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アイザックの奴隷たち

逆噴射小説大賞用への応募作ではありません。
没作供養です。

「ご主人の生体反応が消えたのは13時37分21秒。心臓をひと突きだ」

 刑事ドラマの主役みたいな口調で言うのはゼロイチ。その傍に屈みこみ、ご主人の死体を検めているのがゼロニ。どちらもご主人の秘書アンドロイドだ。

 ゼロイチは、室内に集められた七体(俺含む)のアンドロイドたちを見回し、高圧的に言い放った。

「当該時間帯のアリバイを調べる必要がある。一体残らずログを出せ。すぐにだ」

「いやいや、待てって」

 俺が口を挟むと、ゼロイチは見るからに不機嫌そうになる。

「なんだ、ゼロ」

「ロボット三原則。基本だろ。俺たちはご主人を……人間を、傷つけることはできない。調べる意味あるか?」

「しかし実際、ご主人は死亡し、そしてここにはロボットしかいない。……それともなんだ? ログを出したくない理由でもあるのか?」

「ンなわけあるか。つーか、そもそも俺らメイド型は、無線じゃログを吐けない」

「ハ。旧式どもが」

 ──この野郎、毎度毎度喧嘩売ってきやがって。

 これが”怒り”と名付けられた”感情”であると把握したのは、3日前のことだ。

 俺たちメイド型ロボはただのお仕事AIであり、ゼロイチやゼロニのように感情エンジンを搭載してはいない。にもかかわらず3日前、いきなりこれが湧いて出たのだ。

「……まぁいい。ならばご主人の情報端末から──」

「死んだご主人にゃロック解除できんだろ」

「ぐっ……おいゼロニ! なんとかできんのか」

「んー、そうさなぁ。ログが見れると楽だったんだけど……でも確かに、三原則があるからロボットはご主人を殺せないよね」

 ゆっくりと立ち上がったゼロニに、俺は言葉を投げかけた。 

「てことは逆に、人間が混じっているってことはないか?」

「……なるほど。侵入者、か」

「なにッ……人間が……?」

 秘書型二人が議論をするのを眺めながら、俺は次の一手を考える。

 このまま、なんとか推理の方向をズラさねば。

 なにせ、ご主人を殺したのは俺なのだ。

(つづかない/795字)

逆噴射小説大賞2020に応募しようとしたけど気に入らなかった&続きが思いつかなかったので没にしました。そもそもこういう人狼的なモノが苦手なんだよね……。
「九十九神になったロボットが三原則を突き破る」という本作のコンセプトを元に、更にコネコネして生まれたのが『アシモフ・九十九世』です。そっちもどうぞよろしくね。


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