空豆
「ずっと食わず嫌いをしていた空豆を焼いて食べたら美味しかった」
ラジオで彼が言った時、ちょうど空豆を剥いていた。
伯母の畑で採れたという。
自分は割と子どもの頃から空豆が好きだ。
空豆の採れる季節は、毎晩空豆を焼いて食べていた。
父はビール派ではなく焼酎派。冷たい緑茶で割って飲んでいた。
「空豆って少し切れ目を入れた方がいいんだね。あの薄皮…ちっとも薄くないけど、あれが剥けやすい。なんか、あの皮も食べるのか…と思ってたんだだよね。多分、誰かが食べて、『うわぁ』とか言ってたの見たのかな?」
あぁ、わかる。
父は食べる時にナイフ入れてたなぁ。
「ちょっと焦げめがつくまで焼いて、粗塩を振って食べる。シンプルなんだけど止まらないんだよね」
わかるわかる。
「え?薄皮取ってから焼くの?剥くの大変じゃない?切れ目入れると中身が『こんにちは〜』って出てきてくれるよ」
こんにちは〜、ねぇ。
母は最初さやごと焼いていたなぁ。いつからさやから出して焼くようになったかなぁ?最初にさやから出して焼くようになったのは父さんだったような気もする。覚えてないや。
「え?ナンプラーと黒胡椒?塩の代わり?」
それ、枝豆でやる。
空豆でも合うのかなぁ?
「ベタベタしそう。でも美味しいの?ふーん。やってみようかな?でもさ、他のナンプラーってなんに使うの?僕、凝った料理しないから、ナンプラーないんだよね」
胡麻油+ナンプラー+ブラックペッパーは無敵じゃん。
もやしでもいいし。イモでも大根でも、なんでも炒めちゃうけどな。
でも、なぜか単品なんだよね。もやしだけ、枝豆だけ…って感じ。
「案外と空豆って割り引かれちゃっているよね。かわいそう。きっとみんなも僕みたいに食わず嫌いしてるんだよ。一度焼いて食べてよ、美味しいから。お腹もいっぱいになるし。豆は体にいいんでしょ?ダイエットしてる人にもおすすめ…って、僕は空豆と一緒にハイボールだからダイエットにならないけどね」
私も今夜のハイボールが楽しみだわ。