムにビブラートをかける前に、まっすぐな直線が引ける、つまり正確なリズムが演奏できる必要があります。
ズレないリズムですね。
どうやってズレないリズムを作るかが問題ですが、それを体に元から備わっている機能を利用して実現していこうと思います。
体に元から備わっている機能なので、誰にでもできます。
リズムの3要素
リズムは3つの要素に分けることができます。
1.「テンポ」 曲の基準となるビート・拍のこと
2.「パターン」 8分音符、3連符など実際に演奏されるリズムパターン
3.「伸縮」 リズム全体が早くなったり、遅くなったりすること
楽譜にするとテンポが縦軸で、リズムパターンが横軸って感じになりますね。
そしてここが重要になりますが、そのリズムパターンが全体的に早くなったり遅くなったりすることを僕は「リズムの伸縮」と呼んでます。
リズムの3要素をコントロールする
先ほど挙げた3つのリズムの要素、これを一つずつ正確にコントロールできたら、理論上は正確なリズムを演奏できます。
そのコントロール方法がこちら。
1. テンポは「体幹」で感じる。
2. リズムパターンは「指先」で刻む。
3. リズムの伸縮は「重心移動」で調整する。
です。
一つずつ説明しますね。
1.テンポは「体幹」で感じる
体幹というのは、首、胸、腰などの胴体部分のことを指します。
さて、テンポを体幹で感じるのがなぜ良いのでしょうか。
それは体幹は細かい動きが苦手で、テンポをちょっと速くとかちょっと遅くとか、リズムを微妙に変化させることに適していないからです。
つまり逆に言うと、「一定のテンポを感じるのに向いている」ということになります。
試しに、テンポ120くらいで首を大きく縦に振ってリズムを取ってみてください。
それを、だんだん遅くしてみましょう。
どうでしょうか?「遅くしよう!」とちゃんと意識しないと遅くできないと思います。
逆も同様です。
一定のテンポで首を振ってる方が楽なんですね。
また、実際に体幹を大きく動かさなくても、イメージだけでもできます。
例えば、お腹の中でボールが弾むようなイメージをするだけ。
イメージすることでも、実際に体幹が動くんですね。
イメージだけでできると、体幹の無駄な動きがなくなり、演奏の邪魔をしなくなるので便利です。
でも、少しテンポを感じる力も弱くなります。
テンポを強烈に感じたいなら、ジャンプするのが一番ですね。
2.リズムパターンは「指先」で刻む
体幹と比べて、指先は細かい動きが非常に得意です。
しかし、細かい動きが得意すぎて、ちょっと速くしたり遅くしたりの微調整が簡単にできるので、逆に一定のテンポを感じるのは不利なんですね。
だから演奏する時には必ず、まず体幹でテンポを感じて、それに合うように指先でリズムを感じるんです。
指先は器用なので、体幹のテンポにぴったり合わせることは簡単にできます。
ただ、先に体幹でテンポを感じていないと、どこに指先のリズムを合わせていいか分からなくなりますから、締まりのない、揺れたリズムになってしまうということですね。
指先でリズムをコントロールするのは、実は歌にも有効です。
ちょっと難しいシンコペーションなど、ほんの少し指を動かしながら歌うとリズムが取りやすくなります。
3.リズムの伸縮は「重心移動」で調整する
最後にリズムの伸縮はどのようにコントロールするのでしょうか。
まずはリズムが「縮む=速くなる」状況を考えて見ましょう。
例えば、難しいフレーズを演奏するとき、気持ちが焦ってしまってテンポが走ったという経験、みなさんあると思います。
なぜテンポが走ったのでしょうか?
「気持ちが焦ったから」でしょうか?
実は違います。
原因は、気持ちが焦った結果、体の重心が前に傾いたからです。
重心が前に傾くと、物理的な理由で、テンポが速くなります。(物理的な説明は割愛します)
逆に重心が後ろに傾くと、これも物理的な理由で、テンポが遅くなります。
つまり、テンポが走るのは気持ちの問題じゃないんですね。
気持ちが焦った → テンポが上がった
ではなく、
気持ちが焦った → 重心が前に傾いた → テンポが上がった
となります。
ということは、気持ちが焦っても、重心が前に傾かなければテンポは上がらないということになります。
ではどこが重心の真ん中かというと、「前にも後ろにも重心移動しやすい位置」がとりあえず真ん中と思っていただいていいです。
ちょっと実験してみましょう。
次の通りに体を動かしてみてください。
1. 普通に立つ。もしくは椅子に座る。
2. 少し前に体を傾ける。(その時の傾きやすさを覚えておく)
3. 元の体勢に戻す。
4. 少し後ろに体を傾ける。(その時の傾きやすさを覚えておく)
前と後ろ、どちらに傾ける方がやりやすかったですか?
おそらく、ほとんどの方は体を前に傾ける方がやりやすかったと思います。
つまり、だいたいの人は日常的に前に傾きやすい姿勢をとっていることになります。
だから、常にテンポが走りやすい状態だということです。
逆に後ろに体を傾ける方がやりやすい場合は、テンポは遅くなりがちです。
では重心の真ん中を見つけましょう。
自分で体を前後に揺らしながら、前への傾きやすさと後ろへの傾きやすさがだいたい同じくらいになるようにしてみてください。
そこが真ん中です。
その位置で演奏すると、リズムの伸縮が自然発生することは無くなります。
では、リズムにビブラートをかけてみましょう!
はい、これでリズムの3要素「テンポ、パターン、伸縮」を「体幹、指先、重心」を使ってコントロールすることができるようになりました。
つまり、正確なリズムが表現できるようになりました。
ここがスタートラインです。
これから、ようやくリズムにビブラートをかけていきます。
どのようにビブラートをかければ良いでしょうか?
勘のいい方はお気づきかもしれませんね。
そうです。「体の重心を前後させるだけ」でリズムにビブラートがかかります。
重心が前に行けば速く、後ろに行けば遅くなるので、重心を周期的に前後させればそれがリズムのビブラートになります。
意外と簡単そうです。
例えばこんな感じでビブラートをかける場合、
こんな感じで重心を前後させます。
もう、そのまんまですね。
ちなみに、重心を前後させる場合、見た目ではっきり分かるくらいに大きく体を動かす必要はないです。
体を大きく動かしたからといって、ビブラートも大きくかかるというようなものではありません。限度があります。
ほんの気持ちだけで十分です。
見た目に分からなくていいので、自分の中で「少し前…」「少し後ろ…」って感じで思いながら演奏します。
その若干の動きが、音楽の表現に大きく影響します。
まとめると、こう。
はい、今までの内容をまとめると、ビブラートをかけるには次の3つを意識すれば良いということになります。
1. 体幹で、テンポを感じる
2. 指先で、リズムパターンを刻む
3. 体の重心を前後させて、リズムのビブラートをかける
以上です。
さらに、ここからいろんなビブラートのバリエージョンを使い分けることで様々なグルーヴを表現できるのですが、それはまた後日ということで。
今回は以上です。
是非、お試しください!
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