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魅力的な昭和日本ホラーの世界観からの怒涛の多重どんでん返し

厭魅の如く憑くもの 三津田信三 講談社文庫
戦後の日本、閉鎖的な村、いがみ合う旧名家、風来坊な探偵、そして禍々しい殺人事件。このようなワードが出たら、大半の人が横溝正史の金田一耕助シリーズを思い浮かべるであろう。三津田信三の「厭魅の如く憑くもの」から始まる「刀城言哉シリーズ」も、しっかりと横溝正史の世界観を継承している作品シリーズである。しかし読むとわかるが、ただ横溝正史の作品に似ているだけではないことは明白である。

あらすじ
因習に縛られた山村・神々櫛村では旧家である谺呀治家と神櫛家が対立、深い溝があり、神隠しや憑き物落としなど怪異や怪談が蔓延している地でもある。怪奇小説家の刀城言哉は小説の取材のため、この地を訪れ怪異の収集しようとするが、村で祀られているカカシ様の祟りにしか考えられない殺人が発生する。

刀城言哉シリーズは横溝正史作品に比べ、怪異譚や村の民俗に対しデティールまで設定が練りこまれている。それは、600超えというページ数からもわかるであろう。横溝正史の禍々しさは、どちらかというと舞台装置という形であるが、刀城言哉シリーズはこの練りこまれた設定が、ホラーとミステリーの融合をブーストさせ独特の作品として確立することに成功している。
また、ラストに多重どんでん返し(考えられる可能性を推理し、足りない所があった場合はまた次の推理をする)があるのであらゆる推理を一冊の本で楽しむことができる。そして最後に到達する推理には、もはや開いた口がふさがらないレベルの高さである。
600ページ超えと少々手を出しづらいが、嫌々でも読む価値があるホラーミステリー小説である。まとまった時間がとれる場合是非読むことをおすすめする。

あわせて読みたい本
横溝正史 金田一耕助シリーズ 角川文庫
正に元祖である。今読んでも色褪せない魅力がある。


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