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満室なのに新たな客が泊まれる無限ホテルの謎【無限ホテルのパラドックス】

みなさんこんばんは、福田達也です。

先日の記事でもパラドックスについてとりあげましたが、ここ最近パラドックスについて考えるのにハマっています。

今回はその中でも、自分が好きなパラドックスの一つ、「ヒルベルトの無限ホテルのパラドックス」について紹介します。

これは、無限という概念が、いかに私達が普段触れている有限の世界と異なる世界であるかを説明したお話です。自分が高校生の時に数学の先生に教えてもらって、不思議だけれど面白いなぁと思ったことを覚えています。皆さんにも、不思議だなぁとか、面白いなぁと思ってもらえれば幸いです。

無限ホテルは今日も満室

ここは無限の客室を持つホテルインフィニティ。風光明媚な立地と最高のサービス、そして客を断らないことで有名なホテルインフィニティは、今日も無限の客で満室だ。

フロントの君が接客をしていると、外から車の音が聞こえてくる。車から降りてきた男は、まっすぐフロントに向かって歩くと君に向かってこういう。「今からでも泊まれる部屋はあるかい?ただし、相部屋はお断りだよ」

今日はあいにくの満室だが、ホテルインフィニティの名にかけて用意できないとは答えられない。どうすれば、彼に新たな部屋を用意することができるだろうか。

満室でも客が泊まれる

問題設定を物語風に書いてみました。さて、どうすれば新しい客を泊めることができるでしょうか。答えは以下のようなものです。

君は目の前にあるスピーカーに手をかけると、全ての客室にアナウンスをする。

「ご宿泊の皆様、お休みの所大変申し訳ございません。ただいま新しいお客様がいらっしゃいました。誠に恐れ入りますが、皆様一つ大きな番号の部屋へ移っていただけますでしょうか」

アナウンスを聞いた宿泊客たちは、一つずつ大きな番号の部屋へと移動する。ここは無限の客室を持つホテルインフィニティ、部屋が足りないことはない。

全ての客が移動した結果、1番の部屋が空いた。君は男に向かってこう告げる。「お客様、ただいま部屋の準備が出来ました。1番の客室へどうぞ」

これはどういった事を意味しているのでしょうか。

仮に、最初に泊まっていた客が、それぞれ部屋番号で1,2,3,4,…..n番目の部屋に泊まっていたとします。

「一つ大きな番号の部屋に移る」とは、この客たちがそれぞれ、2,3,4,5.…n+1番目の部屋に移動すると言うことです。部屋の数は無限にあるので、どの部屋に泊まっている客であったとしても、一つ数字の大きな部屋は存在します(次の部屋が存在しないとは、すなわち部屋数が有限であることを意味するからです)。

この結果、1番の客室が空くので、あなたは新しい宿泊客をそこに案内することができると言うわけです。また、ここから分かるように、この訪ねてきた客が一人でなく、どんなに大きな有限の人数であったとしても、同じように案内することができます。

「満室」なのに、「移動できる部屋がある」。なんだか騙されたような不思議な感じがしますよね。しかし、ホテルインフィニティの凄さはこれに留まりません。

無限のツアー客がやってきた

新たな男を部屋に案内できた。フロントの君は、これでもう大丈夫だろうとほっと一息をつく。

しかしその時、新たな車の音が聞こえてくる。なんてこった、今度は無限の客を載せた観光バスがやってきた。先頭を歩いてきたガイドはフロントの君にこう告げる。

「ツアーのお客様のために新しい部屋を用意していただけないだろうか。見ての通り、お客様の数は無限だ」

一難去ってまた一難。今度の数は無限だから、先程と同じような移動ではおさまりきらない。一体どうすれば彼らに新しい部屋を用意できるだろうか。

無限の客も追加で泊まれる

君は再び目の前にあるスピーカーに手をかけると、全ての客室にアナウンスをする。

「ご宿泊の皆様、お休みの所大変申し訳ございません。ただいま新しいお客様がいらっしゃいました。誠に恐れ入りますが、皆様今の2倍の番号を持つ部屋へ移っていただけますでしょうか」

アナウンスを聞いた宿泊客たちは、それぞれ今の2倍の番号を持つ部屋に移動する。ここは無限の客室を持つホテルインフィニティ、2倍の部屋番号だって存在する。

全ての客が移動した結果、全ての奇数番の部屋が空いた。やった、奇数は無限にある。君は男に向かってこう告げる。「お客様、ただいま部屋の準備が出来ました。一人目の方から順に奇数番の客室へどうぞ」

今回は先程と同じようにずれてもらう訳にはいきませんでした。なぜなら、新しく来た客の数は無限。数えられない以上、無限にずれることはできないわけです。

そこで今回は、全ての客に2倍の数の部屋に移動してもらうことにしました。すなわち、1,2,3,4…n番に泊まっていたそれぞれの人に、2,4,6,8…2n番目の部屋に移動してもらったわけです。先程と同じ理由で、どんなに大きなnであったとしても、その2倍の2nは存在します。

その結果、1,3,5,7…と、無限個の奇数番目の部屋が空きました。無限の客に無限の空き部屋。来数番目の部屋に、それぞれに順番に入ってもらうことで、全員を宿泊させることができたわけです。

私達が違和感を覚えるワケ

ここまで読んできて、どうしても違和感を覚える、理解できないという方も多数いると思います。

「満室」なのに、「まだ宿泊できる」ってどうしてー!とか、めちゃめちゃ大きい部屋番号まで行っていくうちに限りがあるんじゃないのとか、思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

多くの場合、これは無意識のうちに「無限」を「非常に大きな有限の数」として想像してしまっている事が原因で起こる勘違いです。

「無限」と「非常に大きな有限の数」は全く性質が異なるものです。有限において、「満室」と「これ以上宿泊できない」は同じ意味を指しますが、無限においては同じ意味ではありません。先程の例のように、「全ての客室が埋まって」いても、客室を移動することができるからです。

普段馴染みのある領域ではないからこそ、不思議な感じがしますね。

より深く知りたい方へ

ちなみにこの無限ホテルの話、さらに次の話があります。それは、無限のツアー客を載せた、無限のバスがやってきた時、どうやって全員に新しい部屋を用意することができるのか、という問題です。

こちらについてもしっかりとした解答がありますので、興味があれば是非考えてみて下さい。

分からないよ―という方や、理屈についてより深く知りたいという方は、以下の動画がオススメです。数学的な理屈も含めて、分かりやすく解説してくれています。

終わりに

今回は、数学のパラドックスから、ヒルベルトの無限ホテルのパラドックスについて紹介しました。

一見おかしなことを言っているように見えて実は正しいこと、自分の直感に反しているものが答えであることは往々にしてあります。その時に、理解の外側だと突っぱねるのか、どうしてそうなるんだろうかと考えるのかで、見え方は変わってきます。

以前に書籍を紹介した、人間の不合理性の話にも近いですね。自分の理解の枠外であっても、柔軟に受け止めて考えられる自分でいたいと思います。

本日も読んでいただきありがとうございました。
また、次の記事でお会いできることを楽しみにしています。



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