見出し画像

楽しく苦しい小説大賞 ◆俺たちの戦いはこれからだ──

 逆噴射小説大賞2019、閉幕!

 作品ごとのライナーノーツは別で書いたんですが、僕自身のスタンスに関する振り返りというかあとがき的なものを書き損ねていたので、改めて書いておこうと筆を執りました。

 noteで小説を書くようになったきっかけでもあり、普段の連載とは違う気持ちで1年に1度自分の全力をぶつけられる場、逆噴射小説大賞。今年も滅茶苦茶苦しみました。そんで滅茶苦茶楽しみました。この記事では主に苦しんだ部分の話がメインですがまぁ、ちょっとお付き合いください。

ライナーノーツはこちら

 それでは行ってみよう。

昨年のリベンジと意気込んだ2019

 昨年の逆噴射小説大賞では本数制限がなかったので20本くらい書いて出したんですが、どれもこれも選外でした

 もちろん実力不足はありますし、その自覚もありました。「小説家のゾンビだった僕~」の記事に書いた通り、当時の僕は小説家未満のナニカで、コンテスト自体も半ばリハビリみたいなもんだったので。なので「まぁ仕方ないなぁ」という思いもありつつ、それでもやっぱり悔しさはあったんですよね。

 なので、今年の目標が「昨年のリベンジ」になったのも自然な流れだったと思っています。この1年、アマガサをはじめとした各作品の連載やなんかを経て色々なことを学び、我ながら成長した……はず! ということで、「今年は1本くらいファイナルいきたいなぁ」というのは結構マジでそう思っていたし、優勝を狙うつもりで10月8日を迎えたわけなんですけどまーーーー書けない。

 今回の応募一作目『「よろず屋サカズキ」営業中』は以前から構想のあった話だったのでまだ良かったんですけど、そこから先がまーー出てこない! 「これだ!!!」と納得できるものが出てこない! もしくはアイデアはあってもみんながやってるみたいに格好良く800文字に収められない!!!!

_ノ乙(_ン、)_

 意気込みが空回りってのはこういうことを言うんだなと痛感しました。全力で自転車漕いでるときにチェーンが外れた経験ないですか? あんな感じの空回りっぷりです。スコーンッとね。スコーンッと空回った。

 超焦ったし、イライラしたし、自分の1年間はなんだったんだみたいな気持ちになりかけもしました。スゴイ・アブナイ。

自己対話、自己定義、そして

 救いといえば、アブナイという自覚症状があったこと、そしてなんとかしようとする思考回路を動かせたことですね。

 とにかくまずは自分の得意武器を見つめなおすところからやり直しました。自己との対話、そして自己定義。こういうことができるのも「ひとり5本まで」制限のおかげですね。とにかく走ってた去年だとこうはならなかったと思う。

 この一年間で得たものを振り返ってみると、「ヒーロー」「アクション」が書いてて楽しかったし評判も良かった要素でした。あと「妖怪」「九十九神」(※ホラーでなく、ぬら孫的なポップな風合いのもの)あたりはインターネット滝行とか見ても数が多かったのでそういうのも得手というか、好みなんだなと自己評価しています。

 あと、作風としてイメージテーマソングがJ-POPとかロキノン系とかになりがちなのも僕の個性なんだなーと思いました。そしてこれに気付いたのが結構大きな転機でした。

 これはあくまで僕個人の主観なんですが、かっけぇパルプって主題歌がHip-hopぽいじゃないですか。少なくとも星野源とか米津玄師ではないし、アレクサンドロスとかでもない。ィマウタウーヨー

 今回のコンテストに関してはやっぱり「主題歌がHiphop的なモノ」が求められていたと思っています。そして大賞を狙うからにはそちらに寄せてみねば……と考えたんですが、そのせいで全く筆が進まなくなっている事実に気付いて諦めました。

 なんだろう。もはやこれは摂取しているものの違いなんだと思う。僕の場合はどうにも日本の曲になるんですよね。アニソン、J-POP、J-Rock……。例えば「よろず屋サカズキ」はNHKで最近流行りの若手バンドがタイアップ主題歌やって「なんでこの曲?」って言われてそうじゃないですか。そう言う感じのやつです。

 ああいう洋画感というかそういうものを出すには、僕のインプット量が足りなすぎると思い至ったので、思い切ってそういう方向を目指すのをやめました。「俺は書きたいものを書くんじゃー!」「これが俺の面白いじゃー!」「これが性癖に刺さる奴に刺されー!」というターゲティング爆撃方式

諦めからの

 結果として生まれた作品たちはめちゃくちゃ面白くて気に入っています。

 諦めを受け入れた時期は神器戦士ミツマナコを書いていたときで、主人公にあたる「黒い男」の無頼漢っぷりに悩みの名残が残っていたりしますね。主観を「僕」にしたことで色々と盛り上がれそうな要素もあって自分でも楽しみな一作です。

 その次の「好奇心は猫を伸ばす」は犯人を滅茶苦茶ネットリしっとりさせて、逆に主人公サイドはさっぱりキュートにしました。実はタマちゃん、最初タフな女の人にしようとしてたんですよ。ワンパンマンのゾンビマンを女性にした的な。ただそれだと「あそこでそもそも死ななくねぇか?」とか続きを考えたときの盛り上がりだったりとかが面白くないなーと思って、もうちょっと人間味のあるキュートなネコチャンにした経緯があります。タマちゃん可愛いよタマちゃん。これからも良い感じのツンデレで読者をぶん殴っていきます

 そして諦めつつも頭の片隅で悩み続けた結果、最後の「阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)」はちょっとパルプ寄りのものになったような気がします。年寄りと若者のバディ。どっちも強い。渇いた会話劇から始まる雰囲気は、今回の応募作の中でも最も「主題歌がHip-hop」に近いものだと思っています。とはいえ僕のはたぶん日本人のロック歌手が歌うHip-hopだけどね。

 それぞれが特定の層にぶっ刺さったのを観測しているので、いっそ突き抜けてよかったゼ。

 とはいえ、いつかはヒーローとか妖怪とかの側面からパルプ感のあるものを書けるようになるといいなぁと思います。もっとカラッカラに乾いた、それでも強くてカッコいいヒーローを描けるよう頑張ります。ぷらくてぃす、えぶりでい。戦いは終わらない。

これで終わりじゃない

 集計結果FINALの最後でも同じような話しますがごようしゃください。

逆噴射小説大賞2019は幕を閉じましたが、「◆ご愛読ありがとうございました、先生の次回作にご期待ください!」とはいかないのです。なんせ僕らはまだ、第1話のその冒頭を書いただけなんです。

 ここから物語を書き続けることこそが、逆噴射聡一郎先生やダイハードテイルズの願いであり思想であると思っています。続ける。どんな形であれ、続ける。ドラゴン・ゲンドーソー先生も言っていました。ニンジャとは「なる」ものではなく、「である」ものなのです。

 なので僕らは、この大賞の結果がどうあれ、書いた物語の「先」を書かなければなりません。だって書けるのは僕らだけなんです。作者である僕らだけなんです。…………え、書いてくれないの? こんなに面白い第1話を見せてくれたのに? 続きはおあずけ? そんなぁ。いけずぅ。

いじょうだ

 そういうわけで僕自身、今回生み出した世界については書き続けていこうと思っています。

 現在は取り急ぎ、阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)の続きを考え中。あれはシリーズ第1話だから比較的早く終わるはず。たぶん。おそらく。

 元々連載していたアマガサをはじめとしたスーパーヒーローシリーズもあるのでバランス見つつ、コンスタントに書き続けていけるよう、そしてそれらがプラクティスになるよう、頑張っていきたいですね。

 なにはともあれ参加者の皆さんお疲れ様でした。僕の作品を読んでくれた皆様ありがとう。そして審査員の皆様、カラダニキヲツケテネ!

🍑いただいたドネートはたぶん日本酒に化けます 🍑感想等はお気軽に質問箱にどうぞ!   https://peing.net/ja/tate_ala_arc 🍑なお現物支給も受け付けています。   http://amzn.asia/f1QZoXz