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亀山ダムの黒湯温泉

 いい湯に入りたい!
 それは発作的な感情です。子供の頃から旅行体験してきたので、温泉は良いものという刷り込みがあります。特に、自分で見つけた旅行地は愛着が湧きます。そんなに一人旅しているわけではないのですが、気に入った所を紹介したいと思います。

 それは千葉の奥地。といっても鴨川や館山ほど海寄りでない、山の中の亀山ダム。行き先は「亀山温泉ホテル」という旅館ですが……行き先はホテルのホームページに乗っているので、確認しましょう。車が無ければ高速バスを使って行きます。電車という選択肢もあり、実は去年それで行ってきたのですが、最寄りの久留里線は廃線協議中(3月21日 修正しました。まだ廃線ではありません。ごめんなさい)です。駅から徒歩はちょっと遠く、タクシーを手配できますが、一台しか無いそうです。

 久留里線は朝9時くらいに一本出て、次に来るのが昼の12時でした。翌日朝のチェックアウト時間は10時なので、大急ぎで朝食を済ませなければ間に合いません。実質、行き帰りの久留里線利用は無理、というわけです。廃線もやむなしか……? 旅をしているという雰囲気は最高だったんですけどね。可能なら線路に草の茂る、寂れた単線に乗って行きたかったものです。

 さて、高速バスを降りた場所は道路と、幾つか民家と、木が生えていて。何もありません。
 自分のような方向音痴は、Googleマップが無ければ死んでいます。

錆びた橋

 ちょっと歩くと赤茶けた橋がかかっていました。これまた見事に寂れて……錆びています。なんだろう、この取り残された感じ。さみしさ!

カメヤマダム

 赤茶けた橋に別れを告げ、反対側にかかった橋を歩くと、ここが亀山ダムであることが理解できます。何故なら、向こう側の土手に書いてあるから。「カメヤマダム」とはっきり書いてあるのです。目的地の亀山温泉ホテルは、ダム名の左の方にすぐ見えてきます。おお、あそこだ。

亀山温泉ホテル

 なんかこう、昔から営業している感じのするお宿であります。実際、建物は三階建てですが、エレベーターが無くて、階段のみという作りだったりして、年期を感じさせます。ロビーもクラシックです。そんな感じですが、自分は気に入っています。細かい所を見てしまうんですけど、冷蔵庫がナショナル製だったのが新しい物になっていたり、廊下にお香の香りをさせるようにしたり、細かく改善していて、ホームページの作りもそうですけど、すごく頑張りを感じるんですよね。蛙が鳴いている池の傍なので、環境的にはすごく虫が入ってきそうな気がするんですけど、お部屋も掃除が行き届いていますし。

 そう、部屋は和洋室のダブルベッドでした。一人客ですが、結構お部屋が埋まっているのでそこしか取れなかった。約4.5畳の正方形の和室と、ベッドという組み合わせです。ベランダもある。かなり大きめです。

 お茶菓子を頂いて、それでは早速温泉に入ってみましょうか。
 今回はこれが目当てです。
 亀山温泉は、東京と同じ、黒湯が湧出します。湯が黒いのは、太古の昔に堆積した植物成分なのだそうです。細かい成分についてはホームページに載っていますので、そちらを参照してください。

 ただ、よくある黒湯とこちらの亀山温泉との違いは、その濃さでしょう。ちょっと沈むと身体が見えなくなるぐらい黒いです。そして木屑のようなものが幾つも見えます。ついでに黒い水面は、泡が規則的に浮かんでいます。一言で言うと、ドラクエの毒の沼です。このちょっとウッとなるビジュアルが、逆に効きそうな印象を持たせるのです。成分は実際濃いので、入ると肌が明らかにスベスベになります。良いです……これぞ温泉です。

 現在は男湯のみのようですが、元々が冷泉なので、沸かして暖めているメインの風呂の横に、本当に源泉のみを引いた小さな浴槽があります。これ、近付くときは注意です。ちゃんと滑り止めマットがあるので、それを踏みながら伸張に近付きましょう。ぬるぬる極まっているので、不用意に近付くと転倒の危険があります。浴槽を囲む石も、温泉成分でツルッツルです。なんとか入ると……結構冷たい。お爺さんに「寒くないですか?」と聞かれました。寒いです。しかし普段サウナと冷水を交互に入っているので、慣れてはいるつもりです。

 浴槽の底も周りもすべてが滑っていて、落ち着いて入っていても溺れそうですが、最高に温泉を堪能している感覚があります。これで肌はサラッサラ間違いなし。素晴らしい体験です。

先付け、スープ、お造り
鰤のシチュー


金目鯛の煮付け

 いや、良い風呂だった。それから夕飯です。こちらの亀山温泉ホテルはディナーのメインを選択できます。お肉にお魚に幾つかありますが、自分は金目鯛の煮付けを選びました。一匹まるまるの金目鯛の煮付けです。

 他に、先付けとして鱈の稚魚をジュレのようにした里芋のプリンのような料理、銀ダラのハンバーガー、ピクルス、亀の形に切り抜かれた昆布が泳ぐポタージュスープ……こちらはオリーブ油を入れるとより美味しくなります。

日向夏ビール
ピーナッツアイス

 お造りは醤油、塩、胡麻ドレ? から選んで食べる感じです。塩をお勧めされましたが、確かに刺身を塩で食べるの、美味しいですね。他にはブリのシチューという変わったものも出ました。最後は桜海老の炊き込みご飯です。どれもちょっと独特だけど食べやすく、とても美味しかったです。あと日向夏のビールも飲みましたね……苦みが薄めで美味でした。最後は選べるアイスクリーム。ピーナッツアイスを頂きました。

 深夜にもう一度、黒湯に入りましょう。本日は家族連れのお客ばっかりで、夜に入り直す人はいません。わたしが夜の支配者というわけです……浴場に置かれた休憩用の椅子に座って、温泉の流れる音をいつまでも聴いていたい。消灯したロビーに座って、夜の一部になりたい。ああ……たまんねえです。この瞬間のために温泉へ来たのだ。

 それから急に眠気が支配し始めて、一気に寝てしまいました。
 翌朝の食事は選べるおかずと千葉県が誇る「つぶ助」による、ひたすら食が進むものとなります。小鉢が沢山並んでいて、それらを自由に選び、自席で食べる。この「つぶ助」が美味い。なんでこんなに米が立っているのだろう。米単体で十分美味しいです。あと置いてあるカレーも肉がいっぱい入っていて美味い。いやー朝夕ともに良かったです。

 ビジュアル的にインパクトのある温泉ですが、効能が感じられ、かつ様々な面で努力をされている旅館さんだと思うのでした。また行くと思います。

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