毎日マクラ「い」☆家系ラーメン☆

※以下は落語の冒頭でお話するマクラです。こんな感じから噺に入っていきます。嘘が多いので気を付けてください。

もう落語家になりますとね、どんな状況でも麺類を啜ることができるんですよ。体を悪くして直接食べ物が喉を通らなくなっちゃっても、蕎麦だけは啜り続けることができる体質なんです。栄養は点滴から摂取しないと死ぬんですけど。

そんな江戸っ子としては、やっぱりラーメンがいちばんですね。もう、わたし若者ですから、蕎麦なんて啜ってられないんですよ。体がラーメンを求めてますからね。脂とか塩分とか、寿命を削る覚悟で取り込んでいくくらいです。最後の晩餐はおろし蕎麦がいいんですけどね。

ラーメンには大きく分けて二種類あって、これは二種類しかないんですけど、家系と二郎系です。二郎系に関しては情報が溢れているんで、ご存知の方が多いと思いますけど、二郎といっても坂上二郎さんの感じより次郎冠者のほうですね、太郎冠者と一緒に「戦争を知らない子供たち」を歌っちゃってます。

わたしはなんといっても家系が好きです。ステイホームですからね。うちで踊ります。犬もなでますし、リモコンでこう、変えますから。
まさに“おふくろの味”ですよ。家だから。あの、自宅を改装してやってる街の中華屋さんで出てくるラーメン、いいですね。角野卓造さんがつくる幸楽のラーメンなんてまさにそうですね、きっと岡本信人が勝手に雑草入れてると思うんですけど、それが人気の秘密ですね。

実は幸楽が本当の家系なんですけど、今の日本では家系が主流で、「がんばれ」というのに中国語では油を加えると書くような感じで、もっと脂っこいんです。

だいたい、ナントカ家っていう店名で、実はそっから家系ってきてるんですけど、もう店員がね、目つきからして違うんですよ、もう、説明するのに慎重に言葉を選んでしまうような人たちばっかりで、僕は家系ラーメンの店に行くたびに故郷の北関東を思い出すような、その意味じゃホームなんですが、雰囲気がバッチリなんです。

とにかく元気がある。声が大きいんですよ。ありじゃゃわぅす!!って、感謝も物凄い伝えてくれるし、たいてい米もついてくる。ご飯が無料とか、おかわりオーケーなところが多いんです。もはや、家です。お母さんが化けてるんじゃないかと思うくらいですよ。心が、高校時代に戻っちゃう。部活を暗くなるまでやってクタクタになって帰ってきたときに食うメシですね。僕は文芸部だったんで、そういうフィクションさえ思い描いてしまうんですよ!

カウンターで他の客を見ますとね、たいてい無遠慮な感じの客ばっかりで、実家みたいなんです。マナーとかないんですよ、家系には!!
麺の硬さもね、硬め・ふつう・柔らかめから選べるんですけど、僕実際、麺を啜ってから「硬すぎる!」ってクレームつけてるお姉さんを見たことあるんですよ! 反抗期になっちゃってるんですよ、家系だから!
それでもちゃんと、ほうれん草が乗ってるんですよ! 優しさですよね? お弁当の隅の彩りになってるんです。

今日は家系ラーメンのことは一切しゃべれてない気がするんですけど、どれだけ素晴らしいかってことを少しでもね、お伝えできたかどうか。
いずれにしましても、家系ラーメンは深夜遅くまでやってることが多いので、これからでも行ってみてください。そして、感謝の気持ちをラップにして二十代の半ば以降に披露してみてくださいね。

そういうわけで、頑張ってください!というお話でした。

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