神戸の展示会にて採寸マリオコーデ

採寸をしないオーダーメイド通販について考えている

私の本業は普段は革靴屋なんですが、ブログやYouTubeを更新していると、こんな問い合わせをいただきます。

遠いのでお店には行けないんですが、普段履いている靴はマグナーニの41.5なんですけど、同じくらいのサイズでつくっていただくことは可能ですか?

嬉しいですね。こういうの。どこかで自分だけの一足を探されている方に見つけていただけると、SNSを更新していて良かったなと思います。


最近、こんな問い合わせに悩んでます。

多くの場合、ブログ記事で紹介している、このデザインの靴で、このカラーにパティーヌしたものが履きたい。というようなご希望でメールが届きます。


このローファーみたいな鮮やかな赤い靴を探していました。とか。

デザインはこの先が細くなっているヒモ靴を希望します。とか。


確かに欲しいけどお店には行けない、という人の気持ちは良くわかる。

高級ブランド靴をネットで買っている人もいるし、普段自分が履いている靴のブランドやサイズを伝えて出来るものなら、同じくらいのサイズでつくってもらいたい。履き心地よりもデザイン重視だったら、自分でもそう思う。

でも、靴の履き心地や足との相性を良くしたいと思ってスタートしたオーダーメイドの靴屋としては、それでいいのかどうか悩むところ。

あと、サイズが合わなかった時にどうするのか。

在庫を持って販売しているわけではないので、基本オーダーメイド品はキャンセル、返品が出来ないようにしている。その代わり、納品後1年間のサイズ調整やパティーヌが変色した場合の染め直し対応をつけている。

来店いただいたお客様には、足を計測してつくったのに、明らかに大き過ぎる、小さすぎる場合や、製作ミスなどのこちらの都合で納期がかかり過ぎてしまった場合のみキャンセル、返金するようにしている。


「オーダーメイド靴 通販」で検索すると、結構ある

採寸シートをダウンロードして、画像を送るようにしていたり、フィッティングサンプルを発送するようなお店もある。

独自の採寸キットを送付して、仮合わせに対応しているお店もある。

しかも、どこも思ったより安いんですよね。オーダーメイド靴の通販が4万円から作れます!マジで?って感じです。ウチの靴も最初は割と価格破壊したつもりだったけど価格では競争出来なくなってきた。

変化し続けなければ、生き残れない

おそらくZOZOがECオーダー靴の可能性をもっと広げてくるだろうから、新しいことに挑戦しないといけないな、と思ってたので良いタイミングとも言える。

これは、ネット上でも細かくサイズを選びたいという人たちが一定数いて、オーダーメイド靴が広まってきたいうこと。

そんな時代の変化に、立岡靴工房の特徴である手染めカラーオーダーの靴を履きたいと言っていただいているお客様に来店の手間をかけずにお届けするにはどうしたらいいだろうか。

しかも、お互いのリスクを下げながら。


ネット通販のサイズ感をマグナーニで考える


立岡靴工房は、靴と同じレザーでつくった革雑貨のネットショップをオープンしています。

ここに商品として追加したら販売は出来るけど、オーダーの方法や販売条件を考えないといけない。

・ネット上で完結させるために、採寸キットを準備するのか

・採寸は行わず、決まったサイズでカラーオーダーにするのか


ひとまず、この問い合わせから考えていこうと思う

遠いのでお店には行けないんですが、普段履いている靴はマグナーニの41.5なんですけど、同じくらいのサイズでつくっていただくことは可能ですか?

マグナーニの41.5(センチ)ということは、日本のサイズでいうと26.5センチに近い。イギリスのサイズだと8インチ。

マグナーニの特徴としては、木型にもよるけど割とフィッティングはゆったりしていて、日本人の平べったい足に合いやすいと言われている。

実際の数値は公開されていないみたいだけど、25cmのDワイズがジャストフィットに近い自分の足でフィッティングを試してみた。

25センチはフレンチサイズでは39〜40くらいだから、まず39から試してみた。

・横幅に圧迫感がある。長時間履くとジンジンしてきそう
・でも、足の甲周りはジャストフィットに近い。
・カカトのホールド感も良い感じ。

流石にこのフィッティングでは横幅が馴染んできそうにないのでサイズアップして40を試してみたところ

・横幅は大丈夫。ゆったり過ぎるくらいかも。
・でも、足の甲周りに余裕があり過ぎる感じ。
・靴の履き口周りが大きくてくるぶしに食い込む感じ
・カカトのホールド感が脱げるほどじゃないけど大きめ。

ということは、39.5が丁度フィットする可能性が高かったけど、そのお店には無かった。在庫を細かく持つとリスクが高いから、その気持ちはわかる。

でも、実際に履いてみないとわからないから39.5では横幅が微妙にきつい可能性がある。靴のサイズ感は、きついサイズを大きく広げるよりも大きめのサイズを縮めて合わせていく方が精度を出しやすい

大きめの靴を買って、中敷で調整する人も多い。

なので、できれば39.5と40を取り寄せて、丁度良い方を購入、合わない方は返品というのが出来ると一番良い。

それが出来ない場合の落とし所としては40を選んで、土踏まずからカカトにかけて中敷かクッションを入れる対応をすると足の甲がゆるい感じと、靴の履き口が食い込むのを調整するとよさそう。

中敷の加工は適当なインソールを買ってきて入れても良いし、革を買ってきて自分でカットして貼り付けても良い。靴修理屋でも2000~3000円くらいでやってくれる。

つまり、

立岡靴工房の規格で25センチのDワイズ
=マグナーニの規格では39.5~40に相当
⬇︎
40を選んで中敷調整が無難

ということになる。

マグナーニのサイズ感から逆算すると

マグナーニの規格では41.5
=立岡靴工房の規格で26~26.5センチのDワイズが近い
⬇︎
26.5のDワイズを選んで中敷調整が無難

マグナーニの41.5が立岡靴工房の26~26.5センチに近い根拠は、紳士靴の各国サイズ換算表を参考にしている。厳密には違うけど、大体は合ってる。

画像1

そして、Dワイズを選んだ根拠は、例えば今回のマグナーニ41.5を履いている人の足幅が広くてジャストフィットが26.0のEワイズだったとしたら
26.5にサイズアップすると足の幅の部分がDワイズの寸法とイコールに近くなるため26.0E=26.5Dに近いので、サイズ感はほとんど同じになる。靴の長さが変わってくるので、足の裏のフィット感や指先の捨て寸が変わるけどキツイゆるいではほとんど同じ

で、オーダー靴の現場感覚では80%くらいの人が幅がキツイ、とか小指が当たる、といった理由でワンサイズ大きくしている。

もしかしたら、その上で自分で中敷調整しているかもしれないし、もともとゆったりした履き心地が好きで意図的に大きいサイズを選んでる可能性もある。

普段26.0〜26.5センチを履いている人でも、採寸した結果25.5のD〜Eくらいがジャストフィットすることがある。それくらい適正よりも大きいサイズの靴を履いている人が多い。けど、それが革靴に出会った時から通常の選び方だったり、サイズが合わなくて仕方なくそうしていたりする。そんな感じ。

もちろん普段履いている靴のブランド、メーカーによって靴の形状が違うから同じ26.5センチのEワイズ表記でも合うものと合わないものがある。それを課題として解決しようとする人もいれば、大体キツくなければOKという人もいるから靴は足に合わせないといけない!と強要するつもりはないけどオーダー靴屋としては靴は足に合う方が良いよ〜と言い続けてるつもりだ。

だからネット販売はどうかな〜って思い続けていたけど、それをクリア出来たら良いんじゃね?って話なので、どうやってクリアしていくかを考えて悩んでいるって話なんですよ。


ワイズ規格の謎。例えばチャーチの靴では?

最初の問い合わせがマグナーニだったけど、チャーチの靴だったらどうなるかを考えてみた。

遠いのでお店には行けないんですが、普段履いている靴はチャーチの80Fなんですけど、同じくらいのサイズでつくっていただくことは可能ですか?


チャーチの80Fは日本サイズの26.5センチに相当するんですが、80=UK8インチ=26.5センチってことまではわかります。もちろん採用されているラストによって微妙に違うけど、チャーチのワイズ規格がいまいち謎。

でも、80FはワイズがFってことなんですけど、日本の規格との違いがよくわからない。チャーチはC、D、E、F、Gくらいまで展開しているけど、感覚的にはチャーチの80Fは日本の26.5センチのD〜Eに近いんじゃないかと思ってる。

つまり、ジャストフィットは26センチだけど幅が広いとか小指が当たるので26.5にサイズアップする人の場合はこんなイメージ

26.0cm E〜EE = 26.5cm D〜E= 27.0cm C〜D    
 UK 75 F〜G  =  UK 80 D〜F  =   UK 85 D〜E   

なんか、意外とわかってきたかも。

チャーチの規格では80F
=立岡靴工房の規格で26~26.5センチのD〜Eワイズが近い
⬇︎
26.5のDワイズを中敷調整で可能性あり

マグナーニの41.5と近い結果になりました。

あとは、その人の足が本当に大きくて幅が広かった場合と、自分が思っている以上に実は細い足だった場合。どうするか。


立岡靴工房のワイズ展開をどうするか

立岡靴工房の木型は割とバリエーションが多くて、一番細いAからかなり幅広甲高な5Eまで揃えています。プラス幅だけ広くするとか、小指が当たらないようにつま先を大きくして、足に合う靴をつくってる。

割合的にはこんなイメージ

かなり細い   A             2%
細い      B           3%
標準より細め  C       5%
割と標準    D    30%
標準的な幅広  E    40% 
標準より大きめ EE    10%
大きめ     EEE       5%
かなり大きめ  EEEE    3%
難しい大きさ  EEEEE     2%

寸法的にはEでも良いんだけど、小指が当たるからEEにしようか。ということがあったり、Dだとカカトがゆるいみたいだから、Cに落とそうか。というパターンもある。なんなら足の数だけ無限にある

そんな中で、このラストなら多くの人に合いやすい、と採用されたのが今の既製品になっている。エドワードグリーンなら標準が#202で幅広が#606といったように。

もちろんワイズが同じだからといって、例えばチゼルトゥとラウンドトゥの足囲は同じでも足囲から足の甲へのラインが同じというわけではない。例えば靴のデザインで、外羽根と内羽根でもミシンの縫い目や革の重なり方でフィッティングが変わってくるから、それらの最大公約数を考える必要がある。

結果、ボリュームゾーンに準じていくと

割と標準    D    30%
標準的な幅広  E    40%

この2ワイズで各サイズ、デザインを絞って展開するのが良いんだろうけど、それだと他のお店がやってることと同じだから競争になる。
そうなると、ボリュームゾーンじゃないところに注目するしかない。

**かなり細い   A             2%
細い      B           3%
標準より細め  C       5%

標準より大きめ EE    10%
大きめ     EEE       5%
かなり大きめ  EEEE    3%
難しい大きさ  EEEEE     2%**

例えば、B、D、EEの3サイズ展開にしたら

Bでもゆるい人は中敷調整でAに近づけられる。

標準的な人はDで対応する。

大きめの人はEE。大きすぎたら中敷調整でEに近くなる。

サイズの長さについては

26.5B=26.0D=25.5EEの間で調整できる可能性がある。あくまで可能性だけど、YouTubeなどで細かく丁寧に説明すれば実現できるかも。そうなると足に近いサイズの靴が、デザインとカラーの選択肢が多い中でネットで買えるようになりそうだ。


今日のまとめ


・普段履いている靴に近いサイズでのオーダーは受けられそうだ。

→ジャストフィットは保証出来ないが
→各ブランドの履き心地がある程度は調べられるため
→お客様申告に近いサイズでデザインとカラーを選べる
→仮合わせor仕上げ後のサイズ調整できるとベター


・ネット販売は上手くいってそうなサイトを参考にしよう。

→サイズ展開は在庫ラストの強みが生かせるように
→カラーやデザインがわかりやすく、選びやすいように
→出来ることと、出来ないことを明確にする。
→それでも選ばれる価値をつくる。


・もっと靴と足のことに詳しくなりたい

→自分の中で納得出来る根拠を増やす。
→感覚でなく、理論で語れるように
→ブランド毎のラストの特徴をつかむ
→必ず起こるイレギュラーを予想出来るように


・採寸キットを使ったオーダーメイドの可能性は?

→採用しているところを研究する(パクる)
→試しにチャレンジしてみて、検証してみよう。
→どうやったらリスクとクレームを避けられるか?
→それでもオーダーメイドの需要にノルかソルか。

こんなところかな。

noteを書いたことで頭の中がスッキリした。
もし最後までお読み方頂けた方がいましたら、ありがとうございました。

こんな靴屋の通販サイトが良いよ、というのがあれば教えてくださいヽ(*^ω^*)

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立岡海人|立岡靴工房
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