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こんにちは。
寒い日が続いていますが、みなさん、元気にお過ごしでしょうか。
前回、前々回とドクター韓国研修についてお伝えしてきました。

まだ、読んでないよ!という方は、
前々回のnoteから、読んでいただけるとうれしいです!

さて、今回のnoteのテーマは“AI”です。

2022年度の診療報酬改定で、AIを用いた画像診断補助が保険適用になり、2023年には、生成AIの医療への活用が注目されました。

そして、AIの影響は、美容医療も例外ではなく、今後、美容医療領域へさらに広がっていくと思います。

実際、どのような活用が期待できるのか。
今回は、そんなお話をしたいと思います。

■AIが一番得意なのは診断

AIを医療で活用するとき、
まず、得意分野といえるのが、「診断」だと思います。

例えば、AIがその患者さんに適切な薬を選択してくれれば、内科の先生の助けになるかもしれません。

また、美容皮膚科でも、ある程度、診断をAIがサポートできる可能性があります。
例えば、シミ。

皮膚科の先生の鋭い観察力、経験があれば、
レーザーがいいのか、どれくらいの出力がいいのか、
肝斑治療を優先するべきか、もしくはシミと肝斑治療を同時並行で進められそうかなどを見極めることができます。

そういったことを、AIであれば、映像の解析で的確に捉え
その患者さんにとって効果的な治療法を提案できるかもしれません。

よく「AIに仕事を奪われる」と言われますが、
僕は、AIをいかにうまく使っていくかが重要だと思っています。

■AIの手術への応用は困難

医療にAIを活用することで、多くのことが期待できますが、僕は手術への応用は難しいのではないかと思っています。

例えば、まぶたの手術の場合、
切った先にある眼輪筋の状態を判断しないといけないし、眼輪筋も厚い人、薄い人、中間位の人がいます。

眼輪筋を取った、さらにその先には、様々な組織があり、それも大きさや位置、状態が異なります。

それらを全てAIに読み取らせて、手術の方針まで決めていくのは相当難しいことです。

韓国研修でジョン先生やキム先生の手術を見ても、こうした匠の技をAIが代替するのは、現実的でないように感じます。

■美容医療でのシミュレーションの活用

美容医療では、治療の結果を予測するために、
シミュレーションを使うことがあります。

例えば、鼻の手術をする場合、
ビフォーアフターでシミュレーションし、3Dでアフターを示します。

アフター画像には、「これはシミュレーションであり、結果を示すものではありません。」と表記するのですが、今は、このシミュレーションにほぼ合致させることができる技術力を持つドクターが増えています。

同じシミュレーションでも、部位によってその方法は変わってきます。
例えば、まぶたは柔らかく、動きがあるため、PC上でのシミュレーションには不向き。
そのため、ブジ―という細長い棒を使って行うシミュレーションが適しています。

一方、鼻やあご、フェイスラインなど輪郭の手術の場合は、PC上のシミュレーションが有効です。

美容皮膚科では、世界中のクリニックや研究機関に普及している、「VISIA® Evolution(ビジア)」という肌画像診断器があります。

VISIA® Evolutionは、最新のカメラと分析技術で肌のシミ・キメ・シワ・毛穴・炎症・アクネ菌の代謝物で肌年齢などを解析できるもので、隠れジミもわかるため、効果的な肌治療の提案が可能です。

このように、さまざまなテクノロジーと美容医療との連携によって、治療の選択肢が広がり、
より効率的な治療につながる可能性が期待できそうです

■治療が想いもよらないところに影響することも

Scientific Reports から2023年に報告された
気になっている論文があります。

それによると、10人の女性の眉間にボトックスを打ち、MRIで見たところ、脳内の側頭葉内側にある扁桃体紡錘状回の活動が変調して、
脳の機能が低下していることがわかったというのです。

眉間は人の表情をつくる部分。
その表情は、脳のある部分が喜怒哀楽をコントロールしているのですが、ボトックスで動きをとめると、それに対応する脳の働きが低下するため、シワが寄りにくくなる……ということですね。

実際、僕たちは、「ボトックスは3~6ヶ月間隔で打ちましょう」と患者さんに伝えており、何回か打っている患者さんのなかには、打たなくてもシワがよりにくくなるケースがあります。

これを、僕はこれまで、「眉間の筋肉が学習して、ボトックスの薬理効果は少なくなっているけれど、まだ続いていると思い込み、シワが寄りにくくなっている」と思っていました。

しかし、この論文によると、脳のある機能が低下して(つまり脳の活性が落ちて)、フィードバックがかかり、表情をつくらなくなっている可能性があるというのです。

これがいいのか悪いのかは、わかりませんが、
治療が思わぬところに影響を及ぼすことがあるのだと、びっくり。

人体には、まだまだ、分からないことがたくさんありますね。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

美容医療に関する研究は最近活発になってきていますが、病気の治療や病態の解明と比べると、まだまだです。

一方で、老化のメカニズムを解明し、
そこをどのようにしたらいいかは研究が進んでいます。

QOLをあげるのが美容医療ですが、
人生100年時代。

今後は、アンチエイジングの方向にシフトしていくのは、間違いなさそうです。

美容への価値観は時代とともに変化しています。技術はますます発展し、美容医療を取り巻く環境も大きく変化していくでしょう。

AIを活用する未来を見据えた、美容医療への取り組みを真剣に考えていかなければなりませんね。

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