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電氣人間は存在するのか、しないのか?

電氣人間の虞 詠坂雄二 光文社文庫

物語の中心となる電氣人間は、都市伝説であり全体的に得体の知れなさが漂っている。本書の中でも、電氣人間の説明が「一部地域で語られる」「語ると現れる」「人の思考を読む」「導体を流れ抜ける」というものでしかない。そんな漠然とした中、電氣人間を調査していた人間が不自然な変死を遂げてゆくのでホラーかミステリーか困惑してしまうと思う。しかし、細かいことを気にせず最後まで読んでほしい。

あらすじ
一部の地域で語られる電氣人間の都市伝説。真相に近づく者は次々と死んでいく。やがてライターの柵馬朋康も真相解明に乗り出すが・・・。果たして電氣人間はいるのか、いないのか?衝撃の結末とは?

ホラーとミステリーは親和性が高い。ホラーは「なぜ」で恐怖心を呼び起こし、ミステリーは「なぜ」で好奇心を呼び起こしているからだ。そのためこのような作品も破綻なく成立するのである。
とはいえ、この作品はかなりの変化球である。ミステリー慣れしている人じゃないと「ふざけているのか」と思われてもしょうがない。しかし、そんな人も落ち着いて、表紙から2度読みしてほしい。多くの伏線が緻密にあり、新たな気づきがあなたの知的好奇心を満たしてくれること間違いないはずである。

あわせて読みたい本
屍人荘の殺人 今村昌弘 創元推理文庫
映画化されるとともに有名になったので説明不要だと思う。
こちらも、ホラーとミステリーの融合であるが、違う方の「ホラー」である。設定以外は本格推理ものであり、クオリティもかなり高いのでおすすめ。


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