見出し画像

 改憲することで、国民にとって不都合なことが解消され、国民に具体的なメリットがもたらされなければ、敢えて改憲する必要はありません。改憲は具体的なメリットが無ければ、意味のないことで、国民から見れば、他にやることあるだろ?となります。
 以前の記事で、今の国政上の違憲状態について触れましたが、これを改めれば国民が公権力の上に立って、改憲しなくても、民意を政治に反映させることが可能になってきます。
 さらに、憲法で認められている請願権をもとに、国民が政策・法律の発議や、法律・条約の廃止などができるようにすれば、直接民主制が実現、つまり、みんなで意見を出し合って、対話しながら、さまざまな問題を解決する、一種の共同体の運営が国政レベルで実現することになります。
 以前お話ししたように、これも改憲しなくても実現可能なことで、私たちは、今の憲法のどこがいいところなのか改憲しなくても達成できることは何か、と考えてみることも必要です。

外国勢力からの改憲の働きかけ

 残念ながら、経済財政政策と同じで、改憲もアメリカからの指令、与党のスポンサーである経済界からの働きかけがあって、自民党が動いています
 2000年に、アーミテージナイレポート、これはアメリカの民間シンクタンクが出したレポートですが、ここでいう有事法制、集団的自衛権を提言しています。 日本が米国との同盟を理由に海外で戦争に参加すると、軍事関連産業が利益を得ることができます。この軍事関連産業は米国において、政治に強い影響力を有しています。
 さらに、2005年と2007年に、経団連が改憲について提言しています。

画像1

【9条の成り立ち】

 憲法9条の原点は、国連憲章の敵国条項にあります。
 日本を含めて第二次世界対戦で連合国と戦った国々が、再度他の国を侵略、またはその意思があると認められる場合は、国連安保理に諮らずに、他の国は軍事的制裁を科すことができる、という取り決めが国連憲章の敵国条項になります。
 これは、70年以上経った今も、まだ国連憲章に残ってます。
 敵国条項が含まれてる国連憲章は1945年に出来ました。
 1947年に、日本はまだアメリカはじめ連合国の占領下でしたが、日本国憲法が発効されました。
 要は、主権回復を目指して、新しい憲法を制定する、なおかつ敵国条項があり、国際社会から受け入れられるには、平和主義を掲げざるを得なかったということになります。
 国連憲章の敵国条項で、日本が他国を侵略する意思があるかどうかは、他国の主張が一方的に正当化される可能性があることが、日本の安全保障上のリスクです。国連安保理に諮らずに日本に軍事制裁を科すことが認められているので、事が起こった時には、日本には一切弁明の機会がないのではないか、という懸念があります。
 そして、憲法第九条は戦力の不保持、国際紛争の解決のために武力を行使しないと定めていますが、戦力保持できるように改憲すると、周りの国から見れば、他国を侵略する意思があるのでは、と解釈される可能性があります。

【日米安保条約・日米地位協定・日米合同委員会】

 日米安保条約・日米地位協定・日米合同委員会は、元々朝鮮戦争があったときに決まった枠組みで、戦時下に日本を全土基地化、自由使用したいという米国の思惑が背景にあります。
 そして、裁判権の適用除外基地権、つまりどこでも基地を作れる、さらに自衛隊の指揮権に関する密約があるのではないか、という情報もあります。
 1952年、サンフランシスコ平和条約で、主権を回復して連合国の占領軍が撤退すると、同じタイミングで、日米安全保障条約のもと、米軍が駐留するということになりました。この日米安保条約と付随する日米行政協定の目的は、アメリカが日本に望む数の兵力を、望む場所に、望む期間だけ駐留させるということです。
 当時、アメリカが朝鮮で戦争するには、日本を軍事拠点化しないと、作戦遂行上不都合になる、良い悪いは別にして、朝鮮戦争があって、こういう状況が生まれて今に至っています。
 併せて日米行政協定が発効、これは今の日米地位協定の前身ですが、日米合同委員会の設置が定められて、日本側の官僚と駐留米軍が、将兵・軍属の取り扱いを決める(密約)という枠組みができています
 日米安保条約発足時、朝鮮半島で戦争しなくてはいけないアメリカの事情は、今更どうこう言ってもしょうがないと思いますが、駐留米軍が日本にある限り、アメリカの軍事行動に伴って日本が攻撃の対象になるかもしれないという問題と、在日米軍の巨大な特権(裁判権の適用除外、基地権、自衛隊指揮権)が生まれて、日本の属国化に繋がっているという意見があります。
 さらに、日米合同委員会で在日米軍と日本の官僚が密約を決めてしまうということで、米軍をバックにした官僚の支配が強くなるという批判があります。

画像6

【自民党改憲草案】

 自民党が2012年に公表した改憲草案では、平和主義・国民主権・基本的人権の尊重の内容が大きく変わっています。
 平和主義の変更では、国防軍を創設することが記されていますが、その前に敵国条項を先になくすことの方が優先順位が高いのではないか、そうしないと日本が軍事的制裁を受けるリスクが高くなります。
 さらに、現憲法の各条文を見直し、緊急事態条項を盛り込んで、国民主権や基本的人権を制限する内容になっています。
 自民党改憲案では、米国との同盟に基づいて海外において戦争が可能になって、国民主権・基本的人権を制限することで反対する国民を抑え込むことができるようになる、ということです。
 自民党改憲案は改正の目的が曖昧で、主権者にとってもメリットが不明確です。
 国連憲章の敵国条項が存在したままでの平和主義の変更、および国民主権・基本的人権の制限は、国民にとって何のメリットがあるのか、説明されていません。

【硬性憲法、軟性憲法】

 さて、まとめとして、硬性憲法・軟性憲法について述べたいと思います。
 硬性憲法は改正しにくく、軟性憲法は改正しやすい、日本国憲法は硬性憲法である、と我々は学校で習いました。
 別の視点で言えば、憲法の条文の内容が包括的であれば、改正しなくてもいろいろなことが実行可能で、逆に憲法の条文の内容が国政の詳細をある程度規定していれば、改正しないと必要な施策が実行できない場合もあります。
 政府がやるべきことは時代・環境によってちがいますので、条文の規定が包括的な方が、変化に対応しやすいといえます。
 憲法は権力を縛るもの、法律は国民を縛るもの、ということは、憲法議論でよく言われることですが、憲法で国民の権利を制限することは、一部の人たちが社会を支配するには、非常に都合がいいといえるでしょう。
 いずれにせよ、まず憲法を改正する必要があるのか、改正しないと何が困るのか、いまの憲法のいいところ、改正しないでもできることを私たちは考える、そのためにもう一度、現行憲法を読み直して、何が書かれているのか再確認することが必要でしょう。

 それでは、最後にこちらもよろしくお願いいたします。
 
Kindle電子書籍 日本民主化計画 ¥250-
https://www.amazon.co.jp/dp/B0838BVD43/

新田たつふみ記





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?