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<まえがき>関西の緊急事態宣言が解除されました。東京近郊はまだです。私のところでも次男の幼稚園も分散登園が始まりましたが、長男の小学校はまだです。一口にコロナの影響と言っても、業種・規模・エリアなど、個々の現場によって様々です。今日も、現場の方一人ひとりにインタビューして「コロナ下で何が起こっているのか」聞いてみたいと思います。(舘澤史岳)

―どんなお仕事をされていますか。
地方都市で、ダクト工事を手掛ける会社を経営しています。
ダクト工事とは、空調や排気・排煙のために、建物内に空気を通す管を取りつける工事のことを言います。様々な種類・規模の工事がありますが、うちの会社では主に飲食店のOPENに合わせて厨房の換気扇や空調を整えたり、工場に新しい設備を導入する際の改修工事を手掛けたりしています。工期は短いもので1日、長くても1、2週間程度。規模はそれほど大きくありません。他の職人さんが壁を貼った後、そこに穴を空けて天井裏にダクトを通し、その後、それを塞ぐ形で他の職人さんが天井をつる、というように工事は工程ごとに区切られています。現場に貼り付く必要はないので、自分ともう一名の従業員、それから忙しい時には他の職人さんに応援に来てもらい、スケジュールをやりくりしながら、いくつかの現場を並行して受け持つようにしています。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
4月はほとんど影響を受けていませんでした。
天井裏など埃っぽいところで作業することが多い仕事柄、以前からマスクを着用しています。また花粉症ということもあり、春先は現場外でも日常的にマスクをしています。そのため、コロナ騒ぎでお客様先でのマスク着用が義務付けられても、さほど不安や違和感を覚えることはありませんでした。感染リスクに関しても同様です。屋内の作業が多いと言っても、工程ごとに職人が数名出入りするだけで「密」になることはありません。お客様先の工場で一度、コロナのクラスターが発生したことがありましたが、自分は基本的にお客様が稼働していない土日に作業していたこともあり、感染の不安はありませんでした。

感染リスクより、今は経済的なリスクが心配です。
影響を実感し始めたのは、5月の連休明けぐらいからです。県境をまたいで他県の現場で仕事をすることもあるのですが、そのうち、いくつかの現場で県外の業者を使うことが問題視され、突然中止になってしまいました。いつ再開するのか、どんな条件をクリアすれば再開するのか、何も分からない状態です。逆にいつ再開になってもおかしくないので、そのためにスケジュールを確保しなければなりません。新しい工事を入れてしまっていいものか…予定が見えずにとても困っています。また、それとは別に、風邪を引いたり、熱を出したりしたらどうしたらいいのか。幸いまだそういう事態にはなっていませんが、もし…を考えて怖くなることがあります。熱や症状があれば、真っ先に活動自粛すべきなのでしょうが、自分のような小さな下請けは簡単に仕事を休むわけにはいきません。「じゃあ、次から他に頼むからもういいよ」となってしまいます。これは自分だけでなく、力の弱い立場の人はみんなそうだと思います。そう考えると、報じられている感染者数とは別に、隠れ感染者がもっといるのではないかなと余計に怖くなります。

―これから業界は、どう変わっていくと思いますか。
正直、全く分かりません。深刻に考えないようにしています。
4月以降、コロナの影響をもろに受けた飲食店の倒産が相次いでいます。新規出店も進まないため、自分らの業界でも飲食店のダクトをメインに手掛けている会社は苦しくなるでしょう。でも、その一方で、同じ食品でもスーパーなどの小売店は好調です。そこに収める加工食品を作る工場も同じです。自分が担当する製造工場でも増産が続いており、新たな製造ラインの立ち上げや機械の導入が検討されています。いいところもあれば、悪い部分もあるわけです。これからどうなるのか考えたところでよく分からないし、自分にはどうしようもないことが多いので、あまり深く考えないようにしています。この業界は会社を設立して5年経過しないと建設業の許可が下りず、その許可証がないと500万円を超える案件は受注できません。うちは2020年でちょうど5年目になります。会社を大きくするつもりはありませんが、これから先を考えたらできる幅を広げておくに越したことはありません。お客様からの信用もあるので、許可はしっかりとっておきたいです。

コロナにも、AIやロボットにも負けたくない。
高校を中退してこの業界に飛び込んで、もう22年になります。その間、色々なことがありましたが、何とかここまで続けてくることができました。独立して自分の会社を持つこともできました。最近ではAIやロボットなど技術が進歩することで、人の仕事が奪われると言われていますが、自分はそうは思いません。職人の仕事はそう簡単にはなくならないと思います。現場で周囲を見回すと自分よりベテランの人が大勢います。中には、職人歴半世紀という人もいます。自分もそういう風になれるように、今後スキルもさることながら、規模の大きい現場を受け持ち、他の人を上手く使いながら工事をまとめるなど、できる幅を広げていきたいですね。(Hさん/ダクト工)

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
「コロナの影響でダメージを受けた」
「コロナをきっかけに、こんな変化が起こっている」
「業界としてこういう課題を抱えている」
職種にとらわれず、家事・育児等でも何でも構いません。
それぞれの現場の状況をお知らせください。
可能な限り取材いたします(オンライン・1時間程度)。
※対象者の氏名等、個人情報は基本匿名にします。
【連絡先】
masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp

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