女のいない男たち(イエスタデイ)の印象的文と感想


「人見知りするくせに、好奇心だけは結構旺盛」
「時間の進み方は人によって少しずつずれているかもしれない」
「木樽は多分、何かを真剣に求めているんだよ」
「普通の人とは違う彼自身のやり方で、彼自身の時間の中で、とても純粋にまっすぐに。でも自分が何を求めているのか、自分でもまだよく掴めていないんだ。だからいろんな物事を、周りに合わせてうまく前に運んでいくことが出来ない。何を探しているのか自分でもよくわからない場合には、探し物はとても難しい作業になるから。」
「それのいったいどこがいけないんだ?今のところ誰にも迷惑をかけてないなら、それでいいじゃないか。だいたい、今のところ以上の何が僕らにわかるって言うんだよ?関西弁をしゃべりたいのなら、好きなだけしゃべればいい。死ぬほどしゃべればいい。受験勉強をしたくないのなら、しなきゃいい。栗谷えりかのパンツの中に手を入れたくないのなら、手を入れなきゃいいんだ。お前の人生なんだ。なんだって好きにすればいい。誰に気兼ねすることもないだろう。」
「夢というのは必要に応じて貸し借りできるものなんだよ、きっと」
「その時期が厳しい冬となって、僕という人間の内側に貴重な年輪を残してくれたのかどうか、そこまでは自分でもよく分からないけれど」

大きな船の小さな船室にある丸い窓から見える厚さ20センチで海に浸かっている氷の月は何を意味するのか。
その月は人それぞれの苦しみ、理想、葛藤を象徴しているように感じた。人によって肯定的な、また別の人によっては否定的な意味合いになる。それは同じ人の中でもその時その時に左右されるもの。木樽と栗谷えりかは2人でその月を見ていたが、主人公は一人その月を見ていた。夢を借りた。主人公は二人になんとも言えない憧れを感じているが、二人の空気感に交じれない微妙な隔たりがある。あくまでも夢を借りるしかない。主人公の孤独が伝わる。とは言いつつも3人にとって月の意味合いは異なり孤独なのだ。だけれど、みんな同じ氷の月を見ているという共通点で結ばれていることに苦しみの中の小さな幸せのような儚い魅惑を感じた。とても良かった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?