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読書メモ:現代社会はどこに向かうか

Amazon.co.jp: 現代社会はどこに向かうか-高原の見晴らしを切り開くこと (岩波新書) eBook : 見田 宗介: 本

「現代社会は、人間の歴史の中で、巨大な曲がり角にある。」

この一文だけを見ると、いろいろな場で語られているようなことにも思われますが、
この本は、
様々な学問領域を自由自在に移動にしながら、
大局的に「曲がり角」について語り、
将来に向けた希望の光を提示している内容でした。


「曲がり角」の意味とは、こういうことだと理解しました。

物質的な増殖期である「近代」が、環境容量の限界に接近することで、その増殖は減速し、安定平衡期に入る。これが「現代」である。

そういう認識を前提に、「現代」の様々な変化や問題を具体的に挙げたうえで、その構造を指摘しています。

「現代社会」の種々の矛盾に満ちた現象は、… 「高度成長」をなお追求しつづける慣性の力線と、安定平衡期に軟着陸しようとする力線との、拮抗するダイナミズムの種々層として統一的に把握することができる。

一部中略して引用

社会が大きく変化する時の"軋み"や、世代間の"誤解や対立"など、私たちは、この「拮抗するダイナミズム」のなかにいるのだと、改めて認識した次第です。



この本では、
その「曲がり角」を悲観するのではなく、
増殖期を終え平衡期(プラトー)に向かいつつある状況を「(見晴らしのいい)高原」と表現したうえで希望を語っています。
なんて壮大で温かい眼差しだろう、と思います。


「現代」とは、「近代」における"増殖を目的とした生産主義的な<合理化>による圧力"から解凍され、自由と平等が、初めて現実の社会において、実現する道を開かれる局面である。

自分なりに要約しています

転回の基軸となるのは、「幸福感受性」の奪還である。再生である。感性と欲望の開放である。存在するものの輝きと、存在することの祝福に対する感動能力の開放である。

引用。本文では、「幸福感受性」に傍点が付いています。

依拠されるべき核心は、解き放たれるべき本質は、人間という存在の核に充填されている、<欲望の相乗性>である。人によろこばれることが人のよろこびであるという、人間の欲望の構造である。

引用


人には慣性の法則があるので、
「時代は変わった」と悲観したり、危機感を煽ったりすることは、
実は簡単なことのように思います。

確かに「変化」にはネガティブな側面を伴うはずですが、
それでもなお、希望の側面に目を向け、その実現に向けた行動を企画し実践する。
そういう姿勢でありたいと、あらためて強く思いました。

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