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補遺16: WIRED連載『新しい社会契約(あるいはそれに代わる何か)』第16回「法によるプラットフォームのメタデザイン」

雑誌『WIRED』Vol.51(2023年12月18日発売)掲載の『新しい社会契約(あるいはそれに代わる何か)』第16回「法によるプラットフォームのメタデザイン」の補遺です。
紙面の都合上、掲載できなかった脚注、参照文献等をここで扱わせていただきます。

注1)

プラットフォームを規律する「メタデザイン」としての法の役割については、成原慧『AIネットワーク社会におけるアーキテクチャと法のデザイン』(稲葉振一郎、大屋雄裕、久木田水生、成原慧、福田雅樹編著『人工知能と人間・社会』(勁草書房、2020)収録)を参照。

注2)

デジタルプラットフォームの影響については、ニック・スルネック(大橋完太郎、居村匠訳)『プラットフォーム資本主義』(人文書院、2022)、水嶋一憲、ケイン樹里安、妹尾麻美、山本泰三編著『プラットフォーム資本主義を解読する スマートフォンからみえてくる現代社会』(ナカニシヤ出版、2023)、千葉恵美子編著『デジタルプラットフォームとルールメイキング』(日本評論社、2023)、ティム・ウー(秋山勝訳)『巨大企業の呪い ビッグテックは世界をどう支配してきたか』(朝日新聞出版、2021)等を参照。

注3)

初期インターネットの理念とインターネットの制度化の歴史については、成原慧『インターネット法の形成と展開』(メディア法研究(第1号、2018年9月))を参照。

https://www.shinzansha.co.jp/files/seigo-m-medialaw1-narihara.pdf

注4)

プラットフォーム企業、特に媒介者としてのプラットフォーム企業の免責についてはジョセフ・コスース『ネット企業はなぜ免責されるのか 言論の自由と通信品位法230条』(みすず書房、2021)を参照。なお、ジョン・ペリー・バーロウの「サイバースペース独立宣言」が1996年8月号のUS・WIRED誌に掲載されていたことを知ったのも同書からである。

注5)

デジタルプラットフォーム取引透明化法に見られるような、利害関係者の相互理解を深めるための情報開示等を通じて自主規制を促し問題解決を図る規律手法は「共同規制」と呼ばれる。共同規制については、生貝直人『情報社会と共同規制 インターネット政策の国際比較制度研究』(勁草書房、2011)を参照。

共同規制にも様々な形があり得るため、一概には言えないが、簡素なルールで効率的だが、自主的な行動変容に期待せざるを得ないため執行の強制力に乏しいとの指摘がなされている(岡田羊祐『GoogleやAppleなど巨大テック向けルール、日米欧でなぜ違う』(日本経済新聞、2023)。

注6)

「バイ・デザイン」の手法による権利保護の例としては、個人データの処理に関するシステムの設計や運用に「データ保護バイデザイン」を求めるGDPR第25条などがわかりやすい。

注7)

アーキテクチャと法の拮抗関係を主題化したのは、アーキテクチャによる個人の自由や権利の侵害に対して早くから警鐘を鳴らしてた米国の法学者ローレンス・レッシグだ。
一方で、アーキテクチャのデザインにより権利保護を図るというアプローチは、本稿で紹介した「バイ・デザイン」のアプローチ(プライバシー・個人情報保護領域で提唱された様々な技術の設計仕様にプライバシーの考え方を埋め込もうという哲学とその実現手法である「プライバシー・バイデザイン」を起源とし、セキュリティや倫理など、プライバシー以外の領域にも応用されている)だけでなく、法学者キャス・サンスティーンは、個人の選択の自由を確保しながら、より望ましいアーキテクチャを提供するための選択アーキテクチャと、デフォルト環境の設定という形でアーキテクチャを主体的にデザインする理論を展開し、政府や企業により応用されてきた選択アーキテクチャ論なども存在する。

注8)

デジタルプラットフォームにいかに憲法的価値を埋め込むか、という本稿の問題意識について、「デジタル立憲主義」という概念でわかりやすく解説した記事として以下を紹介する。

「デジタル立憲主義」という新潮流 AI時代に必要な権力制限の射程:朝日新聞デジタル


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