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京アニ放火殺人事件━━私の記憶

 京都アニメーションの放火殺人事件の裁判の判決が出ました。予想通り、死刑でした。弁護側の妄想障害による心神耗弱だか心神喪失は認められませんでした。

 凄惨な事件が起こった日の私の記憶を思い出してみます。


 2019年7月18日。ニュースを知ったのは当時勤めていた東京の某アニメ制作会社で休憩をとっているときでした。
 その頃会社は業績もよく、人員も増えて社内が手狭になったので、一部の部署が本社から一駅分離れたところに部屋を借りて移った所でした。

 私もその離れにいました。部屋は人数に比べて広すぎで、しかもその時間、部屋にいる人間はあまりいなくて静かでした。

  記憶があやふやですが、多分私は仕事で使っているパソコンでネットのニュースを見ていたのだと思います。そこで事件を知ったのでした。まだ、そのときは火災は鎮まっていなかったと思います。

 私は斜め後ろに座っていた後輩(その時、私の席の周辺にいたのは彼女だけだったので)「ねぇ、京アニが火事みたいよ」と声をかけました。
 すると彼女は沈んだ表情で振り返り、「そうなんですよ。私の友達が京アニにいるんですけど、さっきから何度もメールしてるんですけど、連絡が取れないんですよ」「ええっ、ほんと」
 聞けば、その友人は彼女の専門学校時代の同級生だということでした。
 私たちの会話はそこで途切れました。どうすることもでません。

 帰宅して、事件のひどい有様をテレビで見ました。建物入り口にガソリンをまき放火。中にいた多くの人が逃げることが出来ず命を落としました。犯人は大やけどを負いながらも、その場で取り押さえられたということでした。


 あまりに酷すぎて、あまりに理不尽過ぎて・・・もう・・・・。


 翌日、会社の上層から、内扉を開けっぱなしにしないように注意が言い渡されました。各部屋の内扉はIDカードがないと開きません。模倣するバカがいないとは限りません。

 後輩の彼女は黙々と机に向かい、絵を描いていました。
 私は彼女の友人が無事だったのか気になりましたが、声をかけることはできませんでした。その時は犠牲者の氏名は公表されていませんでしたし、なんとなく話題にする時期ではないと思いました。それほどショッキングな出来事だったのです。

 そしてそのまま、今に至るまで彼女とその話題を語ることはありませんでした。
 

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