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掌編2021

332
365篇、書けたらいいな。
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#連作短編

アップルパイの優しい時間

朝一で鶴丸さんから連絡があった。 「送ってもらったラベル見本。あれでお願いします」 ついに…

たつきち
2年前
8

Bone Scan (Scan4)

真宵野雫がSCANNERSに籍を置くようになったのは大学2年、20歳のときだった。高校の頃からスカ…

たつきち
2年前
2

アトリエのミルクココア

会議の終了を三日月さんに伝える。 三日月さんはアトリエから出た外崎事務官と槻木沢氏を連れ…

たつきち
2年前
2

午前の会議とぬるい水

午前10時。応接ではなくミーティング室での会議だった。コの字型に組まれたミーティングデスク…

たつきち
2年前
6

焙じ茶かおる作戦会議

三日月さんに、彼と槻木沢氏を会わせる、という話を聞いた翌週の火曜日。自分は早速というよう…

たつきち
2年前
5

獅子王の焦燥と葛藤

麒麟公からの伝令の言葉に獅子王は眉を顰めずにはいられなかった。 人間との共存も人間との争…

たつきち
2年前
4

intermission - むしろこちらが本筋かも

金曜日に半ば無理やり退院した青藍は、結局土日を蒼月の家で過ごし、宇治川の言いつけを守って月曜日の今日、蒼月に連れられ病院に行った。食事を取れずにいたので点滴をして、安定剤を処方された。 つい先ほど、同居人の野々隅と共に自宅に帰ったが、明日からも日中は蒼月と共に過ごすことにしている。 先日の病院での捕物では、駐車場で青藍を襲った犯人は捕まらなかった。 犯人はその前に来た自称警察官のひとりであり、その男に関してはこちらの調査で身元は判明している。 ひとりは緋村の顔見知り、中学時代

珪化木

青藍がイギリスに来て1年が経過した頃、青藍と再びキャッチボールができるようになって、僕は…

たつきち
2年前
5

小休止のコーヒー

幸いだったのは大学が春休みに入ったことだった。 はっきりいって彼の体調は芳しくはない。 横…

たつきち
2年前
8

Stand by me

蒼月がこの町に12年ぶりに帰ってきたというのに、子どもの頃の仲間はみんな昨日も会ったかのよ…

たつきち
2年前
7

Gymnopédies

「音楽を流してもいいかな?」 黙々とキーを打ち続ける宵月に向かって森川が訊ねる。 「ええ」…

たつきち
2年前
4

彼の足音

大学で知り合った友人の家に同居させてもらうことになった。 今日は引越し前の下見というか、…

たつきち
2年前
8

甘すぎる菓子

ひと口食べて眉を顰め、「うわっ」と声がこぼれるほど、その菓子は甘かった。 手作り菓子なら…

たつきち
2年前
8

甘い麦茶と午後の始まり

久留美さんに連絡を入れると「いつ来てもいいわよ」という返事だったので、さっさとアトリエに向かうことにした。 その前に勇気を振り絞って三日月さんにLINEを入れた。 「様子はどうですか?」 既読がつかない。少し不安になったが忙しいのかもしれない。午後一で警察が来るという話だったし、午前中は検査があると言っていたし。 「検査はなんの検査だろう?」 久留美さんの好きな焼き菓子を買ってからアトリエに向かう。 田嶋さんと話をするよりも久留美さんに会う方が緊張する。別に厳しい人ではない。