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Letter:人間と知の話

少し前に読み進めた本によると、人間の記憶容量は1ギガバイト程度だそうです。私たちが使っているパソコンと比べると、なんとも心許ない容量です。計算能力についても、コンピュータの足元にも及びません。
 

にもかかわらず人間が様々な知を生み出すことができているのは、記憶や計算の能力によるのではなく、抽象化すること(本質以外を捨象すること)を通じて、想像力を働かせることができるからだそうです。また、その営みにおいて、自分以外の他者のアタマを借りることができることも重要な要素だそうです。
 

人類の想像力の及ぶ範囲が空間や時間軸において広がっていくことが、知の進化と社会経済の発展の原動力であったことは、様々な議論で指摘されていることです。分業の範囲は村から国になり地球全体となり、意思決定における視野の射程は翌日から数年先になり現在価値にはTerminal Value(永続価値)が織り込まれるようになりました。
 

ところが一方、社会経済や企業経営に関する近年の様々な指摘の背景にあるのは、その想像力の及ぶ範囲が狭く・短くなっていることに対する反省と危機感という見方ができるかと思います。私たちには、自分の知識や思考結果を過信する傾向もあるようで、その過信は私たちの想像力を弱めます。想像力の羽根を広げるのも縛るのも、いずれも人間の特徴のようです。
 

私たちは、”企業経営に関する知”を扱う仕事をしていると言えるかと思います。今のタイミングにおいて改めて意識したいことは、上記のような事柄を踏まえて、社内外の他者の知を聴き、想像力を大きく広げ、思い切って行動(想像を現実に起こすこと)をすることであるように思います。


【参考にした本】
S.スローマン, P.ファーンバック『知ってるつもり:無知の科学』早川書房、2021年
Y.N.ハラリ『サピエンス全史』河出書房新社、2016年
大川内直子『アイデア資本主義 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア』実業之日本社、2021年
鷲田清一、山極寿一『都市と野生の思考』集英社、2017年

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