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第17回「県外ナンバーというだけで…」地方銀行員

<まえがき>ニュースで取り上げていたのしか知りませんが緊急事態宣言が出ていた頃、一部では、県外ナンバーの車に石をぶつけるなど、心ない行動も見られたようです。決して肯定できることではありませんが、それぐらい追い詰められていたということかもしれません。今回は、地方の中小企業のために奔走している地方銀行員にインタビューしました。

●銀行員に確認したい。「半沢直樹」ってリアル?
●コロナの影響で、銀行のココが変わってきた
●こんな銀行員に担当してもらいたい!

―銀行員というと、どんなお仕事をされていますか。正直「倍返し」のイメージしかないのですが。
大学卒業後、地元に戻り、地方銀行で営業として働いています。今、働いているのは、人口数万人の地方都市です。規模はそれほど大きくありませんが、市内に温泉郷を擁し、国外から多くの観光客も訪れます。銀行では肩書きこそ管理職ですが、未だにバリバリの現場です。お客様は飲食店もあれば、病院、製造工場など色々。融資や資産運用などを通じて、100近いお客様をサポートしています。銀行の営業と言うと、「半沢直樹」的な世界を想像する方も多いと思います。少し誇張して書いている部分もありますが、概ね半沢直樹に近いです。私達営業は基本、お客様サイドに立って、無理な融資でも何とか通してもらえないかと、本部相手に日々奮闘しています。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
以前であれば、市内の温泉郷には、近隣の空港を利用して、中国や台湾から多くの観光客が訪れていました。しかし、感染が本格化し始めた3月から、エリア内にある施設は休業をやむなくされました。当然売上はなくなります。4月に入ると、温泉施設やホテル、飲食店だけでなく、そこにリネンや食材を提供する関連会社も含めて、温泉郷に関わる多くの企業から資金繰りの相談がくるようになりました。ほとんどが地元に根付いて、長年続けている企業・お店ばかりです。社員もいれば、その家族もいます。みんなが感染者を出さないように、必死に歯を食いしばってやっていました。それなのに…街中に県外ナンバーの車を見かけた時の複雑な気持ちは、今も忘れることはできません。石を投げるようなことはしませんでしたが、どうしてこんな時期に…と正直、心はざわつきました。その後、5月から、銀行でもコロナによる影響を受けている中小企業者向けに「実質無利子・無担保融資」の取扱いを開始。速やかに手続きを行いました。幸いなことに6月のこの時点でもまだ倒産しているところは一つもありません。者向けに「実質無利子・無担保融資」の取扱いを開始。速やかに手続きを行いました。幸いなことに6月のこの時点でもまだ倒産しているところは一つもありません。

―融資って、申請すればもらえるものなんですか。
経営者にとって、お金は喉から手が出るほど欲しいものです。貸してあげたいのは山々ですが、将来、返済してもらわなければならない以上、こちらとしても闇雲に貸すわけにはいきません。結局は、今の苦しみを将来に先送りするだけになってしまいます。無理のない返済計画にするには「このお金を何に使うか、どういう事業展開を考えているのか、いつまでにどれくらい売上を見込んでいるのか…」といった事業計画が必要です。もちろん、相手はウイルスですから、「そんなの分かんないよ」という気持ちは分かります。だからこそ、そこは経営者任せにせず、私達銀行員が一緒になって考えるようにしています。たとえば、私の顧客にコロナで業務が全てストップしてしまった観光バスの運行会社がありました。話し合って新たに考えたのが大学のスクールバス運行です。早速、大学の講義再開の日取りを調べ、事業開始時期を決めました。本数・ルートを決めれば、資金がいくら必要なのか、融資額も見えてきます。売上の見込みを立てれば、返済計画だって描けます。絵に描いた餅かもしれませんが、その夢が、見えない未来につながるのです。話しているうちに経営者の不安も和らいだようで、私もほっとしました。これからも経営だけでなく、折れそうな経営者の気持ちも支えていきたいです。

―これから業界(世界)は、どう変わっていくと思いますか。
私達の支店はまだ未着手ですが、このコロナをきっかけに、本部ではリモートワークも進んだと聞きます。これはいい変化です。というのも、銀行で何か手続きしようとする場合、これまでは、まず銀行に足を運ぶのが基本でした。窓口に行って、書類を書いて、判子を押して、それを受け取った銀行員が稟議に上げて、決済して、ようやく手続きが済むわけです。間違いのないように進めるためには大切なことかもしれませんが、融通が利きません。状況が日々刻々と変化する社会情勢の中では、もっとスピードを上げて、臨機応変に対応しなければ。銀行も手続きを簡略化して、リモート化を果たすべきです。確動性との兼ね合いもありますが、やってできないことはないはずです。実際、5月に無担保無利子の融資が導入された際には、これまでにないくらい審査・プロセスをスピーディーに行い、早期に融資を実行しました。やればできるのです。私自身もこれからは形式にとらわれず、変化に即応できるように取り組んでいきたいです。

―災難が続きますが、乗り越えて行けそうですか。
確かにリーマンショック、東日本大震災、そして、今回のコロナ…銀行員になってから、色んなことがありました。震災の時は「人と人との絆」が重視され、被災地にボランティアに行くなど「距離を縮める」ことが良いことだとされました。でも、コロナはそれとは逆です。感染を防ぐために「距離を置く」ことが求められます。全く別種の災害です。でも、変わらないですよ。私達銀行員がやるべきことは。お客様が今何に困っているのか、事業用の資金が不足しているのか、それは返済なのか、雇用なのか、それとも生活費なのか……それを聞き出し、優先順位をつけてサポートすること。その点では、リーマンショックや東日本大震災の時の経験が活きています。たとえ、銀行としてできることはなくても、家賃補助など自治体の制度を活用できる場合もあります。刻々と変わる様々な制度を覚えて「こういうのありますよ」「こういうのが出ました」お客様に合わせて提供するようにしています。おそらく、これから先も色々とあると思います。まず、このコロナ危機を乗り切り、そこで培ったものを、また次にしっかり活かしていきたいですね。(Tさん/地方銀行職員)

<今日のコロナ>今、リーマンショックや東日本大震災の時の経験が活きている。コロナの経験だって、いつかきっと活きるはず。
マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
「コロナの影響でダメージを受けた」
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masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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