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由緒あるコロッケを求めて

連休中、発作的に旅行へ行った話をします。
突然行くことにすると様々な問題が発生しますが、まず困るのはお宿の予約です。基本的に、直近だと素泊まりしかありません。お食事まで出してくれる旅館は数が限られます。それはまあ、旅館の側からしたらいきなり一食分追加するなんて難しいのは当然なんですけど。
旅行は計画的に……というのは置いておいて、今可能な選択肢の中から選びました。日光へ行きます!

今回選んだ宿泊先は、日光市内の『ホテル春茂登』です。ちょっとね、風格のある構えですが……(親の世代で、修学旅行の宿としてよく利用されていたと聞きました)古びて味があるのも好きです。ここなら、ギリギリ日程の予約でもお食事が出ます。ありがたい。では行ってみましょう。

電車の車窓を眺めながら、耳に流すBGMはいつもの『花譜/I SCREAM LIVE』。やはり名盤であります。青空、流れる雲、アコースティックのしらべ……旅のお供に最適です。エモさがエモいです。

コロナ対策が始まって以来、車内販売はありません。いつか復活してほしいものです。いま乗っているのは特急列車ですが、所謂シンカンセンスゴイカタイアイスなどを買いたいです。SL『大樹』なんかも大きく宣伝していますね。SLに乗ったことが無いので、いつかは乗りたいものです。

エモに浸りながら、そうかからず列車は日光に着きました。賑わってます。お土産屋でいっぱいです。揚げ湯葉まんじゅうがあるし、本店は東照宮の方にある明治の館も駅前の支店があります。

さて、最初にやることは……バスのフリーパスを買うことです。多方面のフリーパスがあるのですが、そもそもPASMOがあれば必要ないじゃない、と思われるかもしれません。しかし、フリーパスは非常にお得なのです。

日光市内からいろは坂を登って中禅寺湖へ行く場合が殆どかと思われますが、この場合、往復で2100円です。他方、中禅寺湖の入り口まで使えるフリーパスは2200円なのです。それで何処でも降り放題、二日間使える。もっと距離のある、中禅寺湖の奥まで行けるパスなら四日間使えるなんて物もある。何よりも、乗り降りする時にカード残高や現金払いで慌てるようなストレスがかからない。知らない場所のバスって気を遣いますからね……深く考えずとも、フリーパスを提示すればOKというのは、不器用な方には圧倒的にお勧めできます。

さらに宿泊先が指定のお宿だったため、半額の1100円になりました。そんなにサービスしてくれていいのか……。時期によって変わりますが、特急に乗っていたら割引とか、フリーパスを持っていると中禅寺湖半を周遊する船が割引とか、そういった仕組みもあったはずです。観光に力入れてんなあと思います。

日光の駅から出発し、おみやげ屋、羊羹屋の並ぶ真っ直ぐな道を通り、二荒山神社の森すぐそばの神橋を曲がって進むと、また街が広がり、神社の参道入り口あたりで降車。ちょっと歩くと『ホテル春茂登』がありました。入り口からホテルの方が出ていてお迎えです。
従業員の方はとても親切でした。ロビーにはお土産コーナーと、ウェルカムドリンクもあります。玄関で靴をしまって、スリッパで入館するあたりは歴史ある宿な感じですね。お部屋の案内を聞き、エレベータで上がりました。

それで……部屋が分からない。この階で合っているはずですが、廊下に部屋が無い。もしや別の並びに……ということで、階段の横に小さな廊下があるのを発見しまして。

この先、右に曲がれる
従業員さん用……と思いきや
奥に部屋がある。

まさか、と思いつつ曲がっていったら、ずっと先に部屋がありました。なるほど、ちょっと迷路みたいだ。ドアノブ緩んでる。

部屋の中。廊下を通って和室に繋がる。

ですが、部屋に入りましたら、トイレの壁とかはちょっと剥がれてますが、畳や水回りは新しくされており、なかなか綺麗です。このさみしさ、味わい、一人でポメラ打つには調度いいじゃない……。

一呼吸置いて、夕食まではまだ時間があるので、外へ出てみます。ホテル春茂登の周辺、田母沢御用邸ちかくの街は住宅が多く、お店はちょっと疎らです。でも、歩いてみるとあるんですね。喫茶店が。

日光珈琲 御用邸通

『日光珈琲 御用邸通』です。焦げた木目調の、古民家カフェ的なたたずまい、じつにじつにお洒落。NHKの古カフェ・ハルさんに出てきそうです。

男体山ブレンド(酸味なし、深煎り)

こちらで『男体山ブレンド』を頂きました。あとケーキ……晩ご飯前ですけど。お店の暗めな雰囲気も、酸味なしで深煎りな男体山ブレンドの味も素晴らしいですね。大変に良いです。こういうお店に行きたいという想像通りの喫茶店があって良かった。

日が暮れてきたので帰りますと、だいたい夕食の時間です。写真のようなお品が出ました。ちゃんと懐石料理です。すき焼きがメイン。天麩羅はちょっと冷たくなってたけど、おつゆが温かかったですね。宿泊料金、全部込みで一万円弱なのですが、なかなか頑張っておられるのではないでしょうか。物価も上がっているので、しっかり良い感じのが出てくるのには宿泊代二万円ぐらい考えないといけない世の中なので。食堂は旅館横の別棟なのですが、新しい建物でした。

食後はお風呂です。今回のプランはホテル春茂登さんの向かいにある新館『千姫物語』の大浴場が利用できるので、行ってきます。脱衣かごの棚に、おとぎばなしの主人公の名前が一個一個書かれているのですが……だから千姫ってわけです。なるほど。

大浴場は大きな内湯と、露天風呂、水風呂、サウナにミストサウナという現代的なものです。水風呂の水温は、山の湧き水っぽく、かなり水温が低いので目が回ります。水風呂に浸かる自分を、子供が驚いた目で見ていますが……そうさ、やせ我慢だよ。意識が……。

ホテル内の離れ小島のような部屋に戻ると、機械音だけが響いて、異様に静かなので、これこそポメラ時であります。ペットボトルとポメラDM200を開いて、ガシガシ打つ、そういう充実した時間です。と思ったらツイッターばかりやってしまって、あまり進みませんでしたが。いざ横になってみると、オゥンオゥン……と機械音が気になって眠れません。この孤独感はいったい。なんという寂しさ、これも旅情。(基本的に、空調の機械音と無音の寂しさはどこへ行ってもついて回ります)

朝のご飯は色んなお皿に、その場で焼くハムエッグです。あと、刺身の湯葉がつくのがちょっと良かったです。

親切なホテルの方にお別れをして、すぐ隣の羊羹屋『綿半』に入りました。竹の皮に包まれた昔ながらの日光羊羹が欲しかったのです。ものすごい昔ですが、同じ日光の『ひしや』の羊羹が好きだったんですよね(ひしやはまだ現存します)。当時は分厚い板みたいな糖衣が羊羹の周りにくっついていてガリッガリでした。懐かしいです。こちらも一週間ほど置いてから開封すると糖衣が付くと、購入時に教わりました。あとで試してみましたが、季節にもよるでしょうけど、一週間よりもうちょっと長めの方がガリガリになるかもな……と思いました。でも羊羹は日本茶に合います。

折角バスのフリーパスを持っているので、最初は中禅寺湖に行こうと思っていたのですが、二十年以上行っていない二荒山神社と日光東照宮に行き先を切り替えました。バス代が勿体ないですが、いろは坂は登りません(先にあれだけお得と言ったのに利用しない)。
歩いてみても、参道の入り口からそんな距離ではないですね。日光東照宮は入り口で音声ガイドを貸し出していたので、説明を受けながら回りました。彫り物や装飾に様々な意味が込められていて、情報量が多いです。

陽明門が工事中だったため、唐門が一番立派に見えました。
龍の彫り物が凄い。

今回、余裕を持って来たつもりですが、とても全部のガイドを聞き取ることはできませんでした。東照宮に明智の家紋が! やはり天海僧正は……というオカルト要素を、事前に調べて見ておけばよかった。どこが該当するのか分かりません。残念です。

そうこうしているうちにランチの予約時間まであと20分です。山を下りようとしても、とても間に合いません。仕方ねえ、そこのタクシーだ、とタクシー乗り場に突っ込みました。ますますバスのフリーパスが無駄ですが、勢いで生きているので仕方ありません。

二日目のランチは、以前一度泊まってnoteにも書いたことのある、『日光金谷ホテル』のプリフィックスランチです。この旅で一番期待しています。二階の食堂がクラシックで綺麗なんですよね。

ドリンクは白のノンアルコールです。ノンアル気に入ってます。

アミューズ

まずアミューズ。何か小さな物がお皿に乗っています。すみません、分かりません! 生ハム……? でも美味しかった。

じっくりとローストした新玉ねぎのエスプーマにイベリコ豚のチョリソー、
空豆のクーリーソースと共に

続いて『じっくりとローストした新玉ねぎのエスプーマにイベリコ豚のチョリソー、空豆のクーリーソースと共に』です。白いクリームに甘い玉ねぎがいっぱい包んであります。とにかく甘めなので、ちょっと変わった感じがしました。

大正コロッケット2種

続いてメインメニュー。「大正コロッケット2種」これです。これが食べたかった。前回、伝統ディナーコースを食べた際、コースの途中にこのコロッケットの小さいものが出たのです。もう一度、と思っておりました。左がカニコロッケ、右が若鳥のコロッケです。なんとか左フォークを維持して食べました。……美味い。なんというか、柔らかい旨味の塊のようなものを食べている実感がある。赤いソース(ベシャメル? あまり詳しくは知らない)も美味い。美味いッ、美味すぎて煉獄さんになりそうです。出てくるものみんな素晴らしいですが、これは格別です。

(参考)箱根富士屋ホテルのカニクリームコロッケ。
ソースが似てる。

ついでに、少し前に日帰りで箱根へ行ってきたのですが、箱根の冨士屋ホテルでもカニクリームコロッケを頂きました。この美味しいソースが近いものに思います。ホテルの料理レシピ本を読んでみたら、ソースについての記述があって、これを使ったナポリタンのメニューがあるって言うのだから、絶対美味いでしょう。また箱根へ行ったら食べたいものです。

金谷 時のプリン ~3つの味の記憶~

最後のデザートは「金谷 時のプリン ~3つの味の記憶~」です。なんとプリン三種の食べ比べ。明治? と平成期、そして令和に至るまでの、それぞれのプリンが食べられます。明治のプリンはクルトンのようなものが付いているので、所謂パンプディングみたいな風でもありました。平成のプリンは苺のジャムというかコンポートのような層があり、さっぱりとしています。令和はマスカルポーネという感じで、一番ボリュームがありました。ここ一点を豪華に、美味いものを食べましたね……。

あとは電車を待って帰った、という感じになります。連休最後の日だったので、帰りの電車は混んでいました。相席はつらい。今度はもっと計画的に行きたいと思いました。

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