お客様は神様です! 第1話
例えば、蛇口を捻ると水が出てくることとか、スイッチを入れると電気が点くこととか。そういうことに感謝をしたことはあるだろうか。
いや、ないことを責めようとしてるんじゃないんだ。僕だってこの部署に配属されるまではそんなこと一度もなかったので、そういうものだと思う。
「でもやっぱインフラ保守って、割りに合わないっスよね」
僕はオフィスチェアを全力でリクライニングさせて、隣の先輩に声をかけた。
「お前な、お客様は神様だぞ?」
「そりゃそうっスけど…」
壊れないのが当たり前、直しても感謝されない…というのは、正直しんどい。
同期曰く、電気・水道業界のほうは体質改善が進んでいるらしい。
けど、僕の所は少し話が違うのだ。なんたって保守してるのは──
prrr!
考えていると、目の前の電話が鳴った。僕は上体を起こし、受話器を取った。
「ご利用ありがとうございます。こちら株式会社ジングウ、"運命の歯車"保守運用部でございます」
【つづく】
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