タソガレ・デッド・バレット
「ししょー! そっち行きました!」
「その呼び方やーめーてー!」
叫びながら放った銃弾は、マフィア3人の頭をまとめて撃ち抜いた。残心もそこそこに、アタシたちは再び走り出す。
「あと何分!?」
「じゅ、11分です!」
彼女はレイナ。15歳。得物は刀。依頼人の“御老公”の孫娘で、今回のアタシの相棒だ。
麻薬入りタピオカ製造工場の破壊と構成員の殲滅が今回の依頼。壊すだけの簡単なお仕事。
と、思っていた。
御老公が「孫娘の社会見学」を御所望されるまでは。
「! 伏せて!」
「わ!?」
頭上を掠める銃弾の嵐。新手か。
「ったく時間がないってのに!」
苛立ちを込めてヘッドショット。同時にレイナが、近場の雑魚を斬り捨てる。
「クリアです!」
「はいあと9分だよほら走る!」
アタシたちはコア施設へと全力で駆ける。──と、進路上に麻薬栽培用の青色LEDが焚かれた"青部屋"。
「レイナ!」
「はい!」
アタシが呼んだ時には、彼女はもうそこに飛び込んでいた。白刃が煌めき、周囲の青色LEDを斬り刻む。
「これでどうですか!?」
「おっけー!」
アタシは暗くなった部屋を駆け抜ける。それに並走しながら、レイナがぽつりと零した。
「青色アレルギー、想像以上に不便ですね」
「まーね」
アタシは素直に頷いた。
青いものに触れると皮膚が爛れる。この体質のせいで、いちいち青色を壊したり敵の血で塗り潰したりせにゃならず、確かに不便だ。が──
「でもアンタよかマシよ」
「え?」
「月夜に動けないのは鉄砲玉として……って、話はあと。急ぐよ!」
走る、走る。
青部屋。レイナが破壊。また青部屋。隣もその隣も青。
「多いな、くそ!」
あと5分で、月の出。"月光性喘息"のレイナの、活動限界。
故に。
「……まとめて、斬ります!」
「え、あ、ちょ、」
焦ったレイナを、止める間もなかった。
渾身の居合が、数メートル先までLEDを破壊して。
「あれ? なんか手応えが」
直後。
天井から、真っ青なタピオカが降ってきた。
(つづく/800字)
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