トラウマとストリート

Abemaプレミアムで『BADHOP 1000万1週間生活』を観ている。

めちゃくちゃ面白い。

Benjazzyがとにかく最高だ。

BAD HOPってこんなに魅力的なグループだったんだ。

みんな可愛くてかっこよくて、生き生きしてる。

生き生きしてる人ってなんかチャーミングだと思う。


ラッパーになる人は壮絶なバックグラウンドを持っていることが多い。

親がギャンブルやアルコールの依存症で家庭が崩壊していたり、犯罪や薬物に手を出して施設や少年院を経験していたり。

BAD HOPのメンバーたちもそうだった。

私は、『ストリート』と呼ばれる環境で育った人たちが、どのようにしてそのような困難を乗り越えていくのかということに、以前から興味があった。



『1000万生活』の#5で、YZERRの言った言葉が印象的だった。

「本当にひどい環境で育ってる奴は立ち直ったりできないですから」

「そんな普通に皆がまともになれるほどそういう環境は甘くない」

YZERRにとっては、祖父母の存在が大きかったらしい。

「自分の家にはいれなくても、ばあちゃんの家には居られた」

そういう存在が居なかった奴は飛んだり、刑務所行ったりするから、ラップもやれない、と。


『何もないところから這い上がって成功していく』といった物語は、勇気や希望を与えてくれるから、多くの人に好まれるし、求められやすい。

Hiphopの人気者は大体そういうドラマを持っている。

だけど、本当の本当に『何もない』人間には、そういった物語は初めから用意されていない。

成功するしない以前に、努力や才能の問題以前に、そもそもラップをすることすらかなわなかった人たちがいる。

みんながみんな、自分たちみたいにラップができたわけじゃない。

それが分かっているYZERRはとても冷静な人だと思った。


サバイブできた人には、できただけの理由がある。

YZERRには「ばあちゃんの家」があった。

それに、双子の兄Pablow、幼なじみのJojoやBARKなど、子供の頃から似た境遇を分かち合える仲間に恵まれていた。

ストリートは居場所のない人間が集まる場所だけど、彼らにとってはストリートこそが居場所だったんだろう。

ラップという表現のツールを手に入れてからは、きっとそれ自体が大きなリソースになり、セルフセラピーにもなったと思う。


トラウマの温床のような家庭環境に育っていても、見事に立ち直って、生き生きと表現の世界で活躍しているラッパーたちの姿。

私は何かこういうところに、トラウマから回復するためのヒントがあるように思っている。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?