「怖い女」沖田瑞穂

新年一冊目の読了本がこれである。

2ちゃんねるからリングから古代神話まで、あらゆる女怪、女神、女の幽霊を俯瞰した本で読みごたえありました。

都市伝説と死の起源神話

第一章から口裂け女、ひきこさんと都市伝説上の存在からはじまって、「人間が死ぬ運命になった理由」の神話につながるのです。
日本ではコノハナサクヤ姫とイワナガ姫姉妹の話として伝わっている話が、寿命があるけど子孫を残せるバナナと死なないが子供も出来ない石の対立する神話が元になっているためバナナ型と呼ばれるくだりが面白いと思いました。もうずっと忘れないと思うバナナの話。

産んだからには死をもたらさなければ

第四章に出てくるコトリバコ~玉手箱などは生命を回収する箱である話。このあたりからじわじわこの本が気持ち悪くなってきました。いい意味で。箱はもともと甁(ピトス)で、生命を回収する子宮なのである。だって。
母性の源はそりゃ子宮だけどさぁ。ぞっとしてる間に始まるのがあらゆるホラー小説の引用。三津田信三、京極夏彦、湊かなえ、花房観音、小野不由美、山岸涼子、貴志祐介、澤村伊智……合間にはさまる世界中の神話。女が怖い話のオンパレード。産んだからには死をもたらして、産んだ命を回収するところまでが女神の領分だってよーくわかる内容でした。

貞子の母性とビデオ

あと個人的に印象深かったのが、「リング」山村貞子のくだり。貞子さんは女性的な特徴を持ちながら子宮がなく、子供を産めない身体だって話はリング原作にあるけど、だからこそ貞子さんの子供として呪いのビデオが増殖していく話になっていくと。
ここに引っかかった理由が個人的すぎるんですけど、私映画と原作リングの存在を知る前に、スピンオフ短編の「空に浮かぶ棺」を読んでしまったのを引きずってるんですね。
これがヒロインの女の子に貞子さんが宿って、「貞子を出産させられる」話で。アンソロジーで読んで気味悪い話だなぁと思って10年くらい経って、やっと原作リング三部作に手をつけてこれかぁ!と理解が追い付いて。
その、自分を産ませて、瀕死の母体を見捨てて出ていく貞子さんの印象が強すぎたので、貞子さんは母親になりたかったけど出来なかったのだ、という話が出てきて、貞子さん女神寄りの存在なんだ。性別越えた怨霊じゃないんだ。そうなんだ。ずいぶん長い時間をかけて、この本のおかげで理解が深まってよかったです。



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