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標高1,300m, 蓼科の山で読んだ本

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論理に強い人が読む「物語」。ビジネス書とか学術書も一部は含まれますが、異世界に入り込むことができる物語は大好きなので、山の中でそういった本を読んでいます。みなさんと共有できれば
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年月日

閻連科(著) / 谷川 毅(訳) 犬が好きなら読んでください。それだけでも良いくらい。 大陸の厳しい環境の中で、引き取った盲犬と2人。 結末も想像できる。 それでも心が揺さぶられる。 生きることは愛すること。 今、ここで相手と真剣に向き合うこと。 永遠がそこにある。

本を沢山読む僕が手元に20冊しか置かない理由

こんにちは@tateshina_lifeです。 良い本と出会うには「手放す」ことが大事だと思っています。 僕は結構本を読みます。 乱読で、物語、SF, 歴史書、哲学、心理学、物理学、化学などから、スポーツ科学、山にも登るので山に関する本(地図も含む)まで読みます。 特定の著者にこだわることもほとんどないので(村上春樹のみ)、どうやって本を選んでいるのか不思議に思われる方もいるかもしれません。 本の選び方についてはまた別に書き起こすとして、自分が本を選びやすい状態、本

ULTRAS 世界最凶のゴール裏ジャーニー

ジェームス・モンタギュー(著) 田邉雅之(訳) 僕は昔FC東京の「熱狂的サポーター」だった。 シーズンチケットを持つ”ソシオ”であっただけでなく、アウェイのほぼ全ての試合に帯同。週末に開催されるリーグ戦だけでなく平日(当時は水曜日だったと思う)に行われるカップ戦にも必ずスタジアムに足を運んだ。 もちろん、ゴール裏に。 試合開始の3時間前くらいにはスタジアムに到着し開場とともに中に入る。ゴール裏は自由席だがだいたい座るところは決まっている。周りに陣取るメンツも固まってい

めいわく犬

モーリス・ドニュジェール(著) 高山 鉄男(訳) 高山 晶(訳) 1982年に初版が出た翻訳本。 パリの雰囲気。 犬を飼う、まして人の家の犬を一時的に預かることなど夢にまで見ていなかった独り身のお人好しの男が、 預かった犬に翻弄され続ける中でいつの間にか赤い糸ならぬリードでしっかりと繋がっている。 犬、動物が持つ煩わしさとそれを超える愛のギフト。 本能を呼び覚ましてくれるパートナーの存在。 とぼけた主人公の行動とシニカル(クリティカル?)な目線で淡々と描かれる

絶滅動物は甦らせるべきか

ブリット・レイ(著) 高取芳彦(訳) 絶滅動物を遺伝子操作によって現代に甦らせる「ディ・エクスティンクション」についての本。 結論が出るわけもなく、歴史と現状を批評的に説明しつつ読み手に考えさせ、判断・行動の余地が多分に残る。 で、僕の意見。 「オタクの逆襲」という観点で今のテックベンチャーと同じことと理解。 科学・技術、ITに関わる人間が日の目を見るために持ち得た最先端の技術を「分かりやすい」事象に応用する際に「善意」で飾り付ける、ということが遺伝子、生物に起こっ

DEATH / 「死」とは何か (日本縮約版)

シェリー・ケーガン(著) 柴田裕之(訳) 僕は「死が悪いことである」という概念について納得することはもちろん、信じることすらできませんでした。 死は必然であり、定められたものであり、抗うことはできないものだと思っていました。 この本は僕と同じような立場で書かれています。 宇宙空間を見てみれば、そしてこの物性を支配する(現時点で明かされている)理論を前にすれば、”死”は誰にでも平等にやってくる必然です。 一方で、”生”はありえないほどの偶然の積み重ねによる奇跡です。

クラバート

プロイスラー(著) 中村浩三(訳) 最後の1ページがすべて。 最後の1ページでドドンと来る。 そこで心が動く。すごい。反転。力。 勇気と愛の物語。 自分の勇気と愛にもとづいて行動できる人が最後に生きる。 生きるのはその人自身もそうだし、 実は勇気と愛で彼・彼女に関わった人もその人生の中で生きる。 そういう物語。 人はすぐに「やさしい」とか「親切」とか曖昧な「言葉」に逃げる。 言葉は文字通り言の葉で、(物語で描かれる魔法のように)たしかに力を持つこともある、いやいつ