ヒーローものの怪人は、なぜ人を襲うのか
怪人が人を襲う理由というのは、そのままヒーローの戦い方に影響を与えるものです。
何種類かのヒーロー小説を書いている僕ですが、毎回この「怪人がなんで人を襲うんだろう」っていうところに引っかかります。ここを超えられるかどうかが、ヒーローものを世に出せるかっていうひとつ大きなポイントになっているくらいです。
ポイントとしては二つあって、「そもそもなんで襲うんだ」っていうところと、「なんでその怪人ぶっ殺したら事件が解決するんだ?」っていう二点。特に後者は、時折ニチアサ本編でも「ん????」ってなることがあるポイントだったりして、なかなか腑に落ちるのが難しいポイントだと思います。
ちょうど拙作「刻命戦隊クロノソルジャー」もこの問題にぶち当たり、あれこれと悩んだりしていました。ある程度道が見えてきたところなので、今のところの気付きをまとめてみようと思います。
世界征服のために暴れる
(例)仮面ライダー(無印)、宇宙戦隊キュウレンジャー
仮面ライダー(無印)やゴレンジャーのころからの大王道。世界征服のための暴力。多くの場合人々を奴隷みたいに扱っていて、労働力だとか戦闘力にする。
怪人が狙っていた誘拐対象は健在で利用価値があるはずなのに、何故か次の回以降は狙われないなんて展開がありがち。そこにどんな理由付けをするかっていうのもひとつの物語性に繋がったりしていますね。
人間を傷つけることを目的に暴れる
(例)仮面ライダークウガ、動物戦隊ジュウオウジャー、激走戦隊カーレンジャー
本人たちの楽しみのために人間やら地球やらを「酷い目に合わせること」そのものを目的としている連中。上と同類っちゃ同類だけど、人間なんて死んでよいと思っている分、上よりタチが悪い。
こいつらは基本的にターゲットが怪人ごとに違うので、怪人を倒せば事件は解決し、次以降で同じ人が狙われることもない。
人間の感情を集めるために暴れる
(例)侍戦隊シンケンジャー、獣電戦隊キョウリュウジャー、仮面ライダーOOO
人を傷つけてネガティブな感情を集めたり、人の感情のデータを集めたりするタイプ。たいていの場合、集めた結果としてラスボスが目覚める。人間の感情・心といったものが、ものすごく前向きでキラッキラに描かれる(逆にネガティブな思いは滅茶苦茶どろっどろに描かれる)
怪人ごとに収集する感情の対象(喜怒哀楽)や、収集の仕方そのものが異なるため、その怪人を倒せば基本的に事件は解決する。
なんか目的のために人間が邪魔だから暴れる
(例)轟轟戦隊ボウケンジャー、仮面ライダーウィザード
封印の解除だとか宝さがしだとか、怪人は怪人の目的があって、ぶっちゃけ人間を傷つけることは「ついで」なパターン。実は人間が譲ってくれたり大人しく死んでくれれば暴れる必要がない。
大事なもの取られたりすると困るので人間も抵抗する。事件が解決したあとは、その対象を守るためにヒーロー側で保管することになったり、怪人の行動圏内から対象を逃がしたりする。
その他
・とりあえず本能で暴れる
(例)仮面ライダー響鬼、仮面ライダーフォーゼ
人外が本能で暴れる。もしくは、人間が怪人になった結果攻撃的な面が強化されたりして暴れる。怪人を倒せば沈静化され、事件は解決する。
・犯罪の手段として暴れる
(例)仮面ライダーW
人間が怪人になる「怪人化」を犯罪に活用してあれこれやる。上述の「なんか目的のために」よりも矮小だが私怨が原因なのでねちっこい。怪人を倒せば同じ人が狙われることは(ほぼ)ない。
自作品に立ち返ると
◆碧空戦士アマガサ:なんか目的のために人間が邪魔だから暴れる
4話までに怪人・雨狐たちは時折「探索」とか「カミサマのカケラ」みたいなワードを口にしていますが、要するに「なにかを探している」タイプです。加えて、幹部怪人のイナリ様が「よっしゃちょっとゲームやるで」とか言い出したせいで、主人公たちが狙われて周囲の人が巻き添え喰らうみたいときも結構あります。
怪人を倒しただけでは「探索」自体は止められていないというのがポイントで、この辺りは5話以降で徐々に明かされていきます。お楽しみに(唐突な宣伝)
◆刻命戦隊クロノソルジャー:人間の感情を集めるために暴れる
まだ第1話だけしか公開していませんし、第1話の時点だと「戦隊メンバーを全滅させるために暴れる」なんですけど、それはさておき。
ヤミヨの本来の目的は、人間たちの負の感情を集めることです。怪人側の王様の復活のために集めている。日本を常夜に捉えたのも同じ理由で、ある程度は自動的にネガティブが集まってくる仕組みです。常夜の維持に加え、ネガティブを捏ね捏ねすることで怪人を生み出し、安価な戦闘力として使います。
感情の集め方は怪人ごとに違うので、その怪人を倒せばとりあえずは事件が解決します。
怪人は課題、ヒーローはソリューション
怪人がどう暴れるかによって、ヒーローの振舞いは変わります。発生した課題によってソリューションが異なるのと同じです。
例えば、単に暴れるだけの怪人であれば問答無用で怪人をぶっ殺せばOK。一方で、なにか目的があって暴れる怪人であれば、その根本をどうにかしないといけません。最終的には大きな会社や社会そのものと戦うことにもなり得るし、ただひたすら敵を倒し続けるだけの狂人と化す必要があるかもしれません。
その辺りを掘り下げていくことで、ヒーローものとしてのR.E.A.Lが描けるのではなかろうか、という気がしています。
ほうこくはいじょうです。
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