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天かす事情

お好み焼きに天かすを入れたい派なので天かすを買ったはいいが、使い切れない…最近叫ばれているフードロスの声が耳に痛い。
今日の昼もお好み焼きにするべきか?…「具がないよ」

「ボクね、発見したんです」

いつものラジオではこちらの心苦しい気持ちなどお構いなしに弾んだ声が聞こえてくる。

「天かす万能の法則!」

おや?聞き捨てならない。天かすとな?

「たぬき蕎麦が食べたくて、デパ地下から海老天かすを買ってきたんだけど、あれって半端ない量じゃん。たぬき蕎麦で食べきれなかったんだよね」

使用目的は多少違うが、使いきれないのは何処も同じか。
ひとり暮らしにはちょっと多い。

「悪魔のおにぎりにするという方法もあるんだけど、家でおにぎり握って家で食べるというのもなぁ、とか思って。それにウチの炊飯器、あんまり調子良くないんだよね。柔らかく炊ける。おにぎりに不向き。水の量をどこまで減らすといい感じに炊けるのか今研究中」

あぁ、そういえば、天かすと麺つゆと青のり混ぜておにぎりにするのあったよなぁ。そっか。そうすれば使い切れるかもしれない。

「でね。卵焼きに混ぜてみたの」

でた!卵焼き。
ホント好きだね、卵焼き。

「あのね。案外、邪魔にならない。主張しないんだよ、天かす」

またスタッフに向けて言っているのか?ウィスパーボイスはやめなさい。
しかも内容が内容だ。そのウィスパーボイスに騙されて、試してみようかな?って思ってしまうじゃないか。

「あのね。いいよ。天かす」

机をパンと叩いて、青年の主張ですか?

「天かす入れると卵焼きがしっかりするの。具によってはフニャっとするっていうか、水っぽくなるときあるでしょ?それを天かすは救ってくれるんだよ」

へぇ…そうなんだ。

「チーズと天かす一緒でも天かすが主張しないから気にならない。卵に天かすが紛れちゃうんだよね。とろけるチーズ入れて卵焼き焼くとどうしてもとろりとしちゃうじゃん。チーズがとろけるから当たり前だけどさ。でもね、天かすが助けてくれるの。切り分けやすくなる。あ、チーズはきちんととろけてます」

へぇ…そうなんだ。あ、2回目だ。

「紅生姜と一緒でもよかった」

あぁ、わかる。粉のないお好み焼き。

「でさ。ボク思ったんだけど、厚焼き卵の体だけどようはオムレツだよね、和風オムレツ。白だしで味つけてるし。でもさ、箸で摘むのがいいからやっぱり厚焼き卵なんだよね。じゃあ、ここで曲いくね。谷山浩子さんで『てんぷらサンライズ』」

オーソドックスに攻めてきましたね。天かすからの天ぷらサンライズですか?
なんて思いつつ、冷蔵庫の小物スペースにある天かすを思い出す。卵焼きに入れるとしたら2回分はありそうだなぁ。
そっか和風オムレツ。納豆オムレツに入れるのはどうかな?
そんなことを考えていたら曲が終わった。

「あ、でもさ。それなりにカロリーあるからね、天かす」

ん?

「じゃあ、はがきに読むね」

人をその気にさせて思いっきり鈍器で殴るようなこと言うなよな。まったく!