毎日マクラ「な」☆ナン☆

※以下は落語の冒頭でお話するマクラです。皆さんと一緒に考えていこうという試みですよ。

食べ物のなかで最も可能性を秘めているものって、やっぱり豆腐だと思うんです。

豆腐は偉い、っていう文章を中学生のときに読んだことがあって。現代文の問題だったと思うんですけど、豆腐は何にでも合って自分勝手な主張をしない、だから偉いって書いてあったんです。
なぜだかこれがずっと頭の中に残っていて、子供の頃だったんで、あんまり豆腐って興味なかったんですよね。
派手な味もしないし、たまに母が気をきかせて“豆腐ハンバーグ”とか出してくれるんですけど、なんで肉じゃないんだよ!って反抗心をかき立てられちゃったりして。少年にヘルシーって、もはや毒じゃないですか(笑)

夏は冷奴で一杯、ってわけにもいかないし。氷がカランカランいってるカルピスにヤッコは合わないですからね(笑)
冬も湯豆腐で熱燗つけないですよ。鰹節がいい仕事してることに気づけませんから。

ネギにミョウガとか、薬味の妙を味わえるのがまた豆腐なんですが、この複雑さを理解するには、大人にならないとですね。ミスターチルドレンにはわからない(笑)

やっぱり豆腐は偉大です。

でもね、でもですよ、これは井の中の蛙ですよ。大海を知るということが大事になるんですね。世界を。

そうするとね、インドの方、さすが東洋の源流のようなところですね、あるんです。
ナンですね、ええ、ナンなんですよ。
いいですか、ナン、これです。あの、小麦粉を伸ばして焼いた、オネショの染みみたいな(笑)

これは凄いですよ。ナンを前にしたらね、豆腐もかすみます。豆腐の持つね、大豆本来のうま味みたいなのは余計なんですよ。
ナンはね、なんてったってゼロの観念を発見した人たちが焼いてますから、ゼロみたいな食べ物なんですね(笑)

ナンって、あの形ですよ、デカけりゃいいっていう投げやりな感じもあります(笑)
もうちょっとあの形なんとかならなかったのか!!って。もう最高じゃないですか。

豆腐なんかね、綺麗に四角く収まっちゃって。絹とか木綿とか、オシャレじゃないですか(笑)
ナンはね、いいですよ。まだカレーに合うってことしか判明してないし、他に何かに合わせられてるのを見たことないです。
焼き立てがうまいっていうのと、けっこうな割合でもう一枚無料なところが多い。それが最後の砦です。
もう一枚、焼き立てで出てくるっていうから、その感動のために食べてる(笑)

ナンはこれから、何になるんでしょうね。シャレじゃないですよ!
何かになりますよね、きっと。ナンダカナーって、阿藤快が言いますよ。

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