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食文化を考える 2024/04/15

今回は食文化について考えてみたいと思います。

なぜ食文化を考えるのか?

なぜ食文化を考えようと思ったのかというのは、自分自身これからはエリア価値を高めることをメインにビジネスにしていきたいと思っているからです。

エリア価値を高める上で、人が生きていく上で不可欠な食は、その郷土の歴史と文化、産業を象徴するものだと言えます。そこに付加価値をつけるためには、その歴史・文化のストーリー理解がとても重要だからです。同じものを食べるにしても、その歴史・文化を聞きながら食べるのでは、価値が変わってきます。

食事が空腹を満たすために提供されていた、安くて早くてうまいという時代から、良いものを適正な値段で提供するというフェーズに変わりつつあると思います。つまり、行列が出来る店は、それだけニーズがあるのであれば、その分価格をもっと高くして行列をコントールすることをすべきだということです。

贅沢な生活や、拝金主義的な社会を推奨しているのではありません。
豊かな地域を創るためにも、適切なプライシングをして、得た対価を地域に、生産者さんに還元するという仕組みを創るのがまちづくりの観点でも重要なのです。

日本の食文化は非常にクオリティが高いと言えます。自分が日本人なので、自分の舌に合うのは言うまでもありませんが、世界中のどこの料理よりも日本の食事は美味しいと感じています。
美味しいかどうかは個人の主観によるものなので、故に感性の世界であり、それはアートであり、カルチャーなのだと思います。


食文化とは?

食文化というと和食、それも懐石料理のような職人技のイメージが強いですが、日本という国の中に多くの風土があり、そこで息づいてきた様々な歴史とそれに基づいた郷土料理という食文化があります。
それは調理方法という手法論だけでなく、その地域の風土の中で収穫される作物がベースとなった生きる知恵の結集であるとも言えます。
狭義の意味での食文化といえば、調理法の文化のように見えてしまいますが、食文化の表す範囲はもっと広く、人間が生きていく上で欠かせないものであるが故に、郷土の生活そのものが食文化に体現されていると言っても過言ではないと思います。
ある意味食は、生きることそのものであり、今のように食べ物に困らないという状況が生まれたのは、ごく最近の出来事であり、ある意味私たちの先祖は常に飢えとの戦いをしてきたと言っても過言ではありません。どこで食料を確保するのか、それをどうやって食べるのか、またそれをどうやって多くの人に届けるのか、提供するのか、様々な形で職業も生まれ、ノウハウが文化となっていきました。また、宗教との関係も切り離せません。天候に左右される農作物の収穫量が、人外の力だとしたときに、私たちが出来ることは、天に祈ることしかできなかったとすると、そこには恵に対する感謝の念が生まれるのは自然の形であります。

つまり、そういったことも含めたものが食文化そのものだと言えるでしょう。まちを見るにあたっては、これからはそういう背景も含めて、調べていきたいと思います。

これまではまちづくりといえば、建築、土木都市計画の範囲でしたが、これからの時代においては、産業をベースにまちづくりが語られる時代になると言えるでしょう。その中で、単に合理性で全てのものが画一化、コモディティ化する中で、ローカライズするためのキーワードが食文化なのかもしれないと感じています。事実、そのような動きだしをしている方を多く見かけるようになりました。

なぜならば、日本の食文化には、これからの時代に必要とされるサスティナビリティやSDGsに関わること、それのソーシャルグッドな事例がたくさん可能性があるからです。その反面、これまで高度成長の中で失われてしまったものや、失いかけているものもたくさんあります。
今、またそのあたりに注目が集まり始めていて、そのリーディングを務めるような事例がありますので、そのあたりを紹介してみたいと思います。

ガストロノミーレストラン

そこで最近良く耳にするのがガストロノミーです。これはある意味フランスの食文化の形態で、今地方創生の文脈で注目を集めている食文化だと思います。ガストロノミーとは、料理やワインと文化・芸術レベルで考えることのようです。今は、ガストロノミーレストランと呼ばれる、そのレストラン自体が旅行の目的地となるようなレストランが認知され始めています。

観光庁も、地域一体型ガストロノミーツーリズムを推進し始めています。
このあたりもせっかく良い取り組みが生まれてこようとしているのが、補助金によって歪められてしまうのは如何かと思いますが、今後の展開が気になるところです。

とは言え、流行しているからといって、真似してみたところで、一朝一夕で出来るものではなく、カリスマシェフがいたら何処でも出来るかと言えば、そんなに安易なものではないと言えます。
シェフ側にしてみたら、自分のフィーリングとマッチする最高の場所を探しているはずで、どこでも良いとはいかないはずです。
産業と書くとどうしても産業革命のイメージから、労働集約的な大量生産、大量消費の世界を想像しがちですが、地域価値を高めるためのローカル地域産業である必要があると考えています。

平泉ヨーグルト

その一つの事例は平泉ヨーグルトではないかと思います。カンブリア宮殿でも紹介されていて、大谷翔平が絶賛したことで有名ですが、地域の三セクを建て直して、地域の産業として軌道に乗せたことは、まさに地域の価値を高めた事例だと言えます。

オガール紫波マルシェ

オーガルタウンにあるマルシェも、一見どこにでもある産直施設のように見えますが、ただの産直施設ではありません。オガールセンター自体が、紫波町の主力産業である農業を支援する目的で、開発されています。
地元の農家さんがリスクを取って参画すれば、地元の農家さんに恩恵があるような仕組みとなっていて、頑張る人にちゃんと恩恵が出るような仕掛けになっているのが素晴らしいと思いました。
また、地産の農産物だけでは商品が偏るので、ちゃんと地元のマーケットとして機能するように、商品ラインナップをお店側がコントロールしており、地域の方にとって、普段使いできるお店になっていました。

牡蠣食う研

こちらのプロジェクトはスクールの先輩である博報堂ケトルの日野さんがプロデュースした事例で、講義で教えて頂いたものの事例です。
広島の牡蠣のプロモーションとして実施したものですが、これもある意味ガストロノミーの一つではないかと思います。牡蠣の産地であっても、産地での消費が経済につながっていないところを課題として、どうしたら地域の作業につながるかを、情報発信を通じて、食文化を作るプロジェクトと言えます。

堂島酒醸造所 ケンブリッジ

そして、日本の食文化を海外で高付加価値化する事の成功事例が堂島酒造所です。日本酒の酒造をイギリスのケンブリッジの由緒ある古城で地元で何度も説明会を開催し、不可能と思われるような条件をクリアし、開設し、非常にクオリティが高い日本酒を提供している酒造所です。
橋本さんのお話は、木下さんの狂犬ツアーでお聞きする機会をいただきました。
その中で、一番印象的なお話は、安売りをしないという事です。色々なバイヤーさんが買い付けに来たそうですが、特定のルートでした販売しないということで、希少価値を出して、ブランド価値を高めているそうです。こういうのは、メソッドというよりもマインドセットの部分で、自分自身の育ちを含めた経験値でしか出せないものだと思いました。
文化に優劣をつける事には是非はありますが、ビジネス目線で考えた時に、モノの価値をどのようにコントロールするかについては、やはり歴史的に英国の階級社会での挙動に学ぶべき点が多いなと感じる次第です。


まとめ

食文化は、食事という経験を通じて、文化が形成されるので、結局は体験してみないことには、知見が積み上がらないと言えます。つまりは、多くの地域、お店に行って経験値を増やすしかないということでしょう。
もっともっと多くの経験値を積みたいなと改めて思いました。

また、食事は、その人の生活スタイルそのものと言っても過言ではありません。言えに育ちが出やすいものとも言えます。意識しなければ、価値を感じることもないかもしれませんが、その反面、美意識の部分なので、教養や育ちが現れやすい部分とも言えます。故に文化だと言えるのではないでしょうか。
価値をつけるということは、何かに対して優れている、秀でている、価値があるということであり、優劣で語られやすい文脈ではありますが、そこに優劣をつけるというものではなく、それぞれの文化を尊重し合える関係性を構築したいものです。
つまり、優劣ではなく、他と違って希少であるというものに対して価値をつけるという価値観、文化が求められている時代になったのではないでしょうか。

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