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MBAスクール入学は「上海戸籍」取得のため?-ママ学生の志望理由

修論の第一稿提出などに追われ、すっかり更新が途絶えてしまいました。またぼちぼち、こちらに記事を書いていこうと思います。

まず、中国の地方別戸籍制度「户口/hukou」システムから・・・

入学した上海交通大学のIMBAコースには、私以外にも6人のママが在籍しています。それぞれが、自分のキャリアアップのため、夢を実現するため、育児と家事と両立しながら、ハードなカリキュラムをこなしていました。しかし、彼女たちの志望理由のうち、最初聞いたときすぐには飲み込めなかったものが、「上海戸籍を得るため」というものでした。

日本なら、ただ役所に行って住民登録をするだけで、得られる様々な居住地での権利が、中国では同じようには得られないのです。それが「户口/hukou」システムで、1958年に施行された「中華人民共和国戸籍登記条例」によって定められました。(https://www.moj.go.jp/content/001242620.pdf) その後、都市住民と農村住民を区別する政策がとられ、農村住民は、長い間、都市への移動を厳しく制限されてきたのです(http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1166402_po_071003.pdf?contentNo=1)。

現在では、他の地域から移住することそれ自体は可能なのですが、当該地域の戸籍を持っていない住民は、不動産の取得や子どもの教育機会などで不利益を被るのです。

クラスメイトたちの話によると、上海での戸籍を得るための要件はどれも厳しいのですが、その中で上海の一定以上のレベルの大学で修士を取り上海で就職する、というものがあり、これは他の用件に比べると必要な期間や労力が少ないらしいのです。上海出身ではないクラスメイトの多くは、不動産取得を始めとした多くの有利な条件を得られる上海戸籍取得も目指し、上海のビジネススクールに入学したとのこと。特にママたちは、自分の子どもたちが上海でのレベルの高い教育を安定的に受けられるようにするため、という目的も加わります。

彼女たちのうち、何人かは、平日は子どもを上海近郊の実家に置いて子どもたちの世話を自分の両親に任せ、寮で生活をします。最初は、驚いたのですが、一家の「户口/hukou」がかかっているので、一家皆で支援するのだろう、とその後納得しました。(また、中国では共働きが一般的で、祖父母が孫の面倒を見るのが当たり前。小学校や幼稚園のお迎え時間には、おじいちゃんおばあちゃんが多く集まっている、という背景もあるかと思います)

ママでもあるクラスメイトの一人は、「現在でも、北京や上海などの大都市では、住みたい人の数に対して不動産の数や教育の機会が限られているから、戸籍制度は必要だと思う」と「户口/hukou」システムを受け入れていました。彼女自身も今後、子どもがよりレベルの高い学校に通うためには、上海の中心部に不動産を取得する必要があるため、上海戸籍の取得を目指すと言っていました。

外国人の私からすると、正直「それって、差別、では・・・?」などと思ってしまうのですが、クラスメイトたちは、与えられた環境・条件の中で、粛々とできることにベストを尽くしています。前述の彼女も「中国人は、neutralでpractical」と言っていたのですが、そんな姿勢がここにも現れていると感じました。



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