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「わたしとケビンの素晴らしき日々」

 わたしの周りの人は誰も知らない、、、、過去も現在も。

 色濃く残る記憶の影で重要な記憶が曖昧になってしまう。思い出とはなにかそうゆうものなのかな?

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 とにかく小さい頃の記憶。何曜日かは忘れた。水曜日だったような、木曜日だったような、平日のNHKなのは間違いない。時間は曖昧だが夕方18:00ぐらい〜19:30までの間の30分間。その曜日とその時間の30分の為に、幼い頃のわたしの約5年間は当時の仲間との遊びも早々に切り上げ、家へと走っていた。毎週必ず。

 当時の仲間の中に誰1人観ている者はいなかった。ドラゴンボールを観ている者はほぼ100%だったのに対して、誰1人観ていない0%の番組に、わたしの思い出はギュウギュウに詰まっている。
 間違いなく幼い頃のこの約5年間、毎週観続けたこの海外ドラマは、現在のわたしを作り上げた自己形成に深く関わっている。

 わたしはあの頃ずっとこの話をしたかった。
「昨日の観たか?めっちゃよかったよな!!ケビンあいつどうすんねんやろうな!!??」とか「アメリカってあんな感じのご飯やねんな!アーノルド家の食事食ってみたいよな!!BBQってなんなん!!あんな風に家の庭でやるねんな!」とか「アメリカってなんであんなにパーティーをよくするんやろ?しかも自宅にとんでもない数の人を集めて!!」
 そうゆう話をだれかと共有したり共感したかった。
 だが話題はだいたいドラゴンボールやアニメの話と、真剣にカメハメ波を出す練習をしているか、舞空術を体得し大空を舞う想いを胸に日夜修行に明け暮れる、愛すべきバカヤロウ達と楽しく過ごしていた。
 余談ではあるが、ある1人の友人は修行に没頭するあまり、「ハイマート」という名前のマンション3階か4階から飛び降り足を骨折する事件も起きた。厳しい修行の成果で彼は確かに空を飛んだ。

 わたしは少し寂しかった、、、、誰でもいい、誰かと[素晴らしき日々・The Wonder Years]というタイトルの海外ドラマを共有し共感したかったのだ。
 だが、その願いも虚しく約5年は過ぎ、番組は終了を迎える。
 そしてそれは、ただの思い出となった。

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 時は経ち続け、その時代その時代の仲間達と出会いと別れを繰り返す。
 その間、わたしはコイツなら知っていいるんじゃないか!?こんなに気が合い価値観も似ているなら知っているんじゃないか!?同い年だし!?同じ世代だし!?「フルハウス」観てたんだし!?などなどの理由を見つけては話を切り出してはみたが、、、、誰もいい返事は返ってこなかった。
 そんな同じ世代の奴らの中には、、、、なんで「アルフ」(素晴らしき日々・The Wonder Yearsやフルハウスよりも前にNHKで放送されていた、所ジョージが宇宙人アルフの吹き替えを担当していた)知ってんのにコレ知らんねんってイラつかせてくれる奴もいた。しかもあの独特な宇宙人アルフの笑い方「ア〜〜ハッハッ!!」を身振り手振りを含めて完璧に形態模写する強者でもあった。

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 そんな気持ちを抱えたまま、わたしは現在も生きている。
 未だ誰1人この話題を共有したり共感する人物とは出逢えていない。
 ただただ一方的に「こんなんNHKでやってたん知らん!?フルハウスのタナー家じゃないねん!!ケビンを知りませんか!?アーノルド一家を誰か知りませんか!?」と話すばかりで、、、、まるで行方不明になったアーノルド一家を探し続ける遺族になってしまっている。

 あの当時は知りもしなかった。幼すぎたわたしは、あれがあの時現在のアメリカだと思い込み憧れていた思い、過去の古き良きアメリカを描いていたのを知らずに憧れたアメリカへの思い。

 わたしは諦めません、、、、いつかきっとわたしと同じ境遇にある人との出逢いを。
 そして出逢ったその時は、あの「素晴らしき日々・The Wonder Years」で観たような古き良きアメリカ的パーティースタイルで、朝まで語り尽くしたいと思うのです。
 当然BGMは「With a Little Help from My Friends」で。

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