ダルビッシュ投手の指摘を解析すると、オープンイノベーションを理解した組織運営がパ・リーグの強さであると言える。それは日本の科学界の大きな課題でもある。
おはようございます。
ダルビッシュ投手がパ・リーグの強さの違いを、トレーニングルームでの情報共有の差であるということを述べていました。
日本で活躍されていた頃の体験を以下のように語っています。
「僕もウエート室を使わせてもらい、他球団だけどいろんなことを教えてもらった。(中略)コンディションニング情報を共有することができていた」つまりソフトバンクはトレーニング室をオープンにしていて、違うチームの選手でも誰が(例えばエースの斉藤和巳選手や和田選手が)どんなサプリを飲んで、どんなトレーニングをしているか。何が良い効果をもたらすか、パーソナルトレーナーの知識やアドバイスにも触れることができたということでした。一方でセ・リーグについては「交流戦で相手の球場に行ってもウエート室をいっさい使わせてもらえなかった。(中略)お互いを成長させる情報共有もできない。」という風にかなり閉鎖的であったと話しています。(実際にダルビッシュ投手のYoutubeを見て情報を得ています)
以上の話を前提として僕の意見を書かせてもらいます。
ダルビッシュさんの意見をまとめると、重要な情報を広く共有するオープンイノベーションシステムを続けてきたことがパリーグの強さ、ソフトバンクの強さだと言えます。逆に閉鎖的になると、小さな世界ではチャンピオンになれても、世界では通用しません。
これは日本の研究者育成システム、産学官連携でも同じ問題があると思います。
日本は師弟制度の名残があり、研究室内で育成が行われることが多く、研究室外との交流がそこまで盛んではありません。(今も同じでしょうか?)
アメリカではオープンラボのシステムや意識がすでにできているので成功している研究者の意見を日常的に聞くことができます。
また、毎週著名な研究者を招いて行われるセミナーの前後で、講演をされた研究と学生やポスドクだけのランチタイムが設定されていたり、朝食を兼ねた新人PIとのセッションが組まれていたりして、そこで研究者としての成功や失敗、学生の時に何をやるべきか、ポスドクの時に何を考えるべきか、新人PIの時の経験談など様々なアドバイスに触れることができます。そしてそこから共同研究を生むことや就職先が決まることも少なくありません。
そこでは聞いてはいけない質問とか、不文律のルールとかは無く、高め合いのための素晴らしい雰囲気があります。
UJAという海外日本人研究者の組織に在籍して僕が一番良かったことは、初代会長の佐々木敦朗さんがUJAの中でも外でもこれをやっていたことです。
自分だけでなく、多くの方々の体験、特に壁にぶち当たったときの対処法、普段からのルーティンなどをどんな時でもシェアしてくれました。
日本で海外学振に応募する学生たちを集めて、アメリカで活躍する日本人PIによるチェックとフィードバックの機会を作ったり、
海外で独立するための自分なりの方法を講演としてまとめて、その後懇親会で何もかもを話してくれたり、「Mr. オープン」でした。
自分の一番カッコ悪いこと、恥ずかしくて仕方のないところをみんなの前で話すことができる人です。すごいと思いました。
一つの大きな成功は「留学のすすめ」としてそれが一冊の本にまとまったことです。読んでもらえばわかりますが、何が成功に繋がったのか、どこに大きな失敗があったのがよく書かれています。
最近はUJAでも、佐々木さん自体の取り組みとしても独自の学会を主催したりして、データや研究を組み立てるロジックについても、古い習慣であれば隠しておきたい貴重な情報をかなりオープンにするような挑戦を行っています。そこには着実に同じ思想を持った人たちが集結しつつあります。
現会長の足立さんも、日本の体質を変えようとオープンイノベーションシステムの構築に力を注いでいます。
このオープンな雰囲気を広げていくことが、日本の科学力を高めていく原動力になると僕は思っています。
ビジネス界や日本政府の方々も日本の閉じた体質を変えようとかなりの努力をしています。
それぞれの努力が繋がり、日本の研究者、海外在住の日本人研究者、ビジネス界のリーダー、改革を進めている政府関係者が繋がって、日本の分厚い閉鎖体質を壊す時が近づいていると感じています。(時期としては遅すぎるのですが、これをしなければ衰退していく一方です。)
自分が成功した秘訣や体験した失敗、その中から得られた最も大事なものを自分だけのものにせず、共有してお互いを高め合っていく、それが科学の根幹であって欲しいと僕は思っています。
ダルビッシュさんの話に戻すと、当時のパリーグではライバル同士でも普段は良いトレーニングや技術などをお互いに教えあって、レベルアップしてグラウンドの上で思いっきり勝負しよう!という気質があったそうです。
かっこいいですね!
オープンイノベーションを理解した組織運営を一つ一つの研究室や組織の中で行なっていくことで、必ず大きな革命に繋がります。小さな一歩だとしても今日から始めませんか?
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