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season9 1話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

『ポケモン史上、最もカオスなパニックホラーコメディ、開幕』



1.『ヨーコ先生のテス勉授業』


 パルデアに帰ってきて実家で過ごした後、リーグにテラパゴスを預けてアカデミーでクラベルに報告。
 寮で一晩休んで久しぶりに本を読もうとエントランスに行くと、見知らぬふたりが話し合っている。でもどこか見覚えのある姿に、ヨーコは声をかける。

「あの……」
「あ、ヨーコくん!」

 にこやかに手を振る少年。

「え、えと……?」
「アカデミーで会えるなんて、レアイベントじゃない?」

 少年、隣にいた長身の少女に話す。

「たしかに、ヨーコちゃんは学年も違うもんね!」

 ヨーコ、ひたすらぱちくり。少年、困り顔で、

「……いや、どうしたの? であいがしらでビックリ的な?」

 ヨーコ、まじまじとふたりを見て、

「──もしかして……」
「あっ、そうだよ! わたしたち、今日素顔だから……」

 少女気づく。

「そう言われればこの姿で会うの初めてじゃんね。……なんか恥ずかしくなってきた」

 少年、頭をかきかき。

「ボクはピーニャだよ! a.k.a DJ悪事!」
「わたし、ビワだよー。わたしはわかりやすいよね」
「ピーニャさんはともかく、ビワさんは、うーん……」(汗)

 ヨーコ、気をとりなおし、

「じゃけど珍しいなねえ。どうしてここに?」
「今日、ボクら追試でテスト受けてたんだよ。アジトにいたときアカデミー来てないからさ。その時間をとり戻してるんだ」
「さすがに改造制服だとエンピツ持ちにくいから、新しい制服着てきたんだよね」

 と、ピーニャ思いつき、

「ねえ、ビワ姉、もしかしてヨーコくんなら……?」

 察したらしいビワ。

「……ピーニャくん! それって名案だよ!」
「どしたん? なんか手伝うことある?」

 首をかしげるヨーコに、ピーニャ意気込んで、

「じつは、ヨーコくんにはボクらの……」
「ピーニャさんたちの?」
「先生になってほしいんだ!!」
「せ、先生!?」

 ガビーンなヨーコ。

「ピーニャくん、あせりすぎだよ! ちゃんと順を追って話さないと!」
「そ、そっか! OKだよビワ姉」

 ピーニャうなずき、

「えっと、じつはボクら以外のスター団ボスたちなんだけど……」
「メロちゃんとオルちゃんと、シュウメイくんの3人のことだね」
「うんうん」

 ビワのアシストにうなずくヨーコ。

「そうそう! あいつらずっと追試で合格できてなくて……」

 ピーニャ、一旦言葉を切り、

「……留年しそうなんだよ。せっかくアカデミー復帰したのに」
「なんと……」
「いちおうボクらで勉強教えたりもしたんだよ?」
「でも、……ダメだったね」

 しょんぼりなふたり。

「うん……、普通に公式に使ったり、暗記すればいいだけなのに、みんながなんでわからないのか、ボクにはわからなくて……」

 うつむくピーニャ。

「わたしも体の動かし方、教えるのは得意なんだけど……」

 うつむくビワ。

「な、なるほど……」(汗)
「ヨーコくん成績もいいってボタンから聞いたことあるし、ヨーコくんの言うことなら、あいつら聞くと思うんだ!」

 ピーニャ意気込んで、

「……ってわけで、イントロに戻るけど、ボクらの先生になってほしいんだよ」
「それならまかせて! うちも親友に勉強教えたりしとったけえ」
「ヨーコちゃんありがとう。本当に優しいね!」

 喜んでくれるビワ。

「……あっ! このことはボタンにはオフレコでよろしく!」
「なんで?」

 ピーニャに聞き返すヨーコ。

「ボタン……、ボクらのことでずっと悩ませちゃったから、これ以上心配かけたくなくてさ!」
「ナイショでお願いね、ヨーコちゃん」

 ヨーコ、スグリのことを少し思い出すも、

「……うん、わかった」

 やっぱりうなずくしかないヨーコ。

「わたしたちここにいるから、都合がいいとき教えてね!」
「うん」

 ヨーコ、一旦部屋に戻り教科書とか取り出す。ざっと見直したりして教科書やノートを鞄に入れピーニャたちのところへ。

「ピーニャさん、ビワさん」
「ヨーコちゃん」
「オルティガたちの勉強、見てくれるってことでOKかな?」
「うん。うちも教科書とノート持ってきたけえ」
「それじゃスタディのスタンバイ! コンセントレイトしていこうか!」

 ということで文系コースの教室へ。ニュー制服のオルティガとシュウメイがいる。

「みんな、ちゃんと勉強してるー?」
「うるさいな。見張りに来たのかよ」

 オルティガ、顔を上げる。

「だって見てないとサボるじゃん?」

 ピーニャのツッコミにオルティガ、ムスッ。

「ビワ殿のフォーマルな姿……」

 シュウメイ、ビワをまじまじ。

「何度見ても集中力が高まるでござるな」
「シュウメイくん、ごめんね。テストに関係ない集中力高めて……」

 ビワ困り顔。
 と、シュウメイ、キッ、とビワの後ろを見据え、

「ムッ!? ビワ殿の背後に何奴かの気配……?」

 大仰にボールを構えるシュウメイ!

「曲者か!? ええい! 姿を現すでござるよ!」
「わー! うちですヨーコです!」

 ヨーコ、慌ててビワの後ろから出る。

「おお、ヨーコ殿でござったか。失礼つかまつった」

 すぐに詫びてくれるシュウメイ。

「いえいえ、シュウメイさんも相変わらずすごいですねえ」

 にっこりヨーコ。

「げーっ!? オマッ!? な、なななな、な、なんで!?」

 驚愕するオルティガをよそに、シュウメイしみじみと、

「常人には出せぬ気配、ヨーコ殿なら納得でござるな」
「いやいやなんでだよ! なんでヨーコがいるんだよー!」

 ツッコむオルティガ。ピーニャ説明。

「なんとヨーコくん……、いや! ヨーコ先生はみんなの勉強教えてくれるんだよ!」
「おお、かたじけない! 恐悦至極でござるな!」
「はー!? 聞いてない! ってかピーニャ! 勝手に決めんなよ!」

 それぞれ違う反応を示すふたり。オルティガに至ってはヨーコに、

「オマエもさ! 先生とかいらないし帰れよ!」

 と、ヨーコが反応する前に、

「……ねえ、オルちゃん?」

 低い声でオルティガに言うビワ。びくり、と肩を震わすオルティガ。ヨーコまでびくり。

「ヨーコちゃんはみんなを思って来てくれたんだよ。なのにそんな失礼なこと言っちゃったら……」

 手を腰にオルティガに迫るビワ。

「ダ、メ、だ、よ、ね?」
「あ……、ビワ姉、ごめんなさい」
「わ、た、し、じゃ、な、い、よ、ね?」
「あ……、うん。ヨーコ、悪かったな」

 素直に頭下げるオルティガ。

「いや、うちもいきなりごめん」

 ヨーコもぺこり。

「威圧するビア殿……、レアリティが高いでこまざるな」

 地味に感心するシュウメイ。

「オルティガはカッコ悪いとこキミに見られたくないんだよ」

 オルティガ、照れ隠しに、

「ってか、オマエ先生ってことは勉強もすごいのかよ。何でもできすぎムカつくな」

 シュウメイも、

「勉学とは迷い迷われラビリンス。ご指導ご鞭撻を願うでござるよ」
「いえいえ」

 と、ビワ教室を見渡し、

「そういえば、メロちゃんは?」
「メロコ殿なら、数刻前ストレッチしてくると言いのこしおもむろに出ていったでござるな」
「絶対サボってる! だってメロコだよ?」

 オルティガの言葉にビワ首を横に振り、

「うーん、決めつけはよくないと思うけど……」

 ピーニャ、ヨーコに、

「悪いけどヨーコくん、メロコ探してきてくれない? さすがにアカデミー内にはいるから! その間ボクらは勉強できる環境スタンバっとくよ!」
「ごめんねヨーコちゃん、メロちゃんのことお願いね!」

 ビワも詫びてくれる。ヨーコうなずく。

「わかった。心当たりは?」
「うーん、メロちゃんここのところずっと勉強してたから、体を動かしに行ったのかな?」
「じゃあ、グラウンドかね……」

 ピーニャ、スマホの画面を眺めてひとりうめく。

「集中力が増すBGM……、ライムの曲はさすがに違うよね」
「う、うん……」(汗)



 ひとまずグラウンドに行くヨーコ。
 畑の前に、ニュー制服の女の子が。じっと野菜を見つめているその姿にかすかに見覚えがあり、近づくヨーコ。女の子は黙っている。

「あのう……」
「あ?」

 振り向く女の子。素朴だけどかわいらしい。

「テメーは……、ヨーコか」
「えと、メロコ、さん?」
「メロコだメロコ。見りゃわかんだろ」

 いきり立つメロコ。ヨーコその姿に納得。

(あ、メロコさんじゃ)

 メロコ、自分の格好に目を向け、

「そういやいつものカッコじゃねえのか」

 ぷい、とそっぽを向き、

「これは……、ビワ姉が制服着て勉強会っつーから、しかたなくな」
「あ、うん……」

 うなずくヨーコ。メロコ聞き返す。

「テメーはここで何してんだ?」
「メロコさん呼びに来たん」
「校舎裏にでも呼びだそうってか? 気合い入ってんじゃねーか」

 口調の割には笑顔がかわいいのであんまり怖くない。思わずヨーコも、

(なんかかわええ……)

 と思いつつ、

「ううん、ビワさんに頼まれて」

 それで察したメロコ。口をとがらせ、

「……なんだ、教室に連れ戻しにきたのかよ」

 畑に目をやり、

「野菜ながめてたら時間経っちまってた。……行こうぜ」
「うん」



 メロコとふたりで教室に戻るヨーコ。

「うっス」

 ピーニャとビワに軽く手を振るメロコ。

「メロちゃんおかえりなさい! 戻ってきてくれたんだね!」

 ビワ笑顔になる。

「ヨーコちゃん、お迎えありがとう」
「どこでサボってたんだよ?」

 毒づくピーニャ。メロコ、席につきながらちょっと歯切れ悪く、

「ん……、ちょっとな」
「メロコ殿?」

 シュウメイ首をかしげる。

「まあまあいいじゃない、みんなそろったんだしさ!」

 ピーニャ、スマホをセットしながら、

「時間もったいないし、とりま勉強会スタートだよ!」

 そのままヨーコを見て、

「ヨーコ先生よろしくね! 3人の勉強見てあげてよ」
「わかった」
「ヨーコちゃんもみんなもがんばってね!」
「ボクはみんなが集中できるBGMかけとくからさ」

 音楽流れ始める。確かにいい曲。
 ヨーコ、ひとまずみんなを見回しさっそくうめいているオルティガのところへ。

「なんだよこれ……、全然わかんない」
「オルティガさん?」
「あ? オレを見下ろすとかいい度胸だよな、ヨーコ」

 噛みつくオルティガ。

「言っとくけどオレ2年生! オマエの先輩だかんな!」
「あ、はい……」(汗)

 オルティガしょぼんと、

「……ビワ姉が言うからたよってやるけど、オレ文系科目が苦手でさ。物語の登場人物の気持ちとか意味わかんないんだよ……!」
「どれどれ?」

 ヨーコ覗き込む。オルティガ、文章問題を指差し、

「この話、主人公のイッカネズミママはどんな気持ちでイッカネズミパパに『こまったひと』って言ってるんだ?」

 ヨーコ、黙読。

『イッカネズミママの目はうるんでいた。置き手紙を読んで、イッカネズミパパに二度と会えないとわかったからだ。
「最期まで私の心を乱すなんて、あなたって本当に……、困ったポケモンね……」』

「なるほど……」

 ヨーコ思わずにっこり。ぴっかりさん、ボールの中でくしゃみ。

「これね、イッカネズミママ、本当はイッカネズミパパのこと好きなんよ」
「はぁ!? こまってんのに好き!? 好きなら好きって言えばいいだろ! それ絶対間違ってるって!」
「いやいや! オルティガだってそうじゃん?」

 ピーニャが助け船に入る。

「はぁ? どういうことだよ」

 首をひねるオルティガ。

「本当はヨーコのこと認めてても、口では悪態つくでしょ?」
「はぁー!? オレがコイツを認めるとかないし!! ないない! 絶対にない!」

 言葉の割には顔が赤いオルティガ。しばし黙って、

「……思ってることと逆のこと言っちゃう気持ちは誰にでもあるってことか」

 オルティガそっぽを向き、

「フン! ちょっとは理解できたかもな! 感謝してやるよ、ヨーコ」

 と言いつつ次の問題に取りかかるオルティガ。

「えーっと、次の問題は……、ワナイダー3兄弟の糸のようにほつれた家族関係がテーマかよ」

 ピーニャと顔を見合せ笑うヨーコ。
 と、シュウメイがなにやらつぶやいている。

「我、己が知らざるを知る。これぞ無知の知なり……」
「シュウメイさん、なんかあった?」
「ヨーコ殿」

 シュウメイ、ヨーコを見上げる。

「ユーが師として我に手を差しのべる……と?」
「ええ」

 ヨーコにっこり。

「……かたじけない」

 シュウメイ、ふう、と一息ついて、

「我は算術が苦手ゆえ、数学がからっきしでござるよ」

 だがきりりとして、

「しかし我は将来服飾デザイナーになるがゆえ、数字という概念は無用なのでござる」

 ヨーコ、すずと裁縫したことを思い出し、

「うーん、それは違うと思うよ?」
「ふむ……、いったい何がどう違うんでござるか?」
「ヨーコちゃんの言ってること、なんとなくわかるよ」

 今度はビワが助け船。

「スター団の改造制服作るとき、けっこうお金かかっちゃったし……」
「いいものを作るために、マネーをペイするはしかるべきこと」
「でも生地とかあまっちゃってたし、もう少し費用はおさえられたかも?」
「それは……、一理あるでござるな」

 シュウメイ考え込み、

「服の寸法、素材の費用……、商売になれば売値に利益率……、それらを考慮できるデザイナーは、職人として頭ひとつ抜きんでる!」

 シュウメイ、悟る!

「──現実を見ぬ我の考えは、……誤りだったやもしれぬな。
 ──我はこれをもって心を入れかえ……」

 カッ!!

「算術に尽力するでござる!! うおおおおおおお!!!!」

 全集中のシュウメイ!

「す、すごい……」
「口はさんじゃってごめんね! でもヨーコちゃんきっかけで、シュウメイくんやる気出たみたい!」

 問題を解いていくシュウメイを見る。

「シュウメイくん凝り性だから、ゾーンに入っちゃえば大丈夫だね!」
「おのれ分数の割り算め……、何故天地がひっくり返るでござるか!」

 ぐぬぬになりつつも熱心に考えるシュウメイに、ビワと笑い合うヨーコ。
 そんな中でもひとりメロコは格闘している。
 近づいてみるヨーコ。

「──むずかしいな……」

 メロコ、問題をじっと見ている。

「メロコさん」
「何見てんだよヨーコ」

 メロコ、可愛く威嚇。

「……今は先生だっけか?」
「一応、ほうです」
「過去問やってんだ。ちょっと見てくれよ」
「うん」

 ヨーコ、メロコと過去問の紙を見る。メロコ読み上げる。

「『新しいポケモンと出会う方法は、捕まえるか交換するかだけである』。……これって正しいんだっけか?」
「『正しくない』が答えじゃね。これ間違えやすいけえね」
「だよな……。タマゴからかえったときも出会えるもんな」

 メロコ、少し黙り、

「じゃあ、次な」
「うん」
「『ポケモンがテラスタルしたさい、頭上に光る宝石の名は?』」
「『テラスタルジュエル』。宝石もジュエルっていうん知っとったら覚えやすいよ」
「たしかそんな名前だった! ヨーコはオーブ持ってるもんな。テメーやるじゃねえか」

 膝をうつメロコ。

「テラスタルってカッケーよな。優秀な生徒じゃねえとテラスタルオーブもらえねえけどよ」

 それからまた少し黙って、

「じゃあ次な。テストには関係ねえけど、聞きてえことあって……」
「何?」
「──ちょっと言いにくいな……。ぜってえ……、笑うなよ?」

 念をおすメロコ。

「う、うん」
「あのよ……、『夢』って……、なんだろうな?」
「なるほど……、メロコさんの言いたいのは、将来の目標のことかね?」
「それだ! 将来のこと! 何になりてえとかそういうの!」

 メロコうつむき、

「将来、何になりたいとか、全然わからねーんだよなー……。団のみんなは、しっかりした夢持ってるやつ多いんだ」

 ヨーコに視線を戻し、

「植物だって、一生懸命上に向かってのびてるだろ? だから最近野菜がうらやましくて……」
「だからグラウンドの畑見とりんさったんじゃね」
「ああ」

 メロコうなずき、またうつむく。

「オレだけずっと、夢見つかんなかったら……、そう思うと、無性に怖いんだよ」
「美術は? メロコさん美術部入っとったじゃろ?」
「……あ? なんでオレが美術部入ったの知ってんだ?」

 きょとんなメロコ。

「あー、ビワさんとボタンさんから聞いて……」
「ああなるほどな」

 メロコうなずき、

「っつーか、美術とか好きでやってる趣味だぜ? そんなの仕事にするとか……」

 と言って少しハッとして、

「いや……、顧問のドラゴン先公もよく考えたらあれ、仕事だよな。あの人すげー楽しそうだから、仕事でやってるって気づかなかった」

 メロコしみじみ。

「オレ、絵描くの好きだし、もし仕事にできたら、ヤベえな……」

 ヨーコをちらりと見上げる。

「こんなのでも、オレの……、夢って言っても、いいのか?」
「もちろん。立派な夢じゃ!」

 ヨーコにっこり。

「そっか……、これがオレの夢か!」

 メロコもにっこり。

「なんか……、背筋ピンってなったぜ! ありがとな、ヨーコ!!」
「いえいえ、うちはなんもしとらんよ。メロコさんが自分の力で見つけたんじゃ」
「へっ、謙虚だな」



 その後も、ヨーコはメロコ達に勉強を教えていき2時間後……。

「そろそろ勉強会はアウトロ! キリもいいし終わりにしよっか!」
「みんなお疲れさまー! 勉強はどうだったかな!」
「なんかすっげえはかどったよ! ちょっとはヨーコのことみとめてやってもいいかもな」

 オルティガにっこり。

「算術もやりこめば興味深い! 師の教えにより、我のやる気はどくを得たブロロロームのごとし!」

 シュウメイもにっこり。

「まるで目の前きりばらいされたみてえに、クリアに知識が入ってきたぜ!」

 メロコ笑顔。

「みんなすごいよー! 今までで一番集中できたみたい!」

 ビワも明るく笑う。

「ヨーコちゃんの教え方がすごかったおかげだね!」
「いやいや、みんな頑張っとったけえ」
「けっ、よく言うぜ」

 そっぽを向いて笑うオルティガ。

「ヨーコちゃん、いろいろありがとね! 先生してくれたお礼だよ! 受けとってほしいな」

 ビワ、ヨーコに色々くれる。きんのおうかんに改造制服シリーズ、眼鏡にグローブ、ヒール、メット、スマホカバー。

「こがあにええん?」
「うん! あ、そうだ、わたしたちおなじみのポーズも一緒にやろうよ!」

 お疲れ様でスターポーズ、あとシュウメイからオタ芸を教えてもらう。
 と、

「えっ、ちょっ、みんな何してんの!?」

 ボタンがいつの間にかいた!

「ボタン!?」
「ボタンさん!?」

 ピーニャとヨーコびっくり。

「あちゃー、見つかっちゃったか」

 やれやれオルティガ。

「えっと……、廊下歩いてたら、みんないるの見えて……」

 ボタン教室に入りながらもうろたえる。

「で、でもでも! 呼ばれとらんし、うち、おらんほうがいいよね! ご、ごめん! 帰るね……」
「ボタンさん!」
「ボタン殿!」

 ヨーコとシュウメイ止める。ビワもよく通る声で、

「違うのボタンちゃん! 話、聞いて!」
「え?」

 ボタン振り向く。

「じつは、かくかくしかじかで……」

 ピーニャ手早く説明。

「ホッ……、うちだけハブられたんかと思った」
「そんなこと、するわけない!」

 ビワ、力強く拒否! だがすぐに、

「……でも、そう思わせちゃったよね。心配させて、ごめんね」
「迷惑かけたくなかったんだ。……悪かったな、ボタン」
「うちもごめん。言えんで」

 頭を下げるメロコとヨーコ。

「ヨーコくんは悪くないよ。口止めしたのはボクとビワ姉だもの」
「うん」

 慰めてくれるピーニャとビワ。
 ボタン、少し黙って、

「──いや……、許さんよ!!」
「えっ? マジ?」

 ガーンなオルティガ。憤るボタン。

「うちに迷惑とか! もう!! 意味わからん!! うちだってみんなの、な……、仲間だし……」

 うつむきつつもはっきりと、

「もっと迷惑とか、心配とか……、かけてよ」
「ボタン殿……」

 シュウメイつぶやく。ボタン顔を上げ、

「い、いざとなったら、うちがハッキングでみんなの成績改ざんするし!」
「いや、ボタンさんそれは……」(汗)
「えー! ダメだよ!!」

 止めるヨーコとビワ。ピーニャも苦言。

「ボタンさあ、それは一線超えてるっしょ……」

 ボタン、事も無げに、

「……や、ごめん。今の、ギャグのつもり」

 全員ずっこける。

「なごまそうと思って、人として間違えた……」
「ハッ! 本気だったらはっ倒すとこだったぜ!」

 メロコ半ば怒る。

「で、でもでも! 勉強だったらうちも教えられるから」

 ボタンにっこり。

「いつでもたよってよね!!」
「ボタン殿……、恐悦至極でござるよ」
「あーあ! これからはヨーコとボタンふたりセットにしごかれるのかよ」

 嬉しそうなシュウメイ。オルティガ、悪態をつきつつもなんだか楽しげ。

「……ま、悪くないかもな」

 察したピーニャ笑う。

「アハハ! オルティガってば素直じゃなさすぎっしょ! 本当は楽しそうって思ってるくせにさ!」
「うむ、わかりやすすぎて片腹痛いでござるな」
「ハァー!? 思ってないし!」

 すぐムキになるオルティガ。

「オマエらオレのこと全然わかってない! もっとオレのことわかれよ! ムカつく、ムカつく、ムカつくなー!!」

 すねつつもプイッ。吹き出すメロコ。

「なんだよそれ……、ぷっ!!」

 全員つられて笑いだす。

「アハハハハハ……!!」

 その後、追試まで楽しく勉強は続いたのだった。

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