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2020/6/1 ミュージカル脚本『霧の島』無料公開

今回はシナリオライターとしてのTatsmiです

脚本『霧の島』written by Tatsumi


セイレーンの伝説から着想を得た物語で、ジャンルとしてはファンタジー、悲劇、となっています。

オリジナルミュージカルとなっておりますので曲の制作等も自由に行っていただくことができます。また、こちらの脚本、例えば曲の部分をセリフ的に書き換えて演劇としてやっていただいたり、シーンの付け加えや削除などなどご自由に改変等も加えていただいても構いません!ぜひたくさんの人にこの世界観に浸って、演じて、観ていただけたらなぁと思っています。僕自身、照明や作曲、そして指導者としてミュージカルに関わった経験もあるので曲に関してや演出に関してなどご相談に乗ることも可能です!その際はプロフィール欄のtwitterアカウントやメアドからお気軽にコンタクトをとっていただければと思います。

ただ、皆様の劇団や学校等どのような団体でも(もちろん個人でも)ご自由にご利用いただいて構わないのですが、一つだけ、上演の際に「原案」(改変を加えなかった場合は「脚本家」)としてTatsumi (from ソノヒグラシ)を明示していただくことをお願いさせていただいております。それ以外はほぼ全く制約はなしです(社会常識的に考えて著しくTatsumiやソノヒグラシの評判を貶めるような改変などはもちろんNGですが…)

以下、詳しいストーリーを載せておきます!

(平和な港町の日常からスタート)
船乗りたちの間で「霧が生じている日、レウド海に浮かぶ「霧の島」から美しい歌声が聞こえ、これを耳にした人はその虜となり、怪物に取り殺されてしまう」という噂が広まり、アルマの知り合いの航海士の中にも実際に帰って来なくなってしまう者も現れる。船乗りたちは恐れおののくが、スコルトの主要産業の海運業を止めるわけにも行かず、人々は「霧の島」付近の海域を避けつつ航海を続ける。
ある日、アルマとエクトの乗る船が嵐に巻き込まれ「霧の島」付近に漂流するが、荒波に揉まれるうちに離れ離れに。一人となったアルマは怪物の美しい歌声を聴いてしまう。アルマはその声に魅せられ引き寄せられて行き、ついに「霧の島」に住む声の主カペリナに遭遇する。
アルマはカペリナの姿を見たとき、噂話やカラスのような醜い翼を持つ姿などからカペリナを恐れるが、ふと彼女の歌の内容(?)に気がつく。

  
(ここから回想シーン)
親を早くに亡くしたカペリナの姉カエリナは仕事の都合でスコルトの対岸の町に住んでおり、溺愛していた妹に会うため時折船でレウド海を渡り、カペリナに会いにきていた。しかしある日、船は大嵐に巻き込まれ大破、姉は行方不明となってしまった。カペリナはいつも姉がこちらに来るばかりで姉の元へ行こうとしなかった自分を責め、なんとかして姉を見つけたいと願う。そしてまだ幼かった(といっても15歳くらい)彼女は姉を探し出すために翼が欲しいと祈るのだった。その祈りに応えるように女神セレが現れ、彼女に翼を授ける。セレはカペリナが姉を見つけ出すまで翼を持っていられるよう、彼女が本当の愛(つまり姉妹が持っているであろう愛)を手に入れる(というか確認し合う)日までその翼が消えてしまわないようにした。そして、同時に、彼女が他の人間との愛を手に入れてしまわないようあえてカラスのような醜い翼を授けた(また、いつまでも姉を探し続けられるよう不老不死の力を与えた)。こうして自ら怪物となり翼を手に入れたカペリナは、姉の住んでいた町とスコルトとの間に位置する「霧の島」を拠点に、晴れの日は空の上から姉を探し、視界の悪い霧の日には、カエリナが大好きだと言ってくれた美しい歌声でカエリナを呼ぶのであった。

  
(さらに別の回想シーン)
カエリナは嵐に巻き込まれ、カペリナが懸念した通り死んでしまっていた。彼女はそしてセレがいる天界(?)へ召喚され、カペリナの無謀な行動について聞かされる。妹の状況を案じた姉は呪いを解いて欲しいとセレに懇願するがそれはできない(意地悪でしてくれないのか能力的に不可能なのかは未定)と言われてしまう。そこで彼女はカペリナがなんとかして自分以外の誰かとの真実の愛を手に入れる方法はないかと考え続け、自分が大好きだったカペリナが歌う美しい歌、人々を魅了する歌に着目する。そして、セレにせめてこの願いだけ、カペリナの歌に人間を(物理的に)引き寄せる魔力を持たせて欲しいという願いだけは叶えて欲しいと迫る。セレはその願いを聞き入れ、カペリナの歌声に魔力を持たせた。こうして船乗りたちは彼女の歌声を聴くと引き寄せられるようになってしまったのだった。

  
(さらに別の回想シーン)
年を重ね大人となったカペリナは、ある日ふと気付いた。「こんなに探しても見つからないのであれば姉はもう死んでしまっているのではないか」ということに。その時彼女は自分は一体どうなってしまうのか、という強い恐怖感に襲われる。このまま一生、醜い翼を纏ったまま「霧の島」で孤独に生きて行くのだろうか、と。彼女はその不安を紛らわすように、意固地に姉を探し続けたのであった。カペリナが己の孤独に気付いてからしばらくしたのち、彼女の元に時折船乗りたちがおびき寄せられるようにして現れるようになった。ずっと一人でいた彼女は、人間が自らの前に現れたことに喜び半分戸惑い半分でいた。一方、カペリナの姿を目にした人々はその怪物のような姿に恐れを抱き、彼女を殺そうとしたり、助けを求めに行こうとしたりした。自分のことが人々に知れ渡ったらどうなってしまうのか恐怖を感じた彼女は、自らの前に現れた人間を殺してしまうのであった。そして彼女は常に孤独と罪悪感に苛まれるようになり、何かにすがるようにますます意固地に内心では無駄だと気がついているにもかかわらず、姉を探し続け、その歌声でさらなる犠牲者を増やしてしまうのであった。

  
(通常の時間軸に戻る)
カペリナの、姉を探し求める歌に気付いたアルマは勇気を出して彼女に語りかける。そして彼女がもともとは人間であったこと、姉を探すために自ら怪物となったこと、ずっと抱き続けている孤独感、その手で人を殺めてしまったこととそれに対する罪の意識などを知る。アルマはそんな彼女を助けたい、これ以上彼女の手が血で染まって欲しくないと思い、彼女に自分がこれからはカペリナの側にいること、これ以上姉を探すことを止めることを提案する。カペリナはそれを受け入れ、アルマはカペリナに寄り添いながら二人で幸せな生活を送る。そして二人はお互いを心から信頼し合い、ついに本当の愛を手に入れたカペリナはその呪いから解放された。アルマは呪いが解けた今、スコルトへ二人で帰ることを提案するが、カペリナはたくさんの人を殺めてしまった自分は帰る資格はないと拒否し、アルマに一人で帰って欲しいという。カペリナはアルマが帰った後、海に身を投じるつもりだった。だがアルマは一人で帰ることは頑として受け入れず、カペリナがここに残るのならば自分もここに残り、カペリナを幸せにすると言い切った。

 
一方、アルマと離れ離れになったエクトは九死に一生を得てスコルトへ生還した。そしてアルマがまだ帰っていないことを知った彼は、アルマは「霧の島」へ連れ去られてしまったのかもしれないと思い、親友を助けるため「霧の島」へ向かった。そして「霧の島」に到着した時、彼はアルマとその横に一人の美しい女性を見つける。エクトはその女こそ人々を歌声でもぬけの殻とし、殺してしまう怪物だと確信し、たった今アルマが殺されようとしているのだと思い込む。そして彼は、歌声に幻惑されてしまわないように耳栓をつけ、島へと乗り込んだ。

 
アルマとエクトは久しぶりに再会し、お互いのひとまずの無事に安堵した。しかし、エクトはアルマが怪物に殺されようとしていると思っている。アルマはエクトにことの顛末を話そうとするが、エクトは怪物の歌声を恐れ耳栓を外そうとしないため言葉は届かない。アルマはエクトに耳栓を外すよう(ジェスチャーとかで?)必死に伝えるが、彼はアルマは怪物の美貌と歌声の虜となってしまっているだけだと思い聞く耳を持たない。そして、エクトはついにカペリナに銃弾を放った。
その時、アルマはとっさにカペリナの前に出て被弾する。エクトは親友のそのような行動に呆然とし、アルマの元に駆け寄る。アルマは息も絶え絶えに親友の耳栓を取り、最期の力を振り絞って、カペリナのこれまでの人生について、そしてアルマの彼女への思い、そして自らの命の危険も顧みず助けに来てくれた親友エクトへの感謝の気持ちを伝えた。エクトは耳栓を外し親友の言葉に耳を傾けなかったことを後悔し、泣き崩れた。カペリナもまた愛する人の死に打ちひしがれた。
カペリナは自らの命と引き換えにカエリナ、そしてセレに最後の祈りを捧げる。エクトの、アルマの死に関わる全ての記憶を消して欲しい、と。そして彼女は(アルマの亡骸を海に流し、)アルマを想い、姉を想いながら、自らも海へ身を投じた。

 
(その後)
「霧の島」の噂話はいつしか消えてしまった。船乗りたちはいつもと変わらず海運業に勤しんでおり、スコルトの町は大変栄えていた。
エクトは誰からも信頼される一人前の船長となった。人々の話にしっかりと耳を傾け、困っている者があれば迷わず手を差し伸べた。彼はいつも「嵐に巻き込まれ離れ離れになったまま行方不明となってしまった」親友アルマのことを想っていた。彼は霧の日にはなぜか物悲しいような気持ちになるのだった。

 
レウド海では今でも、霧の立ち込める日になると、誰かを想う美しい歌声が風に運ばれてくるそうだ。


皆様の思い思いの『霧の島』、楽しみにしております!

是非上演した際にはご一報ください〜!


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